過剰政府債務が将来成長を毀損しない理由

タイトルの内容に関連して、実際の経済学で過剰政府債務(の将来償還)がどのような問題をもたらすか(世代間不公平)についての解説と、その問題意識の「問題」について論じた。
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望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

緊縮ではない財政 sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-705… 「将来の経済成長の果実を過去の債務償還に食い尽くされる」 とのことなのだが、この表現はあらゆる所で散見されるにも関わらず、その具体的実務的形態が論じられたことがほとんどない。

2016-10-29 11:28:18
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

内生的貨幣供給という現行システムでは、負債発行というのは金融資産創造並びに通貨創造であり、債務返済というのは金融資産消滅並びに通貨消滅なのであるが、現代において負債の「過」発行が起きたとして、将来それが「経済成長によって償還される」というのは正直理解しかねるところ。

2016-10-29 11:31:44
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

もし負債の過剰発行が生じたなら、それがもたらすのは「今この瞬間のインフレ」である。 ただし、補足すると、「現在の負債過剰発行を必ず将来の償還によって解消する」と約束した場合は、インフレは起こらない。これはアンコリさんが「日本でインフレが起こらない理由」として利用しているもの。

2016-10-29 11:35:09
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

重要なのは、「将来に負債を償還する≒通貨を減らす」という行為は、「将来に負債を償還すると決める」ことによって生じるのであって、何かしら構造的必然として償還しなければならないというわけではない。もし償還しなければならないとしたら、それは何かしらの「後付けルール」に基づくものである。

2016-10-29 11:38:18
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

ここで完全なる貨幣中立説を採用した場合、負債並びに通貨を過剰発行しようがしまいが、将来的に負債・通貨を償還しようがしまいが、生産量にはほとんど何の影響もないから、負債の将来償還が経済成長を食い潰すとかいうことも当然起きたりはしない。 将来償還の問題は別のところにある。

2016-10-29 11:41:15
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

himagimary氏の紹介記事がわかりやすい。d.hatena.ne.jp/himaginary/tou… ここでは、政府が意図的に債務を償還し、貯蓄手段を奪うことによって、前期に貯蓄していた元現役世代の貯蓄を奪い、元現役世代の消費水準を低下させることになる。こうした世代間不平等が問題だ。

2016-10-29 11:48:02
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

もう少しわかりやすく話すと、政府から貯蓄手段として政府負債(国債や通貨)を提供されている経済で、まず引退世代引退世代が政府負債を持っており、それを現役世代に支払って消費財を得る。現役世代は貯蓄のため政府負債をストックする動機があり、その分だけ引退世代が余剰消費財の恩恵に預かれる。

2016-10-29 11:51:41
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

理想としては、当該現役世代が引退した後、保有する政府負債を新現役世代に支払うことにより、将来時点で消費財を得て、渡された政府負債が新現役世代の貯蓄になり、、、というサイクルが続いていくことが望ましい。 しかしここで(何故か)政府が負債を回収すると問題が生じる。

2016-10-29 11:54:42
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

元現役世代は、将来消費を確保するために前期で消費を控えて政府負債を貯蓄していたのに、政府負債が取り上げられると、新現役世代への支払い手段を失い、将来消費が不可能になる。こうして、元現役世代は現在消費も将来消費も失う。 全体の生産・消費水準は現在、将来ともに不変であることに注意。

2016-10-29 11:57:03
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

現役世代(元現役世代)の消費が奪われ、現在の引退世代と将来の新現役世代に移転されてしまう、という不平等が問題の本質だ。(だから、将来の成長が潰されたりしない) 外野から理論構造を見て思うのは、「そもそも政府負債を償還(≒収奪)しなければよいのではないか」という素朴な疑問である。

2016-10-29 12:22:52
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

政府負債を償還しなければならないという理由は根本的に後付けである。それでも償還すべき妥当な理由は、将来的に金融資産が過剰になる場合だけだ。そのとき起こるのはインフレである。 大きすぎるインフレは確かに各種コストをもたらすので避けたいが、そもそもインフレが起こるという予測は妥当か?

2016-10-29 12:27:14
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

大体、「将来的な政府負債の償還をすべき理由として妥当なのは『インフレ回避』しかない」ということ自体、(ごく一部の財政学者らを除いて)ほとんど認識されていないのでは。 また、将来的に政府負債(や通貨)が過大になるという判断の根拠には人口動態変化があるが、これも怪しいものがある

2016-10-29 12:31:51
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

というのは、クルーグマンの指摘する通りcruel.org/krugman/japtra…、少子高齢化のような人口動態は、貯蓄手段過大というよりも、むしろ貯蓄手段過小(による不況)をもたらし得るからだ。彼の議論に則れば、少子高齢化が進む日本でむしろデフレ傾向が進むことは自然である。

2016-10-29 12:34:21
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

そうした貯蓄手段過小(による不況)に対するクルーグマンの提案も当然ながら、貯蓄手段(通貨)の恒久的な追加だ。(決して将来償還ではなく、むしろ逆である)

2016-10-29 12:35:30
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

一応補足として、クルーグマンが通貨の恒久的追加を提案する背景としては、通貨の経済に対する非中立性(ケインジアン的想定)の仮定があるということは述べておく。通貨が完全に経済中立的なら、当然クルーグマン式流動性の罠でも生産に影響はない。その「影響無力化の構造」は極めて奇妙で面白いが。

2016-10-29 12:39:35