第14話 _エンドウ沖の残火 プロローグ_

脳内妄想艦これSS 独自設定注意
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白樺活性炭濾過物 @bookmark_vodka

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2016-10-15 09:17:19
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__ 自分のための時間。自分の時間 __

2016-10-15 09:17:56
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__ 第14話 エンドウ沖の残火 プロローグ__

2016-10-15 09:18:06
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14-P-1「~♪」 監獄島の鎮守府、浜風の部屋。 数日ぶりに任務の予定は無く、彼女は机に向かって趣味のアクセサリ作りに時間を費やしていた。 「…ふー」 金属片を整え、器用に曲げてイメージ通りの形にしていく。 本当ならセッティング位は既製のものを使いたいのだが、そうもいかない。

2016-10-15 09:24:01
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14-P-2 基部を仕上げた浜風は、続けて細かい鉄屑を歯ブラシで清掃する作業に取り掛かる。 …このための材料を申請する訳にもいかない。 使っているのは全て任務中や島で手に入る自然物や漂流物、そして明石から譲られた作業時の端材である。 兄妹揃ってここでは中々に贅沢な趣味と言えよう。

2016-10-15 09:27:22
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14-P-3 作業に集中していると『コンコンコンッ』と、ふいに部屋のドアがノックされた。 「入るわよー」 部屋主の返答を待たずに入室して来たのは、五十鈴だ。 「返事くらいは聞いてから入ってきて下さいよ」 「固いことは言わない」 後ろのベッドの縁に腰掛け、勝手に寛ぎ始める来室者。

2016-10-15 09:30:38
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14-P-4「…好きよね、それ」 五十鈴は浜風の机の上方の棚を見つめる。 指輪、ブレスレット、ブローチ、ネックレス… そこには、この部屋に訪れる度に徐々に増えつつある手作りのアクセサリが整然と並べられていた。 「昔から暇さえあれば作ってましたから。馬鹿にされた事もありましたが」

2016-10-15 09:37:53
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14-P-5「きっかけは?」 「妹の…こほん、紛らわしいな。姉妹艦のほうじゃなくて。綾香のためだった」 手元では今度はガラス片を選別しながら、浜風…大智が懐かしそうに微笑む。 顔は浜風なのだが、その目や表情からは普段の彼女には無い雰囲気が感じられる。 「貴方も大概シスコンねぇ」

2016-10-15 09:40:30
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14-P-6「ほっとけ」 傍らに置いてあるシャーレの中にガラス片がまた一つ積まれた。 鉄くずもガラスも、ビーズの代わりを担うのである。 「小さい頃は凄い泣き虫でさ。どうしたら良いか迷って…手近な花で腕輪を作ってあげたんだ。そしたら漸く泣き止んだ…それが一番最初だったと思う。うん」

2016-10-15 09:44:09
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14-P-7「でも、今となってはー…」 「?」 大智の手が止まる。指先のシーグラスをどこか寂しそうにじっと見つめたまま、少しの間沈黙していた。 「悩みでもあるの?」 「…いや、単に自分のためになっちゃったなぁとか、そういう話」 ガラス片が積まれる。汚れがちゃんと落ちてない。

2016-10-15 09:47:30
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14-P-8「ふぅん…だったらさ」 五十鈴はベッドから立ち上がると、先程大智の作ったセッティングを摘みあげてじっと眺め… 「良かったら私にも1つ作ってくれない、かな?」 …願い出てみる。 「え?」 「渡す相手が居なくて寂しいっていうならホラ、別に私でも問題ないでしょう?」

2016-10-15 09:51:34
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14-P-9 ニヤリと笑いかける五十鈴。指先ではセッティングがほぼ無意識にくるくると回されている。 「うーん…まぁ、確かにそうか」 作業道具を置いて暫し腕組みをして考える。(無自覚に胸が強調される) 「…それじゃ久々に腕を振るってみようかな。たっぷり時間を貰ってもいいかな?」

2016-10-15 09:55:02
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14-P-10「何日かかってもいいわよ、気長に待ってるから」 コトン、と机にセッティングを戻すと、五十鈴は壁の時計に目をやる。 「私は自主訓練でもしてくるわ。勝手にお邪魔しちゃってごめんね」 「いや、下準備とか、誰かと喋ってた方が捗るし。此方こそ茶の一つ振る舞わなくてごめんよ」

2016-10-15 09:59:39
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14-P-11 ーパタン 浜風の部屋を出て、扉を後手に閉める。 ちらっと左右を確認すると、静かで埃っぽいいつもの鎮守府の廊下。人影は見えない。 「…ふふ」 扉の前で、部屋の中では我慢していた女の子らしい満面の笑みが顔の上に乗っかった。 「楽しみだなぁ」

2016-10-15 10:04:09
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14-P-12「素直に言えばいつでも作るってのに」 自室の前で五十鈴がそんな顔をしていることを知ってか知らずか、部屋の中では大智がやれやれといった調子で呟く。 最後の貝片を磨き終えて容器代わりのシャーレの蓋を閉めると、彼女は棚の完成品の脇にそれを収納した。

2016-10-15 10:08:54
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14-P-13「…」 容器を閉まった際、棚に置いてあるブレスレットに目が留まる。 漂流物と小さな鈴のあしらわれたそれは、この鎮守府に来た時綾香が自分を助けるために作った物だ。 早いもので、自分が『この体』になってから既に3ヵ月近くが過ぎようとしている。暮らしにはいい加減慣れた。

2016-10-15 10:12:18
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14-P-14 だが、どうしても慣れない感覚。 意識の引っ張られる感覚。初めから浜風の意識の方が強いだけに、元の自分がー…今の姿形では元もへったくれも無いのだが、差しおかれてしまう感覚。 こんな状態がこれからずっと続くなら、いつか自分が消えてしまうのではないかという、心の靄。

2016-10-15 10:16:15
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14-P-15「だから、そう…『自分のため』になっちゃったんだよな」 大智は机の上の材料や工具、作った装飾品の類をゆっくりと見回しながらぽつりと零す。 この机の周りのごちゃごちゃとした空間だけは、日野原家の大智の自室の印象とさして変わりは無いのである。

2016-10-15 10:19:12
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14-P-16 今の彼女にとってのこの時間は、『彼女』が『彼』を見失わないようにするための一つの手段。 ー自分が、自分であるための時間なのだ。

2016-10-15 10:20:36
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__ 第14話 エンドウ沖の残火 プロローグ 終わり パート1に続く__

2016-10-15 10:22:12