SF作家・山口優さんによる『君の名は。』の物理学的またはSF的考察

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Yu Yamaguchi @Yu_Yamaguchi_

@ni_ka こんばんは。「君の名は。」見ましたよー(^-^) とても良かったです。いろいろと設定が気になる造りでしたね。設定を楽しむには、まず、作中にちらりと言及されたエヴェレットの多世界解釈(ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8…)がキーになると思います。(続く)

2016-10-10 23:42:49
Yu Yamaguchi @Yu_Yamaguchi_

@ni_ka (続き)多世界解釈の発想の元となったのは「二重スリット実験」と呼ばれるものです(ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C…)。まあこの実験だけでなく、この世の全ての事象はよくよく調べてみるとこの実験と同じようにふるまっているのですが、とにかくこれは問題点をクリア

2016-10-10 23:50:22
Yu Yamaguchi @Yu_Yamaguchi_

@ni_ka (続き)に抜き出す実験になっていると思います(ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C…)。二つのスリットのあるプールの手前で、手で水をぱちゃぱちゃやると、できた波は二つのスリットを通った段階で二つに分かれ、互いに干渉します。それを電子でやっているのですが、

2016-10-10 23:53:39
Yu Yamaguchi @Yu_Yamaguchi_

@ni_ka このとき、電子の場合波を片方のスリットだけ狙って通すことができます。片方のスリットだけ通るので当然干渉は起きないはずが、時間をおいて何回も双方のスリットを一つずつ波を通していると、やがてプールの向こう側の壁には干渉縞ができます。干渉できないはずなのに干渉している

2016-10-10 23:56:27
Yu Yamaguchi @Yu_Yamaguchi_

@ni_ka というわけです。これは、「電子の存在確率は一点に集中しているわけではなく、ある程度の空間的な拡がりを持っていて、電子は自分自身を干渉しており、更に、空間的な拡がりを持った電子の存在確率は、壁にぶつかった途端一カ所に収束する」と解釈されています。

2016-10-10 23:58:05
Yu Yamaguchi @Yu_Yamaguchi_

@ni_ka 多世界解釈では、「電子の存在確率」という考え方をせず、それぞれの電子は、別の世界に存在すると考えます。別々の世界の電子同士が互いに干渉しているのです。そして、壁にぶつかった途端(人が観測した途端)、干渉はなくなってしまい、自分の世界の電子だけが見えるようになるのです

2016-10-10 23:59:38
Yu Yamaguchi @Yu_Yamaguchi_

@ni_ka この作品における「夢」は、干渉している状態だと思います。電子ではなくて男の子と女の子なわけですが。しかし、夢のようなあやふやな状態ではなく、実際に事実を確定させようとすると(壁にぶつけようとすると)、途端に干渉はなくなってしまう。別の世界が存在した証拠は消える、と

2016-10-11 00:01:47
Yu Yamaguchi @Yu_Yamaguchi_

@ni_ka いうことです。しかし(ここからがダイナミックなのですが)、別々の世界は、(組紐のように)別れたり、より合わさったりすることもできる、という設定なのでしょう。あまりいろいろ具体的に書くといけないので、あやふやになりましたが、私はそういう設定なのだと思いました。

2016-10-11 00:03:30
Yu Yamaguchi @Yu_Yamaguchi_

@ni_ka そして世界と世界がよりあわさる時に力になるのが、同時に何かを観察する、と言うことなのかもしれないと思いました。観測された事象は一つの世界になるのなら、別の世界で同時に何かを観測すればその世界はより合わさるのではないかと。「何か」というのは人の思いかもしれません。共鳴

2016-10-11 00:05:24
Yu Yamaguchi @Yu_Yamaguchi_

@ni_ka というか。このあたりは、いくら実験しても、数学的には無矛盾で、しかも人間の認識では理解しづらい事象になるので、自然界の問題というより人間の問題だと言われています。多世界解釈も全くの思考実験で、数学的には無矛盾ながらそれが現実であると証明できる手段はありません。しかし

2016-10-11 00:06:46
Yu Yamaguchi @Yu_Yamaguchi_

@ni_ka このような美しい物語を生み出す力になるのなら、それだけで価値があるのかもしれませんね。

2016-10-11 00:07:24
Yu Yamaguchi @Yu_Yamaguchi_

@ni_ka 私の解釈としては以上です。付け加えるなら、あの場所にクレーターがたくさんあるのは面白い設定ですね。確率的にはほぼ起こりえないことながら、毎回あそこに落ちている、というのも、何か引き寄せるものがあってのことかもしれません。隕石をあのように肯定的にも否定的にも描くのは

2016-10-11 00:10:39
Yu Yamaguchi @Yu_Yamaguchi_

@ni_ka 面白いと思いました。組紐の喩えもいいですね。よくよく考えてみると、もっと深い解釈が出てきそうな、そんな作品でした。後は、表現としては扉が効果的に使われていますね。世界をわたる、あるいは多世界の間を干渉する、ということの比喩なのでしょうか。別々の世界の間の干渉の比喩は

2016-10-11 00:12:21
Yu Yamaguchi @Yu_Yamaguchi_

@ni_ka その他にもたくさん出てきたように思います。ちょっと付け足しが多くなりましたが、私の感想はそんな感じです。(^-^)

2016-10-11 00:12:59
Yu Yamaguchi @Yu_Yamaguchi_

@ni_ka ありがとうございます! 作品をお楽しみになる上で一つのご参考にしていただければとても幸いです(^-^)  他にも細かいところにいろいろ仕込みがあるようで、思い出してみたらまた面白い解釈が思いつくかもしれません。SF作品としてもすごいと思いますよー。二重スリット実験等

2016-10-11 00:17:43
Yu Yamaguchi @Yu_Yamaguchi_

@ni_ka ご質問があれば何でも聞いてくださいね(^-^)

2016-10-11 00:18:25
Yu Yamaguchi @Yu_Yamaguchi_

@ni_ka ありがとうございます(^-^) ni_kaさんにそう言っていただけるととても光栄です。あの作品自体が、私のようなSF好きを刺激する要素をたくさん持っているのです。しかもくどくなく、さわやかにそれを見せる。そういう意味でも、素晴らしい作品だと思いましたね。

2016-10-11 00:21:52
Yu Yamaguchi @Yu_Yamaguchi_

@yuichiminami @ni_ka kaz.さん、ありがとうございます。それだけ作品が素晴らしいということだと思いますが、とても光栄です。脳内の情報伝達も電気ポテンシャルなので、電子で記憶の欠片(夢)を交換するのは実際の所それほど非現実的ではない設定なのではと思いました。

2016-10-11 00:44:16
Yu Yamaguchi @Yu_Yamaguchi_

@yuichiminami @ni_ka (承前)可能世界論は、論の出所は多世界解釈とは全く異なりますが、考え方自体は似ていると思います。一つ大きな違いがあるとすれば、多世界解釈は、世界同士が干渉する、ということでしょうか。

2016-10-11 00:47:37
Yu Yamaguchi @Yu_Yamaguchi_

@yuichiminami @ni_ka ありがとうございます。「君の名は。」おすすめです。またご感想をシェアしたいですね。私の小説も、お読みくださるととても嬉しいです。

2016-10-11 01:13:05