サンズ・オブ・ケオス #1

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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リンク note(ノート) 第4部本編「エイジ・オブ・マッポーカリプス」より、第3話【サンズ・オブ・ケオス】 | ダイハードテイルズ・マガジン | note ダイハードテイルズ・マガジンの限定公開ノート | 2016-11-03 14:35:13 +0900
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◆「オーゴッド」◆「サツガイはどこだ」「待て、焦りは禁物だ」◆「貴様を殺す」「誰の差し金だ」「……おれ自身……!」◆「ウツケめ。風下に立つからだ。どうでもよし」◆「貴様……グワーッ!」「離さん!」◆「行けよ。試験なんだろ」◆「ピ、ピザ食えよ。アツアツの!」◆「スシを取れ」◆

2016-10-25 22:29:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

悲鳴を上げ続けるヒロインの口に荒々しく猿轡を噛ませ、邪悪な白ストライプスーツのギャングが凄んだ。「ココマデ、ヤメテダゼ!」だが、ロベルト・ストームドラゴンは少しも怯まずカンフーを構え、半身になって小刻みなステップを踏んだ。そして言い放った。「オマエタチモナ!」戦闘が始まった。

2016-10-25 22:32:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハイヤーッ!」ロベルトがシャウトした。襲い掛かるギャングは目にも止まらぬカンフーで円周状に弾き倒された。「フウッ!」更にシャウト。「……ドンナニモ、ナッチマウゼ!」ギャング首領がバッドサインで応えると、リムジンを飛び越えて黒装束のニンジャ達が回転着地し、撥ねながら襲い掛かった。

2016-10-25 22:35:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャはカタナと鎖鎌で武装している。コワイ!しかしロベルトは挑発的に手招きした。ニンジャは無言で地を蹴った。闇に生きる戦士なのだ。しかし!「ハイヤーッ!ハイ、ハイヤーッ!」ロベルトのローキック、回し蹴り、サミング、ワン・インチ・パンチの連続打撃によってニンジャすら打ち倒される!

2016-10-25 22:38:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ザマアミチマエ!」ギャング首領が罵り、髑髏マークの瓶をロベルトの足元に叩きつけた。「グワーッ!」立ち込める有毒ガス!ギャング首領は素早くガスマスクだ。「ナンダコレハ!ヨクミエナイ!」ロベルトの影が悶えた。ギャング首領は哄笑し、銃を構える……しかし!「ハイヤーッ!」「グワーッ!」

2016-10-25 22:40:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤッタ!これがロベルトの心眼殺法だ。目を閉じた彼はキの流れを読んで跳び蹴りを放ち、見事ギャング首領の頭に命中させたのだ。吹き飛ぶギャング首領、感涙するヒロイン、ロベルトのサムアップがスローモーションとなり、「THE END 終劇」の字幕が浮かび上がって暗転した。潔い終わり方だ。

2016-10-25 22:42:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……「ヤッター!」コトブキは握りこぶしを振り上げ、ソファーから少し撥ねて、ドスンと着地した。画面にはスタッフロールが流れ、VHSの再生ノイズが上下にうるさい。彼女は横の盆菓子をまさぐった。ひとつだけ残っている。「……」彼女はやや躊躇い、惜しむように食べた。やがてビデオが終わった。

2016-10-25 22:45:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガガコー。機械音が鳴り、テレビモニタの下の骨董デッキからビデオテープが吐き出された。ラベルには「NINJA STARBLOOD」のタイトル。50年以上昔、アメリカで作られた日本コンセプトのカンフー映画である。「……ハア。終わってしまいました」コトブキは独り言を呟き、立ち上がった。

2016-10-25 22:48:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼女は広い一室を振り返り、壁一面に並べられた骨董テープのラベルを見渡した。それらはすべて、電子戦争以前の、誰も気にも留めずアーカイブもされていないようなグラインド・ハウス映画、モンド映画、カンフー映画である。コトブキはテープを取り、神妙な表情でそれを棚に戻した。「完了です」

2016-10-25 22:54:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ビデオは全て見てしまった。菓子も食べ尽くした。旅立ちの時がやって来たといえよう。コトブキはクローゼットからアオザイを取り出し、きっちりと着替えた。正装のつもりだ。彼女は姿見の前で淡いオレンジの髪に櫛を入れ、口角を少し上げて微笑んだ。美しいが、わかる者にはわかる。瞳の奥の刻印……。

2016-10-25 22:58:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(残せ!アユミを殺したニンジャの道筋を!)(アバババーッ!)ナハトローニンは赤黒の火を吐き、痙攣した。(サツガイ……貴様はサツガイを……アバッ、ハハハ、殺す……殺す気でおるのか……笑止……アバーッ!)(そうだ。サツガイを殺す。必ず)(できるものか……奴は神にも等しい……)

2016-10-25 23:06:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(貴様の見解に興味は無い。言え。貴様らを繋ぐ糸がある筈だ)(……俺は……独りだ……アバーッ!)(サツガイから力を得たニンジャの名を、おれに言え)(……貴様は必ず死ぬ……ブザマにな……だが、よかろう)燃え崩れながら、ナハトローニンは呟いた。(……メイレイン……!)

2016-10-25 23:09:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「メイレイン!」マスラダはバネ仕掛けめいて跳ね起き、戸口に蠢いた影を睨んだ。サツガイ!「イヤーッ!」「アイエエエエ!」KRAAAASH!マスラダの右腕はタキの顔の横の壁に、第一関節まで埋め込まれた。「ア……アイエエエエ……」タキは壁をずり下がった。「げ、元気そうで何よりだな……」

2016-10-25 23:13:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……!」マスラダはタキを見下ろして舌打ちし、壁から腕を引き抜いた。それから己の手を見つめ、己の姿に気づく。ところどころ破けたTシャツとズタズタのカーゴパンツだ。装束が失せている。マスラダは下がり、頬に触れた。タキは目を閉じ、叫んだ。「オレは見てねえ!お前の素顔なんか知らねえ!」

2016-10-25 23:19:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どうでもいい」マスラダは冷たく言った。板張りの床を振り返った。フートンもなにもない、ただの物置きだ。タキは呻いた。「クソが、壁の修理代を請求したいところだ。とにかく一宿一飯の恩義とでも言うべきやつだぜ」「おれは?」「いや、ブッ倒れたからひとまず放置……いや、介抱してやったんだ」

2016-10-25 23:23:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マスラダはまた舌打ちした。タキがおずおずと目を開けると、青年の足元から熾った赤黒い火がその身体を覆い、例の赤黒装束を数秒のうちに生成していた。「人間なんだな。お前」タキは思わず呟いた。やがてマスラダの手にメンポが生じ、それを装着すると、頭を赤黒の頭巾が覆った。「違うかも知れんぞ」

2016-10-25 23:28:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「わかってる。お前がオレの死神にならないようオレは努力する。な。まあその……そういう取引きだったわけだし……で、何だっけ、メイレイン。な。そうだよな、次のお前のターゲット……調べてやるさ。前のめりだろ、オレ」「いつお前に伝えた」「いや、さっきお前叫んでたろ。あっちまで聞こえたぜ」

2016-10-25 23:34:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……五分後、彼らは地下四階のUNIX室にいた。蛍光色のモニタ光を受けながらキーをタイプするタキのすぐ後ろで、ニンジャスレイヤーは腕組みして睨んでいる。タキがぼやく。「やりづれえんだよな。情報屋には情報屋の領分がな、」「ナハトローニンがおれを殺し、後腐れなく問題解決……だったか?」

2016-10-25 23:39:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……ホッ!ホーウ!」タキは肩をすくめて見せようとして、サムライ・フィギュアを倒した。「お前、何だよ、あれオレの本心だと思ってたのか?つうか聞いてたのか?よせって。ホットなチック(娘)の前で薄情な冷徹野郎に振舞ってカッコつけたい時ってあるだろ?そういうトークだって」「始めろ」

2016-10-25 23:43:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「わかったッて!オレ様の目端の利きっぷりをとくと味わえ。お前、オレに巡り合った事はブッダとかオーディンとかに感謝……」「クソッたれデジタル・オーディンの話は二度とするな」「よし、いくぞ!」タキは椅子を引いてタイピングに本腰を入れた。モニタ上をワイヤフレームやIRC小窓が飛び交う。

2016-10-25 23:47:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「メイレイン……どこかで聞いた名前って感じはするぜ」タキがかけているUNIX作業用の色付きグラスに流星めいて画面遷移の光が飛び交う。「お前が何者なのか知らんし、詮索もしねえけど、あんまり詳しくないのは確かだよな!秘密の闇社会によ。どんだけ知ってる」「ああ、詳しくない」

2016-10-25 23:53:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」タキはニンジャスレイヤーを振り返り、またモニタに目を移した。「まあ詮索はしねえよ」やがて、IRCツリーの枝葉の枝葉の枝葉、それらしい情報集積物が見えてくる。「サンズ・オブ……聞いたことねえな」タキは眉根を寄せる。「サンズ・オブ・ケオス……あ、待て、やっぱ止めだ。諦めよう」

2016-10-25 23:58:05