「ディズニーは著作権に口うるさい」という神話はどうして生まれたのか

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uroak_miku @Uroak_Miku

ディズニーの二次創作を止めさせようとする人たち―ディズニーを畏怖する風潮はなぜ消えないのか? - Togetterまとめ togetter.com/li/953559 1)いくつか思いつくことがあったので思いつくままにつづってみます。

2016-10-03 19:00:35
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2)例の「小学校の児童がプールの底にミッキーを皆で描いたらディズニー・ジャパンから『消せ!』といいわたされた」事件とか、ディズニーはやたら厳格な印象があります。 pic.twitter.com/t6ijQFuDfN

2016-10-03 19:05:00
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3)ミッキーマウスが商品としてブレイクしたときからウォルトはこの方針を固持してきました。 pic.twitter.com/mwdDP7g5aA

2016-10-03 19:08:21
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4)なぜかわかりますか?ミッキーの前にオズワルドという人気アニメキャラを開発してシリーズものとして映画館で大人気だったのに社員たちがクーデターを起こして、それでディズニー兄弟は数人の腹心アニメーターとともに退社。 pic.twitter.com/Xd9bMNVjvy

2016-10-03 19:11:28
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5)起死回生の看板役者としてミッキーを、借金まみれで映画デビューさせ、ブレイク。youtu.be/BBgghnQF6E4

2016-10-03 19:13:54
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6)ところで商品化で稼ぐという計画はありませんでした。当時はそういう発想は誰にもなかった。いえ前例はいくつもあったのですが、あくまで副収入扱いされていました。

2016-10-03 19:15:10
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7)あるノート業者が「ディズニーさん、あのネズミさんを使わせてよ。契約金払うからさ」と話を持ち掛けてきたので「んーお好きなように」と契約。利潤の〇%という契約ではなく前金で貰って後は好きなだけノート刷ってくださいな方式でした。

2016-10-03 19:22:31
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8)当時アメリカは大不況でした。そこにミッキーの絵がついていればなんでも売れるとわかっていろんな業者が契約にやってきた。ウォルトは気を良くした。「うーむミッキーはもはや映画スターなのか。スターならそれなりの金をとるべきだよな」

2016-10-03 19:24:42
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9)アニメーションは人件費がばかにならない。新作が映画館に売れて興行収入(の分け前)が入ってくるまではスタジオは無収入だし。そこに商品化(このことばは当時あまり知られていなかったと想像)印税が入ってくるのは経営上もとてもありがたいことだった。

2016-10-03 19:26:35
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10)ところが法律がミッキーを守ってくれない。例えばチャップリンなら人権という法概念を盾にして「俺の姿格好を流用して無断で商売してんじゃねえ!」と訴えることができるし事実そうやってそっくりさん芸人の主演映画をさし止めたこともあるのですが、ミッキーはただの絵だから人権がない。 pic.twitter.com/i0mr3XN1Ae

2016-10-03 19:33:48
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11)そこでウォルトは fanciful character という概念を提唱し、商品化契約書に必ず入れるようにしました。ミッキーを特許と同格にするための工夫です。

2016-10-03 19:44:12
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12)むろんミッキーは発明品ではないのだから特許法で守ってもらえるわけではありません。特許庁に申請したところで「そんなん特許とちゃうやろ」と門前払いされる。

2016-10-03 19:45:25
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13)しかしウォルト(というかその兄ロイや顧問弁護士)は理屈をこねた。著作権法、不正競争防止法ほかの法律を組み合わせれば fanciful charcter を特許と実質同格にできる、と。

2016-10-03 19:46:45
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14)ゴジラが来襲しても、ゴジラは軍事力ではない以上自衛隊は応戦できない。そこで有害鳥獣駆除という建前で自衛隊を出動させるのと似ているでしょうか。

2016-10-03 19:49:30
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15)映画ではそうやって自衛隊がゴジラを迎え撃つのですが、厳格な法解釈を取る場合この理屈では自衛隊を動かせないそうです。

2016-10-03 19:51:25
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16)有害鳥獣駆除の法的根拠である鳥獣保護法ならびに鳥獣被害防止特措法では、鳥獣の定義について「鳥類又は哺乳類に属する野生動物」と第二条で定められています。ゴジラは鳥類なのか哺乳類なのか?どちらでもない場合、この法律が使えない。

2016-10-03 19:52:57
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17)fanciful charcter についても同じような法解釈上の困難があります。

2016-10-03 19:54:04
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18)しかしウォルトはひるまなかった。法解釈は裁判(の判決)の積み重ねで定まっていきます。法律には書かれていない「セクシャル・ハラスメント」の概念も裁判によって次第に法概念として受け入れていったように。ウォルトは「キャラクター」が知財だと主張し世界各国で裁判を重ねた。

2016-10-03 19:56:59
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19)裁判には至らなくても、ミッキーの無断使用が確認されればたとえ小学生相手でも容赦しなかった。土手にひとつでも穴が開いたら、それがどんなに小さな穴であってもやがて決壊に至る。だからこそ穴は大急ぎで埋める。 pic.twitter.com/Q9so43GWtz

2016-10-03 20:00:36
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20)当時の日本のマスコミは「たかが穴のひとつぐらいで…」と騒いだのですが、とんでもない、その穴ひとつでミッキー帝国が瓦解しかねなかった。

2016-10-03 20:02:02
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21)キャラクターという概念はヨーロッパの旧態依然な法理論からは生まれなかった。大量生産の時代を迎えた20世紀アメリカでこそ生まれた。つまり旧世界と新世界のあいだに勃発した知財戦争、それがキャラクターの正体です。

2016-10-03 20:07:11
uroak_miku @Uroak_Miku

22)現在、世界のどの国の法も、ヨーロッパの法理論を土台にしています。国際条約からしてそうですからね。そこにキャラクターが権利を主張するとは、すなわちヨーロッパ中心史観のなかでアメリカン・プラグマティズムを押し通すことにほかならない。

2016-10-03 20:08:51
uroak_miku @Uroak_Miku

23)ミッキーはそうやって世界で何十年も戦い続け、今の王国を育て上げ、守り続けてきたのです。

2016-10-03 20:09:47
uroak_miku @Uroak_Miku

24)クールジャパンの号令のもと、日本の人気キャラクターが世界に進出を果たしましたが、それだってウォルトの戦いに便乗して自分たちのすそ野を広げたにすぎない。

2016-10-03 20:11:00
uroak_miku @Uroak_Miku

25)キャラクター論はこのぐらい奥が深いのです。

2016-10-03 20:11:35