壺【2016加筆修正版】◆後編

祖父の遺品整理をすることになった男の話。彼には、子供のころから大切に思っている異国の壺があった。その風景画に彼は魅せられていた……。過去作の加筆修正版です 全18ツイート予定 ◆前編 http://togetter.com/li/1050339 実況・感想タグは #減衰世界 です
減衰世界
rikumo 218view 0コメント
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  • 減衰世界 @decay_world 2016-11-20 20:11:39
    _私は、その世界が壺に描かれた風景そのものに思えた。遠くに森や山に抱かれる小さな庵が見える。平地は青々とした草に覆われ、雲はかすかに桃色がかり流れていく。川は川底が見えるほど澄んでいて、魚が飛ぶように泳いでいた。本当に、静かな世界だった。 10
  • 減衰世界 @decay_world 2016-11-20 20:17:07
    _ふと、私は川辺で釣りをしているひとを見つけた。彼は異国の服をまとった青年で、釣りをしながらうとうとと居眠りをしている。私は彼の元へ歩いていった。彼ならこの世界のことを知っているかもしれない。近づくにつれ、奇妙なことに気付いた。 11
  • 減衰世界 @decay_world 2016-11-20 20:20:04
    _青年の風貌は、どこか自分に似ているのだ。しかし、生き写しと言うほどそっくりでもない。彼の横に座って、挨拶をした。青年は目を覚ますと、にこやかな笑顔で挨拶を返す。彼は大きなあくびをすると、いい天気ですねと当たり障りのない話題を返した。 12
  • 減衰世界 @decay_world 2016-11-20 20:27:05
    _この場所はどこですか? と私はいきなり問いかけた。青年は遠くを見つめながら返す。 「自分はやっとこの場所に辿りついたのです……長い、長い旅の果てに」  その喋り方はどこかで聞いた気がした。どこかで以前会ったような……。思わず声をどもらせた後、私は青年に名前を聞いた。 13
  • 減衰世界 @decay_world 2016-11-20 20:34:02
    _そこで私の目は覚めた。どうやら取り合いをしている最中倒れたらしい。あの胡散臭い古美術商はとっくに逃げてしまっていて、家族はカンカンに怒っていた。あの壺は……地面に落ちて割れていた。取り合いの最中落としたのだろうか。私はため息をついた。 14
  • 減衰世界 @decay_world 2016-11-20 20:41:47
    _しゃがんで破片をひとつひとつ拾い集めていると、先程の不思議な世界が記憶の中で甦ってきた。私はこの世界に行っていたのだろうか。破片の一つを拾い上げ、あることに気付いた。記憶にない……釣りをしている人の小さな絵が描かれているのだ。 15
  • 減衰世界 @decay_world 2016-11-20 20:45:47
    _あのときの青年だろうか……あの世界の記憶の最後、青年の名前を聞いた気がした。彼は……楽園を手に入れたのだろうか。彼の名前は、奇妙なことに私の祖父と同じ名前をしていた。 16
  • 減衰世界 @decay_world 2016-11-20 20:53:28
    _私は壺の破片を捨てることができなかった。家族には理解されなかったが、それでもよかった。私は予感がするのだ。私の追い求める世界が……この破片にあると。私は店からモルタルを買ってきて、作業に取り掛かった。 17
  • 減衰世界 @decay_world 2016-11-20 20:57:05
    _壺の破片を注意深く小さくして、モザイク画のように並べ、モルタルで固め、一つの絵にする。そこには私の理想とする世界があるはずなのだ! 何故なら……釣りをしている彼の隣には、すでに私の姿が描かれていたのだから。 18
  • 減衰世界 @decay_world 2016-11-20 21:04:29
    _壺【2016加筆修正版】(了)

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