sionsuzukaze さんによる戦前昭和の政治社会体制の実際について

日本のテロリストという明治前の暗殺から日本赤軍までいろいろ書いている本を読んでいるけど, 戦前日本えらい人々ががんがん暗殺されててやべえ国家だみたいな気持ちになってきた
2016-10-12 17:42:17
そりゃ大正後期から昭和初期なんてそりゃもうテロの季節ですから、ヤバイですよ(ほぼ同じ時期が戦前の民主主義最盛期になるわけですが)
2016-10-12 20:34:04
大正後期から昭和初期なんて戦前の民主主義最盛期で且つデモまっさかり且つなんだかんだ社会主義よりの政党も議席確保且つ監視検閲大活躍且つ軍拡まっしぐら且つ対外拡張独自路線且つ長期見通し全くなしなんだからヤバい国家じゃないならなんなんだというくらいにはヤバい。
2016-10-12 20:39:12
割と誤解されがちな点だとは思うのだけど、大正デモクラシーという用語で象徴される戦前の民主主義のピークは昭和一桁年くらいなはず。この昭和の最初の一桁年から十年代にかけての十年間で世相から何からがあっという間に変わった。
2016-10-12 20:42:25
内務省関係の資料とかその他の省庁の部外秘資料とか見てると、選挙もデモも共産主義の地下組織(というには公然とした大学内学生組織)も、だいたいそのくらいがピークで、そこから10年であっという間にびっくりするくらい変わってる。テロの横行はそれより若干前の時期がピークといえばピーク。
2016-10-12 20:46:42
よく統制国家の象徴として引き合いに出されるいわゆる国家総動員法も昭和十年代前半の時期には成立が危うい局面もあったし、その後の翼賛会もそもそもスタート(S15)から微妙な感じで、ガッチガチに統制だなんだが走るのは昭和十年代後期なんですよね。
2016-10-12 20:54:04
そのあたりが概ね完成というかまがりなりにも整うとなると、翼協がS17(1942)とかなので、もう全面戦争真最中ということになるわけです。もっともこれは珍しい話でもなく、ドイツも政治統制は先行したものの、経済面でガチガチに統制と動員が始まるのは対ソ戦短期戦が不可能と悟ってからです。
2016-10-12 20:59:02
しばしば出てくる「戦前に似てる」論とか、いったいどの時期の何を指してそれに似てると言ってるのかよくわからんことが多いのですが、多分に漏れず本邦も文字通りの意味で総力戦だの動員だのにしゃかりきになったのって、戦争真最中の42年後半から45年敗戦までのわずか3年くらいです。
2016-10-12 21:02:29
で、そんな総力戦体制ですが、これまたご存知のように、バリバリの右派ナショナリストで占められていたかというとそんなことはなくて、計画経済なんて共産主義的じゃないかとこれまた一騒動あったわけです。いわゆる企画院がマルクス主義研究してたのがバレた事件ですね。
2016-10-12 21:05:21
ついでにそんな翼賛体制ではありますが、42年の選挙後に程なく分裂含みとなり、結局旧来の吸収前党派行動に加えてそれこそ最右翼のグループは分派行動紛いの公然とした政府批判やったりするわけです。戦中なんですけどね。で本土決戦直前には文字通りの政府と軍が主導した統制組織から分派が出る。
2016-10-12 21:11:12
もちろん公然隠然とした圧力や検閲や禁止命令やらが多数あったわけですし、自主規制や自主検閲も山ほどあったわけですけど、「似てる」論を言う人がイメージしているようなほぼ何もできません言えませんなんてものは、そこまで極端な時期はほんの一時期なわけです。
2016-10-12 21:14:29
翼賛会とかぶっちゃけ違憲じゃね?って提起もあったり、それこそ対米開戦の僅か2~3年前の新聞には文字通り「ファッショはダメ」みたいな記事が談話つきで、掲載されてたわけです。このあたりはオンラインアーカイブ漁ればいくらでも掘れます。
2016-10-12 21:18:02
なので本邦の総動員に向けた動きというのは、「ファッショじゃない」「共産主義でもない」と繕いながら実際にはそれをやろうとする過程、と言えない訳でもないとは思います。まあドイツも似たようなところはありますけどね。
2016-10-12 21:20:28
で、「そうではない」と言いながら実際はそれ、みたいな話の延長で「戦前に似てる」ということになると、ではどれが?となるわけです。
2016-10-12 21:22:15
戦前に似てるという部分が仮に指摘可能だと仮定した場合、私はべつに現政権がそうだとは思えませんし、法整備においてもそうは思えません。強いて言えば、ですけど、指摘するなら閉塞感とかなのでしょう。軍国主義やらナショナリズムやらではなく。そこまで強度の閉塞感があるかはわかりませんけど。
2016-10-12 21:25:34以下新聞記事の紹介。

「電気国営論に就て (1〜6)」lib.kobe-u.ac.jp/das/jsp/ja/Con… 一電力会社の社長の記事とはいえ、事実上の電力統制方針に総論反対、各論反対、結論として反対、という記事(結部に明瞭に「国家統制反対」と言い切ってる)。S11、大阪毎日新聞。
2016-10-12 22:27:25
「『産組』刷新目指す新進の圧力」lib.kobe-u.ac.jp/das/jsp/ja/Con… こっちは産組織の千石興太郎上げ記事なのだが、「ファッショ型といってもかれの場合は適応性もあれば融通性も具えていて、適当にカムフラージュしているこというまでもない。」とか、隠せてない。S12東京日日。
2016-10-12 22:32:14
「公益味を加えた統制経済の進発」lib.kobe-u.ac.jp/das/jsp/ja/Con… こっちは五・一五事件二日後の記事。ファッショ運動に言及しつつ既に二日後に「適法ならざる行動に対する国家権力の発動はあくまで正々堂々でなければならない」と適法でない行為であることの適否言及。S7神戸又新
2016-10-12 22:35:42
「断じてファッショ的の経済思想に非ず」lib.kobe-u.ac.jp/das/jsp/ja/Con… これS10時事。なおこれは商工次官談話からのタイトル引用。いかに「ファッショ統制」の用語が当時でさえ拒否感を抱かれていたかが伺えますな。
2016-10-12 22:37:32
「官業労働組合弾圧に無産両党敢然と抗議」lib.kobe-u.ac.jp/das/jsp/ja/Con… これは陸軍と共同歩調を歩んだ点が指摘されることが多い社大党がファッショ批判を全面展開した際の記事。S11報知新聞
2016-10-12 22:40:41
「独逸の失業減少の実相」lib.kobe-u.ac.jp/das/jsp/ja/Con… こっちはS13中外商業。ナチスドイツの失業者・率低減を端的に「軍拡に拠るものが多く建設的政策じゃねーよ」と批判してる記事。寄稿記事ですけど。ついでに「同じファッショのイタリアはさして失業低減できてない」旨も。
2016-10-12 22:44:14
まあこういう記事ばっかり拾っててもアレなのだけど、こういう統制計画経済に批判的な記事というのが概ねS15あたりを境に激減するのよね。それくらい昭和十年代の前半と後半では全然違う。まあ対英米戦に突入したからというのもあるのだけど、その1年くらい前がターニングポイント。
2016-10-12 22:48:43