【ミリオンスター・サンダーボルト】#2

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ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

【ミリオンスター・サンダーボルト】#2

2016-11-15 20:27:50
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

この街が眠ることはない。病的な毒々しい灯りに照らされながら、人々は小雨の中を俯き歩き続ける。街頭モニタが流行のオイランドロイドライブ映像を流し、上空のマグロツェッペリンが無意味な広告文句を垂れ流す。けばけばしい光と音の雑多の中、ルーントリガーはPVCコートを纏い歩いていた。

2016-11-15 20:34:57
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ルーントリガー…シホ・キタザワにとって、このケオスは何の意味もない。目深に被るフードの奥から白い煙が漏れる。それは違法ウドン粉末シガレットの溜息だ。彼女のニューロンはオーバードーズによって著しく傷み、もはや景色を正しく認識することは叶わなかった。いかなアイドルの身であってもだ。

2016-11-15 20:35:05
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

サツバツとした白黒のブロードウェイを歩みながら、煙に侵された脳裏に古びた映写機めいて回想が浮かぶ。この趣味も元は自分のものではなかった。クランの相棒の…あれは下らない、伸びたウドンめいたミッションだった…薬物中毒者のつまらないミス…ケチの付き始め…すべての終わりと始まり……

2016-11-15 20:40:13
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

(((……を潰すだべさ。旧時代の遺物…)))(((…シホ…私にはもう時間がないの…)))(((…復讐…必ず…)))(((……殺すべし…)))朦朧とした足取りが止まる。ある高層ビルに滑り込むと、シホは屋上直通のエレベーターに乗り込んだ。その先には不釣り合いな奥ゆかしい木造の屋敷。

2016-11-15 20:45:06
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「いらっしゃいませ。シホ=サン」「ドーモ、エミリー=サン」出迎えたのはユカタ姿のガイジンだった。眼帯の少女は物憂げにアイサツすると、シホを奥に通した。チャノマに少女は正座しチャを点て、シホは円形の窓枠に腰掛けた。「ご用件は」短くエミリーが問う。「復讐を果たす」シホは短く答えた。

2016-11-15 20:50:13
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

エミリーが沈鬱な面持ちでチャを勧める。「チャよりもカタナの手入れをして欲しいの」シホはカタナを突き出した。「ネオサイタマ一のソードマスターに」刀匠は拒んだ。「私はもう…」そして月明かりに照らせれた友人の背を見て息を呑んだ。シホは上着をはだけ、サラシを剥がして素肌を露わにしていた。

2016-11-15 20:55:06
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

彼女の白い背には…おお、ゴウランガ!拳銃とドス・ダガーを持つ荘厳な天女のイレズミ!それはかのレジェンドヤクザ、チハヤ・キサラギを単身で暗殺したという伝説のテッポダマ・アサシン、ハルカ・アマミの写し絵!なんたる決断的実行意思を表明する後ろ姿であろうか!エミリーは畏怖に打たれた。

2016-11-15 21:00:06
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「…分かりました。明日の夜までには」使い込まれたカタナを預かったときには、既にシホはチャノマから消えていた。変わり果てた友の後ろ姿を思い、エミリーはハイクを詠んだ。「…ヨミの坂は/白と黒を跨ぐ」。窓の外を見ると、淀んだ空からネオサイタマの痩せた月が見下していた。「インガオホー…」

2016-11-15 21:05:03
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ツキジの港から伸びる長い街道、エンガワストリート。今宵ハカバめいて静まり返る通りをしめやかに渡る十数台のヤクザベンツの行列。どれも欠けたリンゴの紋章を宿し、中央を走行する大型トラックを守るように囲い込む。トラックの上には二人のアイドルが佇んでいる。「それじゃあ、おさらいだ」

2016-11-15 21:10:15
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

グラップラーがストレッチしながら言った。「このトラックを死守してやることはない。精々向こうの戦力の7割を潰してやる程度で十分。後はこれで」グラップラーはルーントリガーに小さな装置を投げ渡した。2つのボタンが付いている。「吹き飛ばせばいい」ナムサン、彼女は今なんと言ったか?

2016-11-15 21:15:12
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

トラックの助手席の下には謎めいた金属塊…野球のキャッチャープロテクターめいた装置が隠されている。それにはトラック程度なら跡形もなく吹き飛ばせる程の爆薬が積まれているのだ!「…一体誰があんなものを?」「さあね。どこぞのバカが作ったクソ装置だ。時速十キロ以下になると爆発する」

2016-11-15 21:20:09
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「それでこの制御装置ね」「ああ、爆弾の起動スイッチと、もしもの時のトラック加速スイッチだ。あたしらが巻き込まれたらヤバイからね。うまく奴らに明け渡してから起動するのがベストだ」ルーントリガーは鼻を鳴らした。遠くにハイウェイの灯りが見える。「…来た」彼女は低く呟いた。

2016-11-15 21:25:07
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ストリートの脇道から猛々しく数台のリムジンがエントリー!輝く星と桃の紋章!左右の車線から挟撃を仕掛けるようにミリオン・クランの武装車両が雪崩れ込む。更に後方からはバッドアップルのトラックの二倍はあるであろう超巨大トラックが追走!「産地直送」「セレブな」のペイントが光る!

2016-11-15 21:30:14
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

屋敷で状況をモニタするミリオンのヤクザ達。中には、伝説のデコトラ『ニカイド』の出陣に感極まり先代組長を偲んで涙ぐむ者もいる。『準備整いました』トラック運転手ヤクザから通信を受けたモモコは頷き、武田信玄めいたコマンド・グンバイを振り下ろして叫んだ。「ロードランナー=サンを放て!」

2016-11-15 21:35:09
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ガゴン。トラックの後部ハッチが開き、目にも留まらぬ速さで桃色の風が飛び出した。「イイイイイヤアアアアアアア!」グラップラーは車両の合間を縫って高速接近する存在を見下し、舌なめずりをした。「あれはあたしが預かる」マラソン走者めいた装束を纏ったアイドルが、走りながら手を合わせた。

2016-11-15 21:40:09
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「ドーモ!ロードランナーだよっ!」「ドーモ、グラップラーです!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」両者の激突が引き金となり、ウシミツアワーのハイウェイを怒号と銃声が埋め尽くした!「「「ザッケンナコラー!」」」爆発音と炎。ルーントリガーはつまらなげに、車上からモノクロの戦場を俯瞰した。

2016-11-15 21:45:08
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

イクサに煙る景色。ぶつかり合いながら群れは複雑な高架下を走り抜けた。一瞬の陰りの後、トラックの上に赤い火花が瞬いた。「…どうしてもやるんだな?」プラリネはロックミュージシャンめいた装束の袖を弄りながら尋ねた。暗殺者はアイサツした。「ドーモ、プラリネ=サン。ルーントリガーです」

2016-11-15 21:50:16
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「ドーモ、ルーントリガー=サン。プラリネです」「イヤーッ!」オジギからコンマ1秒後、既にルーントリガーのカタナはプラリネの首筋に迫っていた。プラリネはこれを予測しカタナの鞘で受けた。「せっかちなのは変わらないんだな」「…そのお気楽加減も相変わらずね」暗殺者の目に危険な輝き!

2016-11-15 21:55:04
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」プラリネは白刃を抜き激しい剣戟を受けた。ルーントリガーのワザマエに一切の陰りはない。つまりこの後にジツが来る。「イヤーッ!」プラリネは在らぬ方向にカタナを振るう!空中で弾ける火花!「イヤーッ!」身を翻しもう一太刀!

2016-11-15 22:00:08
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ゴウランガ!プラリネは見えざる刃を見事に防いだ!この斬撃は一体!?それはルーントリガーのライアールージュ・ジツに他ならない。他者の視覚を偽り、死角からの攻撃を可能にする恐るべきジツである。「…衰えたわね」「何…グワーッ!?」プラリネが呻く。その脇腹が血を噴いた。

2016-11-15 22:05:04
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「イヤーッ!」斬撃をバックフリップ回避し、プラリネはカタナを逆手に構えた。柄を握り右手を走らせシャウトする!「イヤーッ!」超常的サウンド!「グワーッ!」騒音はルーントリガーのニューロンに直接ダメージを与え怯ませた!これぞ不可視のカラテ弦を操るプラリネの変則ウタ・カラテである!

2016-11-15 22:10:07
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

崩れ落ちるルーントリガーにプラリネが走り込み「イヤーッ!」天井に伏せた赤毛を行き過ぎた刃が数本掠め取る。既にルーントリガーは立ち直り距離を詰めている。「聞き惚れていいんだぜ?」「楽器のワザマエだけは上げたようね」鍔迫り合い睨み合う。超近距離ではどちらもワザを活かせないのだ。

2016-11-15 22:15:04
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

KABOOM!『ザッケンナコラー!』大音響のヤクザクラクションと共にリンゴ紋ベンツが吹き飛んだ。後方を走るニカイドから熾烈な銃撃を受け爆発したのだ。『スッゾコラー!』KABOOM!「…目障りね」「イヤーッ!」「イヤーッ!」ルーントリガーに斬りかかったプラリネがよろめく。「なっ…」

2016-11-15 22:20:20
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ジツによる残像を斬ったプラリネは、ニカイドに向かって車上を飛び渡る影を見た。「待て!」迫るルーントリガーの眼光をモニタ越しに睨みながら、モモコはグンバイを振り下ろした。「セレブ砲用意!」「セレブ砲オラーッ!」巨大トラックの荷台側面からガトリング砲が出現!射撃準備回転!

2016-11-15 22:25:03