掌小説語り~自作つぃのべる集35~

自作つぃのべるのまとめです。 2016年3月分
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リュカ @ryuka511

王国一の剣士は魔王討伐の命を受け旅立った。魔王は剣士に倒され、剣士もまた命を落とす。王は剣士の像を建てさせ彼を祀った。あいつはこんな風になりたかったんじゃないと、剣士の親友は唇を噛む。自分も行くと言ったのに一人で行ってしまった友の最後の微笑が、脳裏から離れない。 #twnovel

2015-11-07 00:06:24
リュカ @ryuka511

大勢の人がいるこの屋敷で、私の吐いた嘘を見抜くのは、いつも貴方だけでした。怒りも責めもせず、優しく諭す貴方にだけは、正直でいようと思えたのです。だから貴方を好きだと告げたのに「嘘はいけません」と悲しげに笑うばかり。「そういう事にさせて下さい」って、どういう意味? #twnovel

2016-03-01 23:59:00
リュカ @ryuka511

魔法使い達が学ぶ神殿を剣士が訪れた。白魔法を身につけたいと言う。白魔法は後方支援を主とする術、剣を手に最前線で戦う貴方にはそぐわない。剣士は俯く。剣は敵を殲滅しても傷ついた人を救えない。魔法使いは静かに首を振る。人を救うのは人であり、魔法も剣も道具でしかないと。 #twnovel

2016-03-02 22:23:18
リュカ @ryuka511

神は創世の仕上げに、自らに似せ完璧な生き物を生み出したという。その生き物が完成した時、神は思わず感嘆の声を漏らしたそうだ。この最高傑作が末永く世界に君臨するよう願っているという。残念ながらその願いは一部しか叶っていない。犬派の人間の目を一刻も早く覚まさなくては。 #twnovel

2016-03-03 23:54:07
リュカ @ryuka511

激戦地より愛を籠めて。報告書の最後に綴った一文は、王への皮肉であり本心でもある。城は安全ですか? 謀叛にはくれぐれもご注意を。大陸の覇権を我らが王に捧げる為、戦を終わらせる為に戦う日々。王よ、貴方の理想はどこですか? 揺れる想いをひた隠し、伝令兵に文を託す。 #twnovel

2016-03-04 23:34:10
リュカ @ryuka511

ごめんね。好きだよ。言えなかった数多の言葉は泡になって上っていく。いつか空まで上って、雨になって降ってきたら、君に届くかななんて、愚にもつかない事を考える。そんな頃には僕も君さえも、この世界にいないだろう。水底から見上げた空は、地上から見るより優しい色をしてた。 #twnovel

2016-03-05 23:46:57
リュカ @ryuka511

ここには代々の王と王妃の肖像画が収納されている。豪奢で華やかな肖像画の中に1枚だけモノクロの王妃の肖像画があった。記録によれば、病弱だった彼女は病に侵された己の姿が後世に残るのを嫌がり、華美な装飾も好まなかったという。単色で描かれた王妃は、他の誰より美しかった。 #twnovel

2016-03-07 00:13:08
リュカ @ryuka511

いつどこで覚えたのか、言葉の意味さえもわからないその歌を、それでも私は口遊んでいたのです。不確かな私の存在を、確かなものにしてくれそうで。何故か懐かしいその歌は、どこへも繋がらない私をどこかへ繋げる事が出来るような気がして。それが幸せなのかは、わからないけれど。 #twnovel

2016-03-08 09:08:38
リュカ @ryuka511

吸血鬼は甘党だなんてイメージが崩された。吸血しない時は真っ赤なワインで優雅に喉を潤すのだと思っていたのに。パイを頬張る吸血鬼に文句を言う。「甘い物こそ吸血鬼の好物だ」唇に付いたクリームを舐めとりニヤリと笑う。「このパイよりもずっと甘美な君の血がまた欲しくなった」 #twnovel

2016-03-09 00:30:33
リュカ @ryuka511

君と2人なら世界をこの手に治める事も可能だった。君との恋を許さない世界を、支配して作り変えるという選択肢もあった。だけどそうはしなかった。敵として出逢った君と恋をし、最後まで敵同士として振る舞った。君が敵だったから出逢えたんだ。世界を欺き貫いた恋は、幸せだった。 #twnovel

2016-03-10 01:03:05
リュカ @ryuka511

魔王に封じられる直前、聖王は自分の力を光球に込め秘かに空へ放った。それから数年。聖王が放った光は白い星となり、絶望に満ちる世界で唯一の希望となった。聖王が闇に混ぜた白い星は、徐々に力を増し封印を解きに掛かる。聖王復活に魔王が気付かぬよう、聖王の側近は星を守る。 #twnovel

2016-03-10 23:09:13
リュカ @ryuka511

優しい瞳で笑うようになったな、とからかうと奴は拗ねた顔でそっぽを向いた。これが世界中を恐怖に陥れた魔王だったなんて誰が信じるだろう。あの日、倒れた魔王に手を差し出した。一緒に来ないかと言った俺の手を取った理由は知らない。知らなくてもいいと、優しくなった瞳に思う。 #twnovel

2016-03-12 00:35:39
リュカ @ryuka511

眠れずにいるご様子のお嬢様に声をおかけしました。紅茶を飲みませんかとてもとても寒いからと。紅茶など飲んだら余計に眠れなくなるじゃないと笑いながらも、私の誘いに応じて下さいました。私達だけの静かな世界。幸福と切なさの入り混じったあの夜を、私は生涯忘れないでしょう。 #twnovel

2016-03-13 00:33:41
リュカ @ryuka511

子供の頃はたくさん夢があった。頑張れば何にでもなれると思ってた。だけど、あんなに簡単に描いていた夢を、今はもう、見ることさえできない。夢を語る度に現実を見ろと言われた。それは呪いの言葉。現実を実際以上に重くする。そう気づいてから、呪いを解く方法を探し続けている。 #twnovel

2016-03-14 00:38:58
リュカ @ryuka511

余命宣告を受け絶望した私は自分のロボットに命じた。「私を殺しなさい」「マスター、矛盾する命令は遂行できません」「ではプログラムを書き換えよう」「嫌です、マスタ」#twnvday 再起動しもう一度命ずる。プログラム書き換えを何故AIは拒否しようとしたのか、薄れる意識でそんな事を思う

2016-03-14 23:51:41
リュカ @ryuka511

「何が勇者様だ」悪態を付き青年は剣に付いた血を振り落とす。魔王を討った彼を国王が迎え、今後は我が国を守れと言った。故郷も親友も失い、何度も死にかけた。誰も助けてくれなかった。何を勝手な事を。血の海に佇むのは一人、魔王を討った青年のみ。「俺が戦う理由は俺が決める」 #twnovel

2016-03-15 23:58:43
リュカ @ryuka511

王の深い悲しみは王国の時を止めた。動くものの無い国はこのまま塵に埋もれてしまうのか。美しい王国が、王妃の愛した王国が地図から消え忘れられるなんて耐えられない。行かなくては、時を封じたあの城へ。王の呪いにも似た悲しみを解き放てるのは私だけ。「父上、目を覚まして!」 #twnovel

2016-03-16 23:39:46
リュカ @ryuka511

「仲間?友達?恋人?家族?いいえ違います」お前の魂胆は分かりきっている。「あれは私の盾であり使い捨ての駒。使いたければお好きにどうぞ」つまらなさそうな顔で奴は私に視線を戻す。それでいい、お前の相手は私。皆を傷つけさせはしない。たとえこの嘘が皆に通じなくとも。 #twnovel

2016-03-18 00:46:27
リュカ @ryuka511

桜の根元に埋もれ暗闇の中彷徨う。私を殺しここに埋めた男の今生での姿を見つけた。連れて帰るのだ。あれは心中なのだから。私がしくじったから私だけが死に、彼は生き延び輪廻し続ける。私を探してるのでしょう? 桜舞う闇から手を伸ばす。永劫の輪廻から永久の暗闇へ、帰るのよ。 #twnovel

2016-03-19 00:22:02
リュカ @ryuka511

そこに流される毒は多分、人間を殲滅させる事が目的ではない。魔王城から流される毒は、魔王の絶望そのもの。魔王一人を倒しても、世界を覆う絶望の毒は消えない。こんなにも肥大化した絶望を、どうしたら。「お救いしなくては」魔族の青年は悲壮な顔で呟き、魔王城へ消えた。 #twnovel

2016-03-20 01:00:52
リュカ @ryuka511

人間と吸血鬼の架け橋になりたいと、政略結婚と解っていながら微笑んだ君。あれは偽りだったという事か。人間如きが我々を滅ぼすなど、何者かの手引きがなければ不可能。それは君以外あり得ない。君を残し人間を殲滅した。復讐であり復讐ではない、この複雑な愛が君に解るだろうか。 #twnovel

2016-03-21 00:10:28
リュカ @ryuka511

マスターを人質にとった犯人は、マスターの命が惜しければ銃を捨てろと言いました。悩んだ私は銃を捨てました。愛したマスターを失いたくなかったのです。結局、事件はマスターの犠牲をもって幕を閉じました。私が心を持たない機械のままであったなら、もっと冷静な判断ができたのに。#twnovel

2016-03-21 22:41:12
リュカ @ryuka511

土の下 今も囀る金糸雀は、共に眠る主を忘れられない。主も自分も死んでいるのだと気付けないまま、愛を求め囀る。応えない主に憤り悲しみ泣き疲れ、また愛を求め囀る繰り返し。ただ一心に、何者にも邪魔されず愛を囀る金糸雀の、愚かしくも純粋な想いは、暗い土の下に厳かに響く。 #twnovel

2016-03-22 23:44:30
リュカ @ryuka511

どんな治癒魔法も薬も少年の病を治せなかった。もう自分に出来るのはこれだけと魔法使いは手をかざす。不治の病に魔法を、せめて、近しい者に見せる最期の顔は穏やかに。魔法は万能と信じ、魔法使いを責める者達に静かに首を振る。不慮でなく定められた死には逆らえないのだと。 #twnovel

2016-03-24 00:04:29
リュカ @ryuka511

お嬢様のうつくしい髪に指を通す瞬間は、私だけに許された至福の時でした。耳の傍の髪を掬うとくすぐったそうに笑って身体を捩るお嬢様に鼓動が高鳴り、抱き締めたい衝動を抑えるのに必死でした。それも今日で最後。純白のドレスを纏うお嬢様の髪を結う。いつもより、時間をかけて。 #twnovel

2016-03-24 23:44:56