ある日の晩酌inはまルーム
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はじめに
竹村京
@kyou_takemura
#落ちぬい二次 、はじまります。本作は #不知火に落ち度はない の二次創作であり、オフィシャルではありません。意見、指摘などは #落ちぬい タグにお願いします。
2016-11-12 23:12:15本編
竹村京
@kyou_takemura
初冬、浜風の部屋にて。 今日も今日とて未成年の部下の部屋に上がり込んで夕食をたかっていた兵頭は、胡坐をかいて片手を後ろに立てて軽くのけぞり、食後の缶ビールを飲んでいる。#落ちぬい二次
2016-11-12 23:14:35
竹村京
@kyou_takemura
部屋の主である浜風は流しで食器を洗っており、その向こうには奮発して買ったと興奮気味に自慢していた2500円の電気ストーブが浜風の脚を温めていた。その光景に雄の本能が刺激されないと言えば嘘になる。新妻に後ろから抱きついて……というのは鉄板シチュだ。#落ちぬい二次
2016-11-12 23:16:39
竹村京
@kyou_takemura
「艦娘の基地っつーか、うちの場合は普通の基地とはちっと違ってな」 浜風の脚を見ながら、内心の欲求を誤魔化すように兵頭が切り出す。#落ちぬい二次
2016-11-12 23:20:00
竹村京
@kyou_takemura
艦娘は基本的には幹部、つまり尉官以上として扱われる。厳密には一般の軍人の階級と艦娘の階級は別なのだが、給与や待遇の面ではほぼ同じとされる。だが艦娘特有の特殊性から違う部分も多くある。#落ちぬい二次
2016-11-12 23:22:15
竹村京
@kyou_takemura
たとえば幹部や既婚の曹は原則として営舎外に住居を持って基地に通勤するのだが、艦娘は人体が兵器システムの一部であるので機密保持と保安のため営舎内に居住する事になっている。そうなると自然、食事の問題が出てくる。#落ちぬい二次
2016-11-12 23:27:26
竹村京
@kyou_takemura
基地や駐屯地には隊員食堂というものがある。これは給養をマークとする軍人や防衛省職員が調理する食堂で、営舎内生活者つまり士や未婚の曹向けの施設だ。#落ちぬい二次
2016-11-12 23:29:49
竹村京
@kyou_takemura
普通の幹部であれば隊員食堂での喫食は原則できず、申請して食費を払って隊員食堂を使うか、弁当などを持ってくるしかない。だが艦娘にもそれを適用すると艦娘に無用の負担をかけることになり、喫食申請の処理にも手間がかかる。#落ちぬい二次
2016-11-12 23:32:25
竹村京
@kyou_takemura
そこで艦娘の場合は例外的に曹士と同じく給与からの天引きで食事を支給する事になっている。ただし、そこでネックになるのが喫食人数だ。#落ちぬい二次
2016-11-12 23:34:49
竹村京
@kyou_takemura
艦娘の基地は一般の基地より勤務する人数が少なく、軍属つまり民間人が多い。そうなると数百人分の軍人向けの食事を大量調理するのが前提の隊員食堂は却って不便だ。そこでこの兵頭鎮守府では隊員食堂を持たず、厚生センターを拡充して民間の委託食堂を主にしている。#落ちぬい二次
2016-11-12 23:37:32
竹村京
@kyou_takemura
厚生センターというのは民間に委託した食堂やコンビニなどの厚生施設を一か所にまとめたものの事だ。消灯があるため24時間営業とはいかないが、売店では靴墨や戦闘服から酒類まで揃い、食堂では大量生産でない食事を比較的安く食べられる。#落ちぬい二次
2016-11-12 23:39:08
竹村京
@kyou_takemura
委託食堂をメインの食堂として扱う事で食費が給与から天引きされている艦娘と曹士は三食自由に利用でき、それ以外の幹部軍人や軍属は喫食申請を出さずとも実費で利用できる。地元協力という点でも望ましいため、基地を開設する際に兵頭大佐がこれを決めたのだ。#落ちぬい二次
2016-11-12 23:43:45
竹村京
@kyou_takemura
「なるほど。言われてみれば確かに北原士長とか工廠の方たちは食堂で食べてますけど、偉い人はお弁当の人もいました」 「その北原な、曹候補生になったぞ。受かれば三か月くらい初任海曹課程だな。満了金貰って辞めるもんだと思ってたが、何があったんだかな」#落ちぬい二次
2016-11-12 23:46:52
竹村京
@kyou_takemura
北原というのは浜風に思いを寄せている男だ。はっきりと告白して、玉砕しても諦めず浜風に見合う男になるために部内選抜で大佐になると宣言している。曹候補生はその第一歩だった。#落ちぬい二次
2016-11-12 23:48:45
竹村京
@kyou_takemura
その事を思い出した浜風は嬉しいような恥ずかしいような、微妙な笑顔を浮かべた。兵頭に背を向けているので、その複雑な微笑は秘密のままに溶けていった。 「お祝いしないと、ですね」#落ちぬい二次
2016-11-12 23:50:49
竹村京
@kyou_takemura
「受かったらな。とりあえずはメシの話」 委託食堂にデメリットがないわけではない。隊員食堂であれば仕切りか別棟に幹部食堂があって幹部軍人はそこで喫食するため、曹士と幹部が同じ食卓を囲む気まずさはない。#落ちぬい二次
2016-11-12 23:53:08
竹村京
@kyou_takemura
しかし委託食堂ではそこまで徹底できないため、下手に階級が高い軍人が食堂を使うと曹士や艦娘と顔を合わせることになって階級が下の者に無用の気遣いをさせてしまうのだ。#落ちぬい二次
2016-11-12 23:55:46
竹村京
@kyou_takemura
「つーわけで、お前らは食堂を使わなけりゃその分損するだけなのです。俺は実費だから食わなきゃその分食費が浮くわけだ」#落ちぬい二次
2016-11-12 23:56:09
竹村京
@kyou_takemura
兵頭は艦娘に気を使わせないため食堂が閉まるギリギリに食べるか、あるいは厚生センターの売店で適当に買って食べることが多い。兵頭の食生活はずぼらと思われがちだが、一応もっともらしい理由はあるにはあるのである。#落ちぬい二次
2016-11-12 23:56:55
竹村京
@kyou_takemura
「なるほど。あまり気にしたことはありませんでしたが、たしかに食堂はなるべく使わないともったいないですね」 「だろ？」#落ちぬい二次
2016-11-12 23:58:37
竹村京
@kyou_takemura
先日の浜風の祖母の墓参りに行った際に当面の目標は祖母の家を買い戻す事だと打ち明けられたため、こうして改めて食堂の説明をしているのだった。であればそもそも手料理を食べに来るのもどうかという話なのだが、そこまで徹底できない程度には優柔不断である。#落ちぬい二次
2016-11-13 00:00:18
竹村京
@kyou_takemura
「でもそうすると兵頭さんの晩酌とかできなくなりますね」 洗い物を終えた浜風が自分のマグカップを用意して兵頭の向かいに座る。マグにカルピスのようなものを少し入れて、魔法瓶からお湯を注ぐ。電気ポットでも電気ケトルでもなく、今日日珍しくなった保温のみの魔法瓶である。#落ちぬい二次
2016-11-13 00:01:34