【触発ウォーク、晩夏】福間健二 #k2fact151

薄いピンクの、ぬくもりとやわらかさの「永遠」と別れて、きょうは涼しい日。欄外の、さびしい金属を撫でる。そこにそうして眠っているのを知っていた。忘れたことなんかない。そう言う。九十八ページ。真ん中よりちょっと手前の、挨拶。キスはしない。(触発ウォーク、晩夏1)#k2fact151
2016-08-28 12:54:14
どこまで。死との対話なら月曜日の生ゴミの袋に入れた。使いそこなった花束と一緒に。生きている虫でも目で追うだけ。老いたる従者は落馬させる。その青い顔。笑わない。泣かない。心になにか新しい指示をする。人の遅すぎる反応にイライラしないように。(触発ウォーク、晩夏2)#k2fact151
2016-08-29 12:10:30
何も言わない地面がつづき、黄色い表紙の、火曜日。勝手におりてきた。あげるもの、ない。自殺しない椅子が出ている。まるめた靴下の片方がそばに落ちている。「いらない」特集。散った「私たち」をガムテープで取る。ポケットに入れたまま洗濯したのだ。(触発ウォーク、晩夏3)#k2fact151
2016-08-30 09:26:17
どういう赤でも。生きているうちに。電気ノコギリ、「使いなさい」は頭だけじゃない。ジャンケンに負けない人、鈍感な人、でも恩人なのか。風に鍛えられた植物の生命力の、あまりうまくない盗作である孤独。中身はそれだけのハードな岩に皮膚で接して。(触発ウォーク、晩夏4)#k2fact151
2016-08-31 10:54:17
朝がきた。どっちだ。助けられて目覚めるのは。胸と背中。左側だけ汗をかいている胸のアジア。一方、背中は、歯車がバカになって。やり方がまったくちがうロックンロール。でも、生活の壊れ方はおなじ。かつて岩だったものが紫の砂になってこぼれている。(触発ウォーク、晩夏5)#k2fact151
2016-09-01 09:17:20
涼しい夜風が吹いて、いまはまだ小さな怪獣が踊るように階段を降りてきた。半分は、人の子。あとは「天使になろうとして」グチャグチャ。殺さない。生け捕りにして忠告する。星を指さすな。裏返った靴を見るな。それでも困ることいろいろあるだろうけど。(触発ウォーク、晩夏6)#k2fact151
2016-09-02 12:11:44
ゆるまない頭との、さまざまな組み合わせ。迷信を気にする温度計と破滅の先で笑う「私たち」の破片だったもの。ふざけて褪せるオレンジ色の傘の、漂流のいきさつ。液体だけになった死後の、回想。ここで待っていてくれますか。いいえ、一緒に行きます。(触発ウォーク、晩夏7)#k2fact151
2016-09-03 11:37:27
では、オープンしたばかりの「たそがれ酒場」に二人で入り、縁起のいい客になろう。すぐに次々に人がやってくる。怠けたがる「未来」に破片と液体の始末を手伝わせる。ビヨンセもリアーナも藤本紫媛もいない暗い昔を保存するB地区の夜にも線をつないで。(触発ウォーク、晩夏8)#k2fact151
2016-09-04 08:40:24
近距離の、人の動きの、謎の部分。脳内のあらしが漏れないように深呼吸して、もしかするとみんな予備態勢の「お人よし」に打ち負かされている。B地区ではジャガイモとタラを食べる愉しみ。ぼくはまだいない。いいえ、いるけど、気づかれていないんです。(触発ウォーク、晩夏9)#k2fact151
2016-09-05 10:54:00
何に触れて、どう割れるのか。終わっていく夏。黙っていた。すこし眠たい。だれとの約束。目に冷たい星が流れおちるきみの受け身が咲かせるもの。どこか痛くてもお腹はすく。くやしいけれど、おいしい、とぼくは言う。ひとひらずつ、歯と舌で確かめる。(触発ウォーク、晩夏10)#k2fact151
2016-09-06 08:17:42