blue 向日葵第三部

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あみ @ami_qitt25

158 向日葵第3部 blue 彼女を見たのは夕方の湖の畔 白いワンピース姿の この時間にしては寒そうな姿で ベンチに座ってた その姿が… 湖に向かって歩き出した 無意識だった… 走り出して湖に飛込み 意識を失った彼女を抱えて 別荘に戻った #向日葵 #blue

2016-10-27 05:50:44
あみ @ami_qitt25

159 彼女の意識は戻らなかったが 湖に入るぐらいやから 何か事情があるんやと思い 通報はせいへんかった 暫くすると湖が騒がしくなった 多分、彼女を探してるんやろ 敢えて…彼女が此処にいる事は 知らせなかった 彼女は3日眠り続けた #向日葵 #blue

2016-10-27 05:51:38
あみ @ami_qitt25

160 目が覚めた時…彼女は 「どうして助けたの? …あのままで良かったのに…」 そう言った静かに涙を流した 『何があったん?言いたく無いなら 言わんくてええけど… 何処にも、此処にいる事は言ってへんから…』 #向日葵 #blue

2016-10-27 05:52:43
あみ @ami_qitt25

161 彼女は何も云わずにただ一言 「生まれ変わりたかったの…」 生まれ変わりたかった… 何があったらそんな事思うんや 生きたくても生きれへん奴も居るのに…思い出していた #向日葵 #blue

2016-10-27 05:53:36
あみ @ami_qitt25

162 去年の事を… 吸い込まれるように落ちて行く 車… 水の冷たさ… 助けれなかった あいつの姿… 沈んでゆく白いワンピース 手が届かなくて… ハットして起き上がると 俺の額に張り付いた髪を指で避けて 汗を拭って #向日葵 #blue

2016-10-27 05:54:28
あみ @ami_qitt25

163 「大丈夫…ですか?…魘されてたから…」 彼女の手を掴むとビクッと震えて でも、離す事が出来へんで 『ごめん、…ちょっとだけでええからこうしといて…』 彼女は黙って頷いて俺の手を両手で包んでくれた #向日葵 #blue

2016-10-27 05:55:16
あみ @ami_qitt25

164 翌日、朝が空ける前に 湖に向かった… サヨナラを言う為に 1年…前に進まなあかんやろ? お前を忘れたりはせいへん でも、先に進まな… だから、サヨナラ…来年まで 夜明けの湖にあいつの好きだった 向日葵の花束を…サヨナラ #向日葵 #blue

2016-10-27 05:56:03
あみ @ami_qitt25

165 別荘に戻ると彼女が不安げな顔で 待っていた 「大丈夫や、ちょっと用事があって湖に行ってたんや」 そう告げると少し安心した様子で 「食事の支度をしてみたんですお口に合うか分かりませんが…」 『誰かと食事をするんなんか 久しぶりやわ』 #向日葵 #blue

2016-10-27 05:57:06
あみ @ami_qitt25

166 食事が終わって、彼女がキッチンを 片付けてるのを見ながら あいつの姿と重ねてる自分に 苦笑する 「何か?…可笑しかったですか?」 彼女が珈琲を持ってリビングに #向日葵 #blue

2016-10-27 05:58:16
あみ @ami_qitt25

167 『何でもあらへん、 なあ?俺、今日帰る予定なんやけど… お前、どないする?行くとこあらへんのやろ? もし…もしやけど行くとあらへんなら 俺と来るか?』 気まぐれやった 助けるとかそんなんやない ただの気まぐれ #向日葵 #blue

2016-10-27 05:59:12
あみ @ami_qitt25

168 少し考え込んで 「御迷惑じゃ無いですか?」 『迷惑なら言わへん、 どないする?来るか?』 コクっと頷いて 「宜しくお願いします」 頭を下げた 夕方にはマンションに着いた 部屋に入って #向日葵 #blue

2016-10-27 06:00:11
あみ @ami_qitt25

169 『この部屋使って…ある物は好きに使ってええから、ああ、着替えとか居るよな…クローゼットに服はある筈やけど…』 彼女がクローゼットの中に入るのを見てから自分の部屋に入った 誰かが同じ空間に居る事自体 この1年無かった 仕事以外では… #向日葵 #blue

2016-10-27 06:01:02
あみ @ami_qitt25

170 どのぐらい時間が経ったのか いい匂いがして来て… ああ、腹減ってるんや そんな事感じたのも久しぶりやな 部屋を出てリビングに入ると 「あ、勝手にごめんなさい、 食事作りましたから召し上がりませんか?」 #向日葵 #blue

2016-10-27 06:01:53
あみ @ami_qitt25

171 彼女に促されて席に付き 2人で食事を取る お互い感じてる事を隠して 食事が終わり部屋に戻りまた仕事を 再開する 暫くしてノックの音が 『ええよ、入って』 「珈琲を入れたので…お持ちしますか?」 『いや、そっちに行くわ』 #向日葵 #blue

2016-10-27 06:02:46
あみ @ami_qitt25

172 背伸びしながら立ち上がりリビングに 入る…人が1人居るだけで部屋が暖かく感じる 出された珈琲を1口飲み 『明日、昼間家政婦さんが来るからその人と必要なもん買いに行って』 「…え?」 『ええから… あそこの中だけやったら足らんやろ』 #向日葵 #blue

2016-10-27 06:03:37
あみ @ami_qitt25

173 「…ごめんなさい」 『それ、口癖か?』 黙って俯く彼女は悲しそうな瞳を伏せて 「嫌ですよね、ごめんなさい…」 『また、言うた、ええよ、無理せんでも…俺は気にせんから』 この子にはこの子の抱えてるもんが ある筈やから…俺と同じ様に #向日葵 #blue

2016-10-27 06:04:29
あみ @ami_qitt25

174 彼女との生活は半年を過ぎた お互い余計な事は聞かず 口を出す事も無く 彼女自身は多分… 気を使ってるんやろうけど 俺は不思議な事に気にならなかった あいつ以外と暮らせるとは 思わへんかったし 意外にもこの生活が快適に思えて来てた #向日葵 #blue

2016-10-27 20:57:31
あみ @ami_qitt25

175 いつの間にか彼女の俺への呼び方が 「あのう」とか「すいません」から 「信五さん」変わっておった それすら違和感も無く染み込む様に そんな風に呼ばれた事は1度もあらへんのに… ただ…1度だけ #向日葵 #blue

2016-10-27 20:58:27
あみ @ami_qitt25

176 『お前…探してる奴とかおらへんの? 心配してるんやないの?』 聞いた時に 彼女は遠くを見つめる様に 「…もう、忘れてると思う… その方が幸せになれるから…」 誰に対してなのかは聞かへんかった #向日葵 #blue

2016-10-27 20:59:09
あみ @ami_qitt25

177 聞いたら彼女はここから居なくなる …そんな気がしたから この感情がなんなのかは 考えん様にした 考えた所で俺は誰かを幸せにする 資格はあらへんから… 彼女が少しづつ笑う様になった #向日葵 #blue

2016-10-27 21:00:01
あみ @ami_qitt25

178 それだけで… あいつにしてやれんかった事の罪滅ぼしになるんかなぁ ある夜、食事が終わり何時ものように彼女が珈琲を入れて… 何時も違ったのは 「信五さん、 明日ってお仕事ですか?」 珍しく彼女から予定を聞いて来た #向日葵 #blue

2016-10-27 21:00:57
あみ @ami_qitt25

179 大概休みも部屋で仕事をしてるから 『いや…どないした?』 珈琲に口を付けて 「お願いがあるんです…」 なんでやろ?不安に思うのは… 『なんや?』 「一緒に行って欲しい場所があるんです…信五さんに…駄目ですか?」 場所… #向日葵 #blue

2016-10-27 21:01:42
あみ @ami_qitt25

180 『ええよ、一緒に行こ』 翌日、彼女が伝える住所をカーナビに 入れて目的地に向かう 早朝の高速は空いて居て 思ったより早く着きそうだ 目的地に近付く 車の助手席に座る彼女から 緊張が伝わって来て 『大丈夫か? 引き返してもええんやで』 #向日葵 #blue

2016-10-27 21:02:46
あみ @ami_qitt25

181 チラッ見た彼女は強ばった顔だが 真っ直ぐ前を見つめて 「いえ…行かなきゃ行けないんです 行ってちゃんと終わりにしないと…」 彼女の強い口調を初めて聞いた気がする 『そうか 分かった、最後まで付き合うわ』 「…ありがとうございます」 #向日葵 #blue

2016-10-27 21:04:07
あみ @ami_qitt25

174 着いた場所は…1面の向日葵畑 車から降りた彼女は 向日葵の中にゆっくりと近づき 崩れ落ちる様に泣き出した 駆け寄ろうと1歩踏み出した時 […どうして…] 振り返ると今にも泣きそうな男が 彼女を見つめて立っていた #向日葵 #blue

2016-10-28 09:20:30