【ミリマスSS】アンナの日記#2-2(前編)

創務丹/蝶乃雨冠(ﾁｮｳﾉ ｳｶﾝﾑﾘ) @chou_tan_

(これまでのあらすじ：lilyknightとのオフ会を実現させた杏奈。lilyknightの正体は、今をときめくアイドル七尾百合子だった！百合子のファンだった杏奈はたちまち百合子と仲良くなる。そんな中、ネトゲで同じギルドにいるメンドスの正体が、杏奈の昔の友人であることが判明する)

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(メンドスは杏奈に対し、百合子との付き合いをやめるように助言する。しかし杏奈はそれを拒む。二人の間にいささかの不穏な空気が流れる中、ギルド対抗戦が始まる。開始して早々に敵ギルドからの襲撃が始まり、うろたえるvivid_rabbitたち。果たして勝利するのは誰なのか……！)

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この場で一番大きいモンスター、グロデスルスの頭の上に、誰かが鬼神のように立ち凄んでいた。「ここが貴様らの拠点か！」メンドスさんが舌打ちした。「尾けられてたか」「圧倒的な蹂躙！それが我がギルドの鉄則！」鬼神は大仰に両手を広げた。「いついかなる場合でもだ！我々は前進する！」 01

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モンスターを使役するジョブ……恐らく『ブリーカー』だ。だけど、今回のギルド対抗戦は討伐ポイント戦のはず。ブリーカーはかなり不利なんじゃ？「我が名はGIL！この世界の支配者にして全てを屠る者だ！死にゆく瞳に焼き付けておけ！」GILさんは手を振り下ろした。「突撃ィーッ！」 02

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アンナの日記#2-2 03

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「グロロロロォ！」グロデスルスが吼え、GILさんを乗せたまま弾丸めいたスピードでこちらへと走ってきた！「まずい！」メンドスさんが咄嗟に短剣を抜き放つ！グロデスルスは既に目と鼻の先！「『デスラ』！！」短剣によるカウンター攻撃！グロデスルスは突進と同等の速度で後方に跳ね飛ぶ！ 04

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それと同時にメンドスさんも吹き飛ぶ！ヒガンヤシの幹に激突し、ヒガンヤシがメキメキと轟音を立て、折れた！双方無事では済まないはず……「カハハハ無様無様ァ！」遥か上空からGILさんの声！「こちらの手駒はいくらでもいるのだ！まずは貴様らの拠点を潰し、貴様らを殺す！これは狩りだ！」 05

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vivid_rabbitが……ギルドマスターが……ライアくんが……私が……みんなが、空を見上げる！空にはボルドドラゴンの群れ、1匹2匹10匹20匹……数え切れない！ひときわ大きなボルドドラゴンの頭に、GILさんが仁王立ちで立っていた！「死にゆく貴様らに一つ忠告してやる」 06

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「『ブリーカー』というジョブを、ただのモンスター飼育係だと思ってくれるなよ。モンスターを使役するということは、この世界を使役することと同義！我輩がこのジョブを授かったその瞬間、我輩は神になることを約束されたのだ！子羊どもはただ逃げ惑い頭を垂れていればいいのだ」何をバカな。 07

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「突撃ィーッ！」GILさんが再び叫ぶ！ボルドドラゴン達が、一瞬全身を震わせる。攻撃の予備動作だ。「lilyknight！」vivid_rabbitがマジックリングを堅く握りしめた！「うん、わかってる、けど……」私は風の剣を握りなおす。この大群の攻撃を防ぎ切れるんだろうか…… 08

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「『マジックエンハンス・ダブルイエロー』」マジックリングが黄金に光る！「『極金烏』！！」マジックリングが黄金に輝く巨大烏へと変化する！巨大烏の全身には金や蒼の雷がまとわりついている。「フーッ」私は息を整え、風の剣を地面に突き立てる。柄の先にあしらわれた宝石に手をかざす。 09

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「地の精霊よ味方せよ……『風神招来九二ノ段』！『地神招来八ノ段』、『豪磊』！！」辺りの地盤がひび割れる、風が地盤を持ち上げる！それは弾丸！風によって射出される、岩の弾丸だ！「いけーッ！」ボルドドラゴン一体ほどの大きさの岩盤が、何十個も射出される！狙いはGILただ一人！ 10

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「『ヴィジラ・ヴィエボルト』！」vivid_rabbitが叫ぶ！「コオオオオッ！」極金烏が羽を震わせ、超帯電の雷を全身から放つ！それはまるで神の裁き！地上から天空へと放たれる雷は、先ほどの岩盤弾を巻き込み、GILへ！「ボルルルルルルォォォォ！！」ボルドドラゴンたちが吼えた！ 11

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ボルドドラゴン達の全身の血管が浮かび上がり、不気味に赤黒く光る！開かれた口から放たれたのは、大地をも溶かす炎だ！それは岩盤弾を溶かし、雷を跳ね返し、地上に降り注いだ。かつてポンペイを焼き尽くしたヴェスヴィオス山の噴火のように！地上には悲鳴が巻き起こる！「カハハハハハハ！！」 12

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赤い光を受けながら嗤うGILの口は醜く吊り上がっていた。「無様ッ！！」「やめろーっ！やめてくれーっ！」ギルドマスターが叫ぶ！「どうしてこんなことをするんだ！今回はPK(訳註：プレイヤーキル)マッチじゃないんだぞ！」悲痛！しかしGILは醜く嗤うだけだった。「愉しいからだよ」 13

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「何が愉しいだ……パイナップルみてェな頭しやがってこの腐れフルーツポンチが……」後ろから声。折れたヒガンヤシの横に、左腕を押さえたメンドスさんが立っていた。左腕からは血が滴っている。「さみちゃ……メンドスさん、血が」vivid_rabbitがメンドスさんへ駆ける。「寄るな」 14

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「どうして」「ベースキャンプを見ろ」私たちはベースキャンプを見て、そして息を呑んだ。ベースキャンプは、ボルドドラゴンの攻撃によって、完全に崩壊していた。仲間も既に何人か負傷している。「ベースキャンプがなくなるってことは、復活地点がなくなるってことだ。その意味がわかるか」 15

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「復活できない……つまり、一度死ねば、戦線離脱」ライアくんがライフルに弾を込めながら返す。「そうだ。そうなれば負けは決定。ハナっからそれがヤツらの目的だってことだ。俺らがいなくなったフィールドで、悠然とモンスターを狩る……GIL、あいつの能力なら、それも容易いだろうな」 16

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「どうやら幸いにも、まだ完全にベースキャンプはその機能を失ったわけじゃないらしい。キャンプ周辺における攻撃力・防御力上昇効果はまだついてるからな……。ならやることはひとつ」メンドスさんは短剣を構えた……自分の胸に向けて！「死んでもここを守り抜く！」彼の胸から鮮血が迸る！ 17

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「メンドスさん！？」「メンドス、何を」私たちは驚きに目を見開く！「……『地神招来』だか『ダブルイエロー』だか知らんが……俺だって強くなる努力はしてるんだ……。ヘドロの怪物やグロデスルスだって一人で倒せる……今ならきっとベムランサーもボルドドラゴンも倒せる……！」 18

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「どうやら俺はお前らとは違う、一人でも強いし、戦える」「さみちゃん、どうしたの、らしくないよ……」「俺はメンドスだ」血は噴水のように勢いよく出続けている。「俺はッ！メンドスだッ！『キリングアーマー』！！」空気中に散った血が、ビシャリとメンドスさんの全身に張り付く！ 19

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血はメンドスさんの皮膚の上をのたうち回りながら渦巻く！「俺の血が力になる」肩が尖り、胸が膨らみ、血は固まり、鎧を形成していく！「血を吸って、力になる」紫色の鎧が全身を覆った！メンドスさんの右手には、死神が持っているような、2ｍほどの鎌、左手には鎌から伸びた鎖。巨大鎖鎌だ！ 20

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「……『デスサイズ《オーバー》』」メンドスさんは巨大鎖鎌を構えた。顔を覆う紫のヘルムのせいで表情が窺えないが、とても冷たい声音だった。鎖鎌は空へ向かって振り抜かれる。刃から暗黒の衝撃波が飛ぶ。「撃ち落とせッ！」GILが叫ぶ。ボルドドラゴン達の一斉放射！衝撃波が炎に包まれる！ 21

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「カハハハハッ！」GILの笑い声が響く！「所詮は三下！我輩に刃を届かせようとは笑止！」「笑止」メンドスさんが囁く。「俺の刃を止められると思うな」「何ッ」炎の煙が揺らめく！「バカな！」暗黒の衝撃波が煙を切り裂き飛び出した！「くっ」GILの乗るボルドドラゴンの首が跳ね飛ぶ！ 22

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GILはボルドドラゴンから落下する！「クソッ！クソックソックソッ！我輩はこの世界を支配する全にして一なる完全存在！こんなことがあってはならないッ！」GILは混乱状態にあるようだ。ボルドドラゴン達はGILの支配下から逃れ、怒りに吼えた！「ボルルルルルルォォォッッッッ！！！！」 23