「フー・クゥド・イート・ソーリー?」

秋だ!北の海だ!秋刀魚漁だ! マグロもあるよ!
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#1

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「フー・クゥド・イート・ソーリー?」 #1

2016-12-02 21:03:09
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ウッハハ!ウッハハ!ウッハッハッ!」「ポポポポーウ!ポポポーウ!」 「ウッハハ!ウッハハ!ウッハッハッ!ウッハハ!ウッハハ!ウッハッハッ!」「ポーポポーウ!ポーポポーウ!ポロロロロロロロ!」1

2016-12-02 21:05:01
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

その夜、アリューシャン列島のある小島は活気に満ちていた。切り立った岸壁に覆われたその隠れ江には火が灯り、薪がくべられて、暖かい光が岩肌に照らす。火を囲み踊る者達の影が伸び、その姿を辺りへと投げかける。何らかの原始的な儀式、或いはオマツリめいたシンピテキな光景であった。 2

2016-12-02 21:06:20
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ハァーッ…ハァーッ…いったいこれは」その光景を、駆逐艦娘・浦波は隠れ江にほど近い洋上の岩礁に身を隠して目を凝らしていた。少年めいた端正なその顔は月夜ですらわかるほどに蒼白しており、表情からは余裕を感じることはできない。「ハァーッ…ハァーッ…あいつらは、一体…」 3

2016-12-02 21:07:22
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

浦波はもう一度隠れ江へと視線を向ける。深海棲艦の支配域から外れたこの島は瘴気の雲に覆われることなく月光が青白く周囲を照らす。それはこの海域が深海棲艦の縄張りではなく、命ある者達の領域であることを示している。 4

2016-12-02 21:09:19
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

そして火を囲んで踊る者たちの姿は…ナ、ナムアミダブツ!その姿は駆逐級深海棲艦の体を頭部として筋骨隆々の人間の体を腹部から生やした奇怪な深海棲艦の姿…言うなれば半深海棲艦人の姿であった!彼の者達は一様に雄々しく歌い踊る。「ウッハハ!ウッハハ!ウッハッハッ!ウッハハ!ウッハハ!」 5

2016-12-02 21:10:20
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「トゥンヌス!トゥンヌス!ウッハッハ!」半深海棲艦人は狂ったように叫び、飛び跳ねて踊る。そしておお、見よ!隠れ江の奥に仰々しく聳える謎めいた黄金像を!それは半深海棲艦人と同じく駆逐イ級から人間の屈強な体を生やし、その体をはためく布で隠したたシンピテキな黄金像であった。 6

2016-12-02 21:11:17
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

浦波はこの邪教徒の儀式めいた理解を拒む光景を見て失禁を耐える。「ハァーッ…ハァーッ…哨戒中にこんなのを見つけるなんて…本部に報告を…!」浦波はどうにか恐怖を飲み込み、自身の所属する幌筵泊地へと報告を入れんとした。 7

2016-12-02 21:13:30
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

人類の進出可能海域への深海棲艦の侵入。それはレッドアラートクラスの緊急事態だ。浦波は急いで艤装の通信装置を……ブブブブブ……ブブブブブ……その時、羽虫の羽音めいた不快音が耳に届いた。浦波の艦娘第六感が、危機を告げる!浦波は迷わず側面飛込み回避!「イヤーッ!」 8

2016-12-02 21:14:38
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ZIIIIIIP!KRAAASH!何たることだ!風切り音が鳴り響いたと思ったら、浦波が隠れていた岩礁が抉り穿たれているではないか!ブブブブブ……ブブブブブ……羽音は浦波の周囲を囲むように鳴り響く。浦波は夜空に視線を巡らせる。視界を過る影。浦波は月夜の空に小さな影を見た。 9

2016-12-02 21:16:01
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

浦波の艦娘視力はその姿を捉える。それは深海棲艦の艦載機であった。だが、ただの艦載機ではない。その頭部はツルギめいて長く鋭く研ぎ澄まされ、側面からは細い手足を生やす。艦載機は浦波へとツルギの切っ先めいた機首を向け、両手を合わせた…アイサツだ!「ドーモ、ソードフィッシュデス」 10

2016-12-02 21:17:13
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ソードフィッシュは嘲る様に浦波を見下ろし、超自然的エコーボイスを発した。「覗キ見トハ行儀ノ悪イ。名乗ルガイイ」「ドーモ、吹雪型10番艦・浦波です……艦載機が、喋った!?」「艦載機デハナイ…ソードフィッシュデアル!」 11

2016-12-02 21:18:41
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ブブブブブ……!ブブブブブ……!ソードフィッシュの機首が細かく振動を繰り返し、空を切り裂く。羽音の正体はこの振動音だ。「振動剣か…!」浦波は腕に巻いた錨付きクサリをほどき、カラテを構えた。水雷カラテが持つドーがひとつ、クサリ・ドーである。 12

2016-12-02 21:21:31
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「勇マシイナ、ソノ意気ヤヨシ」ソードフィッシュはしかし、浦波を嘲笑い続ける。ソードフィッシュは小さな指を立て、言った。「ダガ、不注意ダナ」「エッ」その瞬間!「ドッソイオラー!」海中から、細長い物体が飛び出す!強烈な叩き付けを喰らい、浦波はウケミも取れずに吹き飛ぶ! 13

2016-12-02 21:27:28
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

KRAAASH!「ンアーッ!」浦波はそのまま自分の隠れていた岩礁に叩き付けられる!艤装が拉げ、浦波は苦悶に悶えてアンブッシュ者を見た。それは、特徴的な頭部がカタナめいて細長くなったヌ級であった。そのヌ級は逞しい両腕を合わせてアイサツした。「ドーモ、ソーリーデス」 14

2016-12-02 21:30:38
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

腹部に強烈なダメージを受けた浦波は、アイサツを返すことができなかった。浦波の意識が闇へと飲み込まれる。「ソレデ……コイツハドウ……」「仲……連レテ……ラ……ハ面………倒」「……贄ニ……加……」「トゥ・……様……口………ウカ?」浦波の意識は、完全に闇へと落ちた。 15

2016-12-02 21:36:10
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

翌日、幌筵泊地の一角。切り立った崖の上に立つ笏楠花の鎮守府にて。「ドーモ、リカルド・ベレンゲルです」「ドーモ、神山ミシロです」2人の提督が指令室にてアイサツを交わす。一人は褐色肌の筋骨隆々な大男、リカルド・ベレンゲル。もう一人は紺色のコートを纏った女性、神山ミシロ。 17

2016-12-02 21:43:22
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「いやぁ、実際に見るととんでもない筋肉ですね」神山が興味深げにリカルドの腹筋を突き回す。リカルドは対処に困り、背後にいる艦娘を見やった。「……」吹雪は我関せずと無視を決め込む。磯風は不思議そうに首を傾げた。神山麾下の加古は立ったまま寝ている。 18

2016-12-02 21:46:58
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

天龍は相変わらずだと言わんばかりに神山を見て苦笑していた。若葉は喫煙室へと足早に姿を消していた。「いやぁ、貴方達の絵もよく描くんですけど、絵面が筋肉とか血とかでいっぱいでそんなに趣味じゃないんですよねぇぇ…やっぱり描くならるなかの柔肌を…」 19

2016-12-02 21:51:01
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

リカルドは溜息を吐き、神山のコートの襟首を以てつまみ上げた。独り言に夢中になっていた神山は、1分程経ってようやく自分が浮いていることに気が付いた。「…おろ?私浮いてる」「話をしていいか?」リカルドはサングラスを外し、青い目で神山を睨んだ。 20

2016-12-02 21:58:59
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「アッ、ハイ…」神山はブンブンと連続で頷いた。リカルドはゆっくりと神山を降ろした。リカルドは仰々しく告げる。「赤レンガからの指令で、今年も秋刀魚漁支援艦隊結成指令が下令された。今回の担当は俺が選ばれた。北方前線の神山ミシロ少将はこれに協力するべし、だそうだ」 21

2016-12-02 22:05:21
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ハイ…ハイ…承っています」神山は画材と絵画で埋もれた自身の机から書類を引っ張り出し、リカルドの言葉との一致を確認した。「どうした、リカルド指令。なんか怖いぞ」磯風がひそひそと吹雪に耳打ちする。「司令官は、仕事の邪魔をされるのが嫌いですから」「意外だな」「私もそう思います」 22

2016-12-02 22:08:37
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「そう言う訳だ。漁師船団の受け入れの手続きをしたい」構わないな、とリカルドは視線で言外に問うた。神山はこの蛮族の恐ろしさを知っていた。故に、彼女はスムーズに事を運んだ。「はい、分かりました。ドックの人たちにすぐ伝えます…加古!」「ふぇ!」加古は体をびくつかせ、跳び上がった。 23

2016-12-02 22:13:32
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