掌小説語り~自作つぃのべる集~31

自作つぃのべるのまとめです。 2015年1月分
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リュカ @ryuka511

ある日神は憂い顔で仰いました。"救いの掌は千では足りない"と。"お前達の手も貸しなさい"と。そこで我々は自らの両の掌を切り落とし神に捧げました。神は静かに微笑まれ、救うはずだった世界と、血を流しながらお言葉を待つ我々を焼き払われました。 #twnovel #世界もう滅ぼしたい協会

2015-01-01 23:45:14
リュカ @ryuka511

とどめを刺す前に、せめて一言かけてやれれば、この結末に納得出来ただろうか。魔王城跡に剣を突き立てる。魔王が人間を憎む理由に共感してしまった。だけど僕は魔王を討つ為に生まれ、それを放棄する事は許されなかった。最期の瞬間、魔王は穏やかに笑っていて、今も僕の胸を穿つ。 #twnovel

2015-01-02 22:45:29
リュカ @ryuka511

「私の心臓を正確に貫けば私を倒せるだろう。」魔王の言葉に勇者の剣は魔王の胸元を狙う。そして柄まで深く剣を突き立てる勇者の顔が魔王の眼前にあった。「それはダミーの心臓、人の姿をとっているからといって魔族の心臓もそこだと思ったか?」ハッとした勇者を捕らえ魔王は笑う。 #twnovel

2015-01-04 00:00:01
リュカ @ryuka511

「僕を殺そうとしたくせに。」「敵を欺くには味方からだ。」長く世界を支配した魔王と、世界を救うと予言された少年は笑う。人々は救われると歓喜した。だが、少年が救ったのは支配者であり続ける事に疲れた若き魔王であった。「自分達が救われるなんてどうして思ったんだろうね。」 #twnovel

2015-01-04 23:29:58
リュカ @ryuka511

ペットボトルで作るロケットに夢中になった。本物を作れば、あの空へも月へだって行ける。そうだ、君をいつか月へ連れて行ってあげる。僕の一大決心を君は子供っぽいと笑った。ムキになる僕に今度は優しく笑う。わざわざそこまで行かなくても、ここから貴方と見る月は充分綺麗だと。 #twnovel

2015-01-05 23:04:08
リュカ @ryuka511

主は砂漠の戦で行方不明になった。父も兄も諦めろと言うが、私は諦められなかった。私が諦めたら誰が主を救出するのだ。私は砂漠へ向かった。幸い、私は三男。失うものは無い。主を救出した所で得る物も小さいが、三男の私にも目をかけてくれた主が死んだなどと、認めたくないのだ。 #twnovel

2015-01-06 22:37:19
リュカ @ryuka511

王家の墓守の私と、その墓にいずれ入る君。死臭の染みた忌むべき存在の私を君は労ってくれた。私は最期まで君に触れる事は叶わないだろう。せめて君が安らかに眠れるよう、ここを守り続けよう。君が永遠の眠りに就く時は、私が君を送る炎になれたらなどと、愚にもつかない夢を見る。 #twnovel

2015-01-08 00:32:28
リュカ @ryuka511

君の為なら死ねる、君には決して伝えないけれど。住む世界の違う君を愛するなど許されないから。君の隣には君に相応しい全てを備えた男性。羨望と嫉妬を押し殺し祝福する。喉で殺した愛が心臓を貫くとき、秘めた愛に殉じた私の心を君が知る事は無くても、君の幸せの為に私は消える。 #twnovel

2015-01-08 23:09:10
リュカ @ryuka511

剣を手に魔物を狩る。急所を貫き首を落とすと血の雨が降った。敵を屠り、横殴りの血の雨を浴び地を駆ける。世界を救う気など無かった。ただ、自分の世界を奪った魔物が憎いから、魔物を狩る。剣に手に血がこびり付き、いつか自分も魔物になるのだろうかと思う。それでも構わない。 #twnovel

2015-01-09 22:30:52
リュカ @ryuka511

隣国の兵士達が城下町へ攻めてきた。逃げ惑う私達を敵兵は次々と斬り伏せていく。家族とはぐれた私は皆を探しながら必死に逃げた。敵の刃から逃げ痛みに耐え走り気がつくとここにいた。家族は、友は、無事だろうか。私は黄泉のほとりに立つ。大切な者達をこの奥へ行かせない為に。 #twnovel

2015-01-10 22:54:47
リュカ @ryuka511

「王妃の首飾りが無い!」「バカな、結界は完璧だぞ!」怪盗の予告状を受け宮廷魔導士達は強固な結界を張った。微弱な魔力にも反応し破る事は不可能な結界だった。「奴はどんな魔法を使ったのだ。」慌てる魔導士達を双眼鏡で眺め怪盗は笑う。「僕が使うのは魔法じゃないよ、頭さ。」 #twnovel

2015-01-12 00:13:45
リュカ @ryuka511

鏡の前でネクタイを締める。様にならないスーツ姿に苦笑し、もう戻れない少年時代を思った。鏡を抜けた先の虹の下の国で、秘宝を巡る大冒険。あれは夢なんかじゃない。別れ際、また会えるよって君の言葉を今でも信じてる。だけど大人になってしまった僕は、君にまだ会えるだろうか。 #twnovel

2015-01-13 00:52:27
リュカ @ryuka511

「災難だったな。」「全く。誰があんな噂流したんだ。」魔法使いの魔力は彼らの帽子に詰まっている、そんな噂が流れ魔法使いが襲撃される事件が多発していた。自衛の為魔法使い達は帽子を手放す。別に無くても構わない物だ。「道具が全てと考える輩に魔法は使いこなせないのにな。」 #twnovel

2015-01-13 22:59:54
リュカ @ryuka511

その地に王国が出来る以前から魔女は森に住んでいた。ある時王が流行病や飢饉は魔女の仕業だと告げる。人々は魔女を敵視し始め魔女は森から姿を消した。その日から国に役病が蔓延し魔物まで出るようになった。魔女はこの地の守護者であったと人々が気付いた時には、もう手遅れだった。#twnovel

2015-01-14 23:19:14
リュカ @ryuka511

三日月の女神様は地上の民が作る林檎が大好きです。しかしその林檎が星の名前を戴いてると知り女神様は怒りました。地上の民は慌てて女神様の元へ向かいます。その星は大層美しく女神様に相応しいと説明しました。女神様は嬉しそうに林檎を齧り、地上を今夜も美しく照らされました。 #twnovel

2015-01-15 23:14:18
リュカ @ryuka511

君が笑う。美しいままで、あの頃のままで。見つめる僕に気付いているのかいないのか。どちらでも構わなかった。愛しい君、いつまでもそこでそのまま笑っていて。僕の見つめる先で君が笑う。近い未来に現実のものになるはずだった光景は、永遠の夢の中。僕の箱庭は今度こそ君を守る。 #twnovel

2015-01-16 23:20:06
リュカ @ryuka511

遊園地のマスコットがシンボルの城を占拠した。銃を構える着ぐるみに歓声が上がる。だが、マスコットに中の人はいない。これはショーではないのだ。そもそもこの遊園地は、捨てられた玩具達の想いが作り上げた幻。銃が火を吹く。彼らの願いは一つだけ。僕らを、あの頃を、思い出せ。 #twnovel

2015-01-17 23:30:55
リュカ @ryuka511

彼の標的は私だった。遺言状に従い遺産の全てを相続した私を、邪魔に思う輩は数多い。私を前にして、これは任務だと自分に言い聞かせるように繰り返す彼。貴方は依頼人と違って優しい人なのね。大丈夫よ、私が死んだら罪深いこの家は終わる。貴方に迷惑はかけないから、やって頂戴。 #twnovel

2015-01-19 00:27:41
リュカ @ryuka511

死神は人々が発した死にたいの軽さを計る。その中から一番の死にたいを迎えに行くのだ。黒いフードに銀の鎌、いかにもな風体で現れると人々は必死で抵抗する。死にたいのだろうと問えば、生きるから帰れと叫ぶ。任務完了。死ぬ運命に無い者まで連れて行っては黄泉は飽和してしまう。 #twnovel

2015-01-19 23:21:06
リュカ @ryuka511

きみが描く世界は澄みきって美しかった。ぼくと同じものを見ていながら、どうしてこんなにも違うんだろう。きみの世界が美しい理由を知りたかった。世界を見ているその目が、心が、美しいからだろうか。なら、例えばそれらを壊したら、それでもきみの世界は美しいままなんだろうか。 #twnovel

2015-01-21 00:48:04
リュカ @ryuka511

「今夜は野宿ですね。」吟遊詩人は慣れた手つきで火を起こして野営の準備を整え、書き上げた叙事詩に目を通す。戦が終わったばかりの国を唄ったものだが、唄に乗せるにはまだ早い。自分は過去をただ美しく唄うだけの吟遊詩人。書き上げた詩を焚火にくべ燃やす彼の唇に自嘲が浮かぶ。 #twnovel

2015-01-21 23:51:29
リュカ @ryuka511

ご主人様は戦争で大勢の人を殺したと仰います。自分が人を愛する資格など無いと終戦後ずっと一人きりで暮らしておられます。焼け野原と化した街で拾った私をせめてもの償いにと温室に飾られました。前のご主人様を戦争で亡くましたが、ご自身を責め続ける今のご主人様を恨めません。 #twnovel

2015-01-22 23:08:21
リュカ @ryuka511

幼い吸血鬼の少女達は、甘い甘いグレナデンシロップで乾杯する。グラスを傾けると、赤い液体がとろりと少女達の唇を濡らし、未発達な牙が赤い色を纏う。初めての吸血は惚れた相手が良いか? 見目麗しい者が良いか? 少女達はシロップを血に見立て、甘美な大人の夢を語り合う。 #twnovel

2015-01-24 00:28:13
リュカ @ryuka511

我々は城に出入りする商人を捕らえ王宮に身代金を要求した。だが国王は要求を捨て置き民すらも因果応報と嘲笑する。世界中から恐れ厭われる我々さえも彼らの態度に戦慄した。故国の反応に失望した商人を我々の軍に誘う。彼は商人のコネクションを用いて予想以上の活躍をしてくれた。 #twnovel

2015-01-24 22:56:10
リュカ @ryuka511

城は革命軍の手に落ちた。王家の人間は全て処刑されるという。国を傾けた王は自業自得だとしてもまだ若い王女にまでその責任はあるのだろうか。君を連れて逃げ出せば良かった。僕も革命軍の監視下にあり、手を打てないままその日が訪れる。王女は民衆の呪詛の声に深々と頭を下げる。 #twnovel

2015-01-25 23:34:36