労働生産性について

日本は労働生産性が低い、労働生産性を高めよ、という意見がある。しかしそれは単純すぎることを事例を挙げながら考えてみる。
3
shinshinohara @ShinShinohara

労働生産性について考えてみる。日本は妙に残業が多い。正直、ムダ。ムダな仕事を極力減らして残業をなくし、快適な生活を送れるようにすることは大切。ムダに重複、繰り返し、紙ごみを増やすだけのような仕事は、なるべく減らした方がよい。この点での労働生産性の向上は大賛成。

2016-10-05 18:02:10
shinshinohara @ShinShinohara

しかし竹中平蔵氏の主張する労働生産性の向上は、どう見ても「首切り」にしか聞こえない。人を減らすか正社員をクビにして派遣社員に切り替えれば、賃金コストを圧縮して同じ業務量をこなせるから労働生産性は向上させるべきだ、という話。しかしこれで得するのは、竹中氏のような投資家か派遣会社。

2016-10-05 18:04:49
shinshinohara @ShinShinohara

首切りあるいは派遣社員への切り換えによる労働生産性の向上は、竹中氏のような投資家や竹中氏のように派遣会社の会長をやっている人間は儲かるが、社会全体はむしろ貧弱化する。労働者の手取りが減り、消費が減り、社会全体の景気が冷え込み、企業の業績も下がる。なにもいいことがない。

2016-10-05 18:07:11
shinshinohara @ShinShinohara

労働生産性を向上させたら、かえって貧困化した興味深い事例がある。アメリカ農業だ。アメリカはかつて、農家1件あたり17人分の余剰食料を生産するだけだった。それでも三世代家族を養い、カウボーイとして豊かな生活を送ることができた。しかし労働生産性が向上してから一変した。

2016-10-05 18:09:51
shinshinohara @ShinShinohara

今は1農家が平均170人分の余剰食料を供給できる。化学肥料とトラクターのお陰で、トウモロコシの生産量は10倍になった。労働生産性が10倍になったわけだ。ところが平均的な農家は、奥さんが学校の教師として働きに出て、自らも補助金をもらってやっと4人家族を養える。農業だけでは食えない。

2016-10-05 18:12:17
shinshinohara @ShinShinohara

アメリカ農業は労働生産性を10倍に引き上げたことで、吸収できる雇用が逆に大幅ダウン、収入も大幅ダウンした。なぜか?食料が余ったからだ。余れば価格は下落する。下落すれば手取りが減る。減れば家族を養えなくなる。労働生産性を向上させたら、アメリカの農家は貧しくなってしまった。

2016-10-05 18:14:55
shinshinohara @ShinShinohara

「怒りの葡萄」には、化学肥料とトラクターの力で大農場を経営するごく少数の人間が、多数の小農の生活を破壊し、流浪の民に押しやった姿が描かれている。労働生産性の向上は、豊かなカウボーイ生活を破壊し、低賃金にあえぐ工場労働者へと追いやったのだ。

2016-10-05 18:17:01
shinshinohara @ShinShinohara

産業革命は労働生産性を向上させた結果、多くの人々の生活を破壊した歴史がある。イギリスは紡績を工業化したことで大幅に労働生産性を向上、衣類の価格を劇的に押し下げた。その結果、インドの貧しい農家が手仕事でやっていた糸紡ぎでさえ価格競争に勝てず、インドの農村経済を破壊した。

2016-10-05 18:19:35
shinshinohara @ShinShinohara

労働生産性の向上は、その技術を確立した企業が儲けを総取りするので、一見すると儲かる方法に見える。しかし多くの人々の仕事を破壊し、生活を破壊し、結果的にその国の経済を破壊する恐ろしさも秘めている。イノベーションは必ずしも豊かさをもたらさないのだ。

2016-10-05 18:21:34
shinshinohara @ShinShinohara

「産業革命の時にも仕事が奪われると言って機械の打ち壊しなどが起きたが結果的にどこかで雇用が生まれ、なんとかなったじゃないか」という意見がよく聞かれる。これはひどく雑な意見だ。産業革命は残念ながら雇用を減らしはしても雇用を増やしはしなかった。雇用を増やしたのは「共産主義の恐怖」だ。

2016-10-05 18:24:18
shinshinohara @ShinShinohara

労働者の過酷な環境を放置すれば共産主義がはびこり、いずれは資本家達は根絶やしにされるかもしれない。その恐怖が、際限のない低賃金化に歯止めをかけ、雇用の確保と賃金の低下を押し止めた。労働生産性の向上が雇用を生んだとするのは大きな勘違いだと言える。

2016-10-05 18:27:05
shinshinohara @ShinShinohara

もう一つ、雇用を守り、賃金の低下を押し止めた理由がある。労働者の生活を安定化させた方が、結局得だということを明らかにした資本家が現れたことだ。その代表的な存在として、ロバート・オウエンとフォードをあげることができる。

2016-10-05 18:29:17
shinshinohara @ShinShinohara

オウエンは、いかに労働者の賃金を低くし、いかに労働者を長時間働かせるかということばかりを考えていた産業革命時の経営者とは全く逆に、労働者に十分な給与を保証し、無理のない労働時間に抑え、生活必需品を安く提供し、生活を楽しむことに意を砕いた。その結果、世界一の品質を誇る工場となった。

2016-10-05 18:32:24
shinshinohara @ShinShinohara

フォードは世界で初めて8時間労働、週40時間労働を導入した。給料も自動車を購入できるほどの高収入を保証した。当時の経済界からは大反対が起きた。しかしその結果、フォードの工場は品質生産量がピカイチ、しかもアメリカ労働者の待遇改善に大きく寄与した。

2016-10-05 18:34:47
shinshinohara @ShinShinohara

フォードがいみじくも見抜いたように、労働者に十分な給与を与え、労働時間を適切にした方が、結果的に儲かるのだ。労働者は生活を楽しみ、消費をし、社会全体の景気がよくなり、企業の業績を向上させ、それが労働者の給与を押し上げる。好循環が生まれるのだ。

2016-10-05 18:36:48
shinshinohara @ShinShinohara

給料を上げることは労働生産性を下げるように見える。しかし労働時間を短くし、給料を高くすれば、短い時間に集中して働くため、労働生産性はむしろ向上することを、フォードは長年の実験から明らかにしたのだ。この場合、労働生産性の向上と労働者の待遇改善が同時に起きる。興味深い。

2016-10-05 18:39:06
shinshinohara @ShinShinohara

資本主義社会が共産主義に飲み込まれずに済んだのは、この「フォード・モデル」によるところが大きい。労働時間を短くし、給与を十分に与える。それによって労働生産性の向上と労働者の待遇改善を同時に図る。これができたお陰で、資本主義社会は共産主義よりも豊かさを享受できたのだ。

2016-10-05 18:41:08
shinshinohara @ShinShinohara

ところが共産主義への恐怖が薄れた今、フォード・モデルは忘れられ、労働者をいかに安く長く働かせるかを目指す経営者が増えた。竹中平蔵氏はそうした人々に好都合な理屈を述べる。しかし竹中氏の見解は、ごく少数の資本家と派遣会社を儲けさすだけで、むしろ社会全体としては害悪だ。

2016-10-05 18:43:16
shinshinohara @ShinShinohara

指標を労働生産性におくのは誤っている。大切なのは、労働者に十分な収入がわたっているか、無理な長時間労働になっていないか、だ。この二つを実現するためにどうしたらよいのかを考えるのが経国済民、本来の経済だ。もちろん簡単ではない。竹中氏のようなおとぼけ理論ではもちろんない。ご注意あれ。

2016-10-05 18:46:03