ヘクトールおじさんとロビンくん。(その1)

ヘクトール×ロビンの現パロ義親子のようなぎりぎりのラインを攻める。 ヘクトールおじさんの過去語り形式。
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睦月ジューゴ @EeesperancaaA

放浪癖の父親を持つ少年ロビン(6歳)が父の事故死をきっかけに唯一の肉親であるヘクおじ(32歳おとこやもめ)に引き取られ、心を閉ざしたロビン少年の笑顔を蘇らせるハートフルストーリー考えたんで誰か書いてください。 はじめての食卓から始まり、はじめての学校、友達、卒業、そして恋……的な

2016-09-15 13:04:03

ヘクトールおじさん(32歳)とロビンくん(6歳)。
出逢い編。

睦月ジューゴ @EeesperancaaA

初めは口すら聞かない子どもだったんだ。オジサン色々話しかけたんだけどね、はいかいいえでしか答えてくれなくて。ドラクエの勇者くんかな?ってほっぺをつついても無反応。……子どもがこんなにも冷たい目ができるんだと初めて知ったよ。あれはこの世を見てなかった。彼岸の父親をじっと見つめてた。

2016-09-15 13:07:26
睦月ジューゴ @EeesperancaaA

オジサンだって仕事があるから、ロビンくんを一人で置いてったりする。ちゃんとご飯を作ってね。でも、あの子ね、こっそり捨ててた。食べてなかったんだ。俺が気づいた時には栄養失調で倒れててね。救急外来で、骨みたいな細腕で点滴を受けてるあの子を見て、死なせちゃいけない、って強く思った。

2016-09-15 13:10:02
睦月ジューゴ @EeesperancaaA

この子、保険入ってなかったからねぇ、いやぁ、お財布が痛かった。でも、わかったことがあった。この子は、籍がないんだ。どういう理由でかはこの子の父親が死んだからわからない。古典的な空想をすると、この子の母親はどこかの令嬢で、都合の悪い存在だった。つまり私生児だったんじゃないかって。

2016-09-15 13:12:54
睦月ジューゴ @EeesperancaaA

ここから先は大変だったよぉ、書類を沢山書いては役所に提出してね。小学校に入学する手続きとか、とにかくいっぱいいっぱいだった。ある晩、仕事疲れもあってか居眠りしちまってね、ふと夜中に目を覚ましたら、あったかい茶があったんだ。そして、あの子がオジサンの横の床で丸くなって眠っていた。

2016-09-15 13:15:46
睦月ジューゴ @EeesperancaaA

こんなところで寝かせるわけにはいかないから、抱っこして布団に連れてってやったんだけど、ロビンくん、寝ながらオジサンの服をギュッと掴んでね、おとうさん、って呟いたんだ。ああ、俺が本当の父親だったらどんなにこの子は救われるんだろうな、って、ちょっとしんみりしちまった。詮無いことだ。

2016-09-15 13:18:20
睦月ジューゴ @EeesperancaaA

次の朝は、忘れられない、休日だった。ロビンくんは相変わらず静かだった。今思えば、あの子の中で色々決心してたんだろう。朝食の席にあの子を呼んでね、吐いちゃったらまた痛い点滴だよ、って冗談めかして言ったら、あの子は首をぶんぶん横に振ってね、いただきます、って小さな両手を合わせたんだ。

2016-09-15 13:21:43
睦月ジューゴ @EeesperancaaA

小さな口で、バゲットを口に含んだ。咀嚼して、細い喉を通っていった。そして、おいしいです、って言ったんだ。ぎこちない笑顔を浮かべながら。そりゃそうさ、オジサンが知ってる一番うまいパン屋のバゲットだからね、っておどけてる間に、ぱくぱくとワンプレート分完食。……お腹壊しちまったけど。

2016-09-15 13:24:41
睦月ジューゴ @EeesperancaaA

その日から、あの子は俺の飯を食ってくれるようになった。いただきます、ごちそうさまでした。それが聞けただけで、俺はどんなに嬉しかったか。とにかく、あの子が俺を味方と認識して、此岸に目を向けるようになったことが、本当に嬉しかった。 ◇はじめての食卓編ダイジェスト版 おわり◇

2016-09-15 13:27:51

幸福な生活は幸福な食卓から。
ところで……

睦月ジューゴ @EeesperancaaA

「おじさん、一緒に寝よ……」と枕を持ってくるちびロビンから、「一緒に寝ようぜ、オジサン❤︎」に成長するロビン、ありだと思います。ちなみにオジサンは、「えー、やだよぉ、暑いし……」って乗ってくれない。まあ仕方ないよね、ロビンくん18の頃は、ヘクおじ44だもん。責任取れないよ。

2016-09-15 13:52:20

閑話休題。小学生編はじまるよ~

睦月ジューゴ @EeesperancaaA

◇はじめての学校ダイジェスト版◇

2016-09-15 20:05:13
睦月ジューゴ @EeesperancaaA

教育を受けさせる義務ってのがあってね、オジサン、ちゃあんとロビンくんを近所の小学校に転入させたよ。幸い6歳だから一年生、大した遅れじゃないと思ってたんだけど、いやあ子どもの成長って速いもんだねぇ、コミュニティの形成も。要するに、ロビンくんは孤立したわけだ。人見知りってのもあるし。

2016-09-15 20:07:20
睦月ジューゴ @EeesperancaaA

実父との放浪でどんな生活してたか知らないけど、同世代と関わることは少なかったらしい。物珍らしい転入生として周りであれやこれや言われるのが怖くて、泣いて学校抜け出しちゃったんだと。ロビンくんの小学校の裏には小さな山があって、先生と、仕事から呼び戻されたオジサンとで山狩りしたんだよ。

2016-09-15 20:11:13
睦月ジューゴ @EeesperancaaA

なんだろう、父性?ってのが早速働いたのかねえ、オジサンといったら10分もせずにロビンくんを見つけちゃったんだよ。イチイの木の下で蹲って泣いててね、もう大丈夫だぜ、って言ったら、オジサンに飛びついてわんわん泣き出して、そりゃあもう大変だったさ。学校はやだ、おじさんと居る、ってな。

2016-09-15 20:14:26
睦月ジューゴ @EeesperancaaA

いやいや、ロビンくん、学校楽しいよ?友達作っといでよ、って言ったけど、涙と鼻水でべとべとになっていやいやしてね。今思えば、父親を亡くして、ようやく安心できる大人と出会えてホッと一息、と思ったら昼間は会えないっていうのが不安で仕方なかったんだ。ちょっと可哀想なことしちまったかなぁ。

2016-09-15 20:18:34
睦月ジューゴ @EeesperancaaA

オジサンだって仕事があるし、ずっとロビンくんと一緒にいられないんだぜ、とか、いつまでもオジサンと二人っきりだと大人になれないよ、とか色々言っちまったのは、ロビンくんの不安定な心をずたずたにするようなもんだったんだ。その日からロビンくんはまたオジサンと口きいてくれなくなっちまった。

2016-09-15 20:24:08
睦月ジューゴ @EeesperancaaA

せっかくオジサンにちゃあんと挨拶してくれるようになったのに、ふりだしに戻っちまった、いや、更に後退しちまったかな。退行ってヤツだ。おねしょしたり、夜泣きしたり、それはそれは痛々しかった。けれどもオジサン、子どもなんて育てたことなくて、どうしたらいいもんか、わからなくてなぁ。

2016-09-15 20:28:04
睦月ジューゴ @EeesperancaaA

父性があるんだかないんだか、わかんねぇなぁ、あの時のオジサン。でも、パパ一年生だから仕方ない、とも言ってられないから、なんと育休取って(自慢だけどオジサンの会社、ホワイトなんだわ)、ロビンくんとの時間を作ったのさ。今思えば最適解だな、こりゃ。ロビンくんには止まり木が必要だった。

2016-09-15 20:33:46
睦月ジューゴ @EeesperancaaA

今日からオジサン、おうちで待ってるから、安心して学校行っといで。嫌になったらいつでも帰ってきたらいいさ。でもできれば毎日、ちょっとだけでもいいから学校行こうや。育休とった夜、ロビンくんにそう言ったら、ロビンくん、また泣いちゃって、がんばる、がんばる、って何度も言ったんだ。

2016-09-15 20:38:13
睦月ジューゴ @EeesperancaaA

あの頃のロビンくんは臆病だったけど素直で、泣き虫で、可愛かったんだけどなぁ……時の流れってヤツは……まあいい。次の日、ランドセル背負って、校門まで一緒に行った。ロビンくんはすぐ帰ってきちまったけど、沢山褒めてやったよ。好物のハンバーグも作ってやった。

2016-09-15 20:40:30
睦月ジューゴ @EeesperancaaA

そこからしばらくは割と順調だったなあ。どんどん学校にいる時間が長くなってね、それどころか、いつのまにか友だちを作って、放課後遅くまで遊んで帰ってくることもあった。どうやら元々人好きで、運動神経もいいみたいだから、さもありなんだけど、嬉しかったなあ。……ちょっと寂しかったけどな。

2016-09-15 20:43:17
睦月ジューゴ @EeesperancaaA

そんなこんなで物心がついた頃、土曜の雨の日だったかな、買ってやった新品のゲーム機で遊びながら、ロビンくんは「おれのかーさんはどこにいるの?」って聞いてきたのさ。オジサン悩んだ。すごーく悩んだ。結局、オジサンにもわからないことはあるんだぜ、って言うしかなかった。仕方ないんだ。

2016-09-15 20:46:41