療育の中の一コマ~大人を呼び捨てにする子の事例~

日々こんなことを考えて療育しているよ、という話です。前半は周囲の大人の接し方によってお子さんの行動は良くも悪くも変化するよ、という話。後半は、療育の中においては常に当初の目標に遡って考えることが大切だよ、というお話です。 #プライバシー保護のため、名前やエピソードの詳細は改変してあります
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松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

放デイでの一コマ。私が教室に入ると、Hくん(軽度知的障害 支援学校在籍)が「オイ!松本!」と声をかけてくる。私は答えない。Hくん、少し逡巡して「松本・・・先生」と言い直す。そこで初めて「やあこんにちはHくん」と返す。

2016-09-13 21:46:21
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

Hくんのように、大人の対応一つで不適切な挨拶が適切な挨拶に変わる子は、指導以外の場面で接するときも神経を使う。彼は大人とのコミュニケーションを試している。こういう時期に大人が間違った応対をすれば、間違った行動がインストールされてしまう。

2016-09-13 21:50:00
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

注目すべきは、最初「松本!」と呼びかけたHくんが、私が答えずにいただけで「松本先生」と言い直せたこと。つまり彼はその場面にふさわしい言動を知っていたが、最初にそれを実践しなかったのだ。なぜか?コミュケーションを単なるスキルの適用としか見ていない場合、答えは出てこない。

2016-09-13 21:58:35
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

明言はさけるが、この場合、Hくんの周りに、たとえば「オイ!吉田!」と言われたら、「このやろー、呼び捨てにしたな~♪」と笑顔で反応する大人がいるのだ。あるいは「藤井!」と呼ばれて最初は答えないが「藤井!藤井!」と何度も呼ばれると「うるさいな~」と反応してしまう大人がいるのだ。

2016-09-13 22:12:45
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

つまりHくんの中には「大人の注目を惹くためには、強く呼び捨てにしたほうがよい」という行動パターンが形成されてしまっているのだ。そこで今日は「松本!」と呼んでみた。松本は答えない。そこでHくんは次の策として、「先生」をつけて呼んでみることにした。すると松本は反応したというわけだ。

2016-09-13 22:16:18
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

Hくんの中で、大人を名前で呼び捨てることと、呼称をつけることと、どちらが「社会的に望ましいか」を考える力はまだ形成されていない。この2つの行動パターンの優先順位は単に「どちらがより反応を引き出せるか」という基準で決まる。ゆえに大人の対応がその後のHくんの行動パターンを決める。

2016-09-13 22:21:59
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

こうしたやりとりがあった後の自由時間で、Hくんが先の件の「応用問題」とでもいうべき場面を見せてくれた。彼が、他の子ども(仮にたかしくんとしよう)のことを「しんやくん、しんやくん」と別の子の名前で繰り返し、呼び始めたのだ。

2016-09-13 22:34:35
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

たかしくんは、Hくんに間違った名前で呼ばれたのがかえって興味深く、「ちがうよ~たかしだよ~」と笑顔で答えている。Hくんは面白がって「しんやくん、しんやくん」と繰り返す。たかしくんは「ちがうよ~」と言って二人でじゃれあっている。

2016-09-13 22:38:32
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

指導員が「しんやくんじゃないよ、たかしくんだよ」と言葉をかけた。Hくんはそれすらも面白く余計「しんやくん」を連呼。間違って呼ばれているたかしくんも笑顔で一緒に面白がっている。指導員は「名前を間違えるのは失礼だよ。たかしくんとよぼう」と指示した。この指導員の対応、是か非か?

2016-09-13 22:41:02
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

このとき私は指導員さんに「しばらく見守っててください」と指示。正しい名前で呼ぶことを強く求めすぎて、Hくんとたかしくんのやりとりが途切れる可能性があったからだ。Hくんに正しいコミュニケーションをさせることより、子ども同士のコミュニケーションを楽しんでもらうことを優先する判断だ。

2016-09-13 22:54:20
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

この判断については、先ほどの「松本!」と呼んできたHくんを無視して呼称付きで言い直させた対応と矛盾するように聞こえるかもしれない。「他人を間違って呼んでも良い」という誤学習に繋るという批判もあるかもしれない。どちらもそのとおりである。しかし他の事と同じく、療育にも優先順位がある。

2016-09-13 23:00:05
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

教室に来た私に即座に「オイ!松本!」と声をかけたことからもわかるように、彼は大人と関わりたい、注目を独り占めしたいという欲求が非常に強いお子さんである。人への興味が旺盛なのは良いが、その対象が大人に限定されている。これをどうやって他の子との関係形成に転換していくかが課題だった。

2016-09-13 23:06:20
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

「他の子との関係形成」というHくんの療育課題からすると間違った名前を呼ぶというあまり適切でない形とはいえ、彼がたかしくんとコミュニケーションを取り始めたことは非常に大きな進歩であり、それを途切らせないことを再優先にしたというのが、私が指導員の介入を止めた理由である。

2016-09-13 23:10:33
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

おそらくこの経験を経て、Hくんは「他の子を違った名前で呼ぶと面白がってくれる」と誤学習し、他の子にも間違った名前を呼ぶだろう。その場合、たかしくんのように面白がってくれる子もいるだろうが、ある子には怒られるかもしれない。だが、それがいい。

2016-09-13 23:13:50
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

Hくんが最初私を「松本!」と呼び、無視したらすぐ「松本先生」と呼び変えたことに現れた、彼の人間関係に対する興味と理解の早さを考えれば、彼が他の子と興味をもって関わり続けることさえできれば、「間違えた名前で呼べば面白がる」という一時的な誤学習もすぐ修正されるであろうと予想できた。

2016-09-13 23:24:17
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

Hくんが他の子を正しい名前で呼ぶことが大切なのか、間違っていても楽しく他のこと関わることが大切なのか。わかりやすい基準で判断できる問題ではない。それを判断するためには、予め保護者からの聴き取りや行動観察を経て療育計画を策定し、なにがHくんの最優先課題なのか明確にする必要がある。

2016-09-13 23:36:12
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

難しく書いてしまいましたが、要はお子さんの対応に困るような場面があるときは、「今この子が再優先に取り組むべきなのはなんだっけ?」といったん振り替えることが大事、ということをお伝えしたい事例でした。 twitter.com/iwacos/status/…

2016-09-13 23:43:18

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