人は楽しい時や幸せな時でなくても、自尊心を守るために笑うことがある。それは最後の防衛線、デッドライン

悲しいことに辛ければ辛いほど、自分さえ騙せてしまうほどに笑い方がうまくなる。 「自尊心を守るために笑っている人」を見分けるのは難しい。ただ大事な人には丁寧に丁寧に接するしかないよなと、今日も思う。
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たられば @tarareba722

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たられば @tarareba722

小学生の頃、じっと座って授業を聞くことが出来ない子供だった。教科書を開いて椅子に座り、机の前で誰かの話を黙って45分聞きながら、要点をノートに書くなんて至難の技だった。隣の席の同級生の息遣いが気になった。昨日セーブしたゲームの続きの話がしたかった。飛んでる虫を捕まえたかった。

2016-12-02 11:52:54
たられば @tarareba722

コロコロの発売日いつだっけ。仲良しのニコちん、昨日隣のクラスの女子と一緒に帰ってたな。無限に湧き出る散漫な興味や衝動を抑えこんで黙って座っていることが出来なかった。何より今はこうやって衝動や抑圧を言葉にできるけれど、当時はなぜ自分が机でジッとしてられないのか分からなかった。

2016-12-02 11:54:00
たられば @tarareba722

その頃の担任は、生徒を殴る教師だった。授業中に私語を漏らせば殴り、姿勢が悪ければ殴り、廊下を走れば殴った。朝礼の時に騒いでいたと、放課後クラス全員机の上に正座させられた。「帰りたい」と呟いた女子生徒を殴って髪を掴み机に顔を押しつけ、「今何やってるか分かってんのか!」と怒鳴った。

2016-12-02 11:54:44
たられば @tarareba722

おそらく、その時自分たちが何をやってるのか、誰も分からなかったと思う。 そんな担任だからか、私は毎日殴られていた。胸の名札の位置が悪いと殴られ、殴られている時に目を逸らすなといって頬を張り飛ばされた。ある日、顔を腫らせて家に帰ると、母が「学校とその教師を訴える」と言った。

2016-12-02 11:55:32
たられば @tarareba722

「お願いだからやめてくれ。ぼくが悪いんだから。母さんはぼくを困らせるの?」と泣きながら母を説得した。母は「これが続くようなら告訴する、と伝えること」を条件に、折れた。翌日「挨拶の声が小さかった」と言って、顔でなく頭を殴られた。学校にも担任にも、母の条件を伝えることはできなかった。

2016-12-02 11:56:11
たられば @tarareba722

クラスで一番殴られることが定着してきた頃、私は「いつも笑って騒ぐ間抜けなドジキャラ」を率先して演じるようになった。「教師に殴られて親に心配をかけているのにそこから抜け出せない悲惨な小学生」よりも、「ドジなのでよく殴られるけどそれを気にしない小学生」のほうが、まだマシだったからだ。

2016-12-02 11:56:53
たられば @tarareba722

「そういうキャラ」を選択したことで、以前よりさらに頻繁に殴られるようになった。頭では「あ、これ殴られるな、それは嫌だな」と思っていても、そのことを悲しみ苦しんで、「可哀想な自分」を引き受けることができないほど弱かった。こうして殴る教師と殴られる子供の最悪な共犯関係が出来上がった。

2016-12-02 11:57:59
たられば @tarareba722

中学に上がって、ゆっくりとではあるが多動傾向が収まっていった。黙って人の話を聞くことができるようになり、座って本を読むことが好きになった。そこでハタと、「いつもニコニコしていなくてもいいんだ」ということに気づいた。もう誰にも殴られないから。明るいドジでいる必要はないんだと。

2016-12-02 11:58:42
たられば @tarareba722

その頃、母に謝った。ある日の夕食後に、あの頃は困らせてすまなかったと。「母さんの言ってたことや、やれと言われたことのほうが正しかった」と言うと、泣かれた。「間違っていたのは学校と、その教師と、わたしであって、あなたは何ひとつ間違っていない」と大粒の涙を流しながら言われた。

2016-12-02 11:59:49
たられば @tarareba722

あの母が言うのだから、たぶんそうなのだろう。そういえばそろそろ三周忌だ。墓参りに行かなくては。閑話休題。

2016-12-02 12:01:13
たられば @tarareba722

今でも時々ふと、よく笑う同僚や友人、笑顔ではしゃぐ子供たちを見ると、不安になることがある。人は楽しい時や幸せな時でなくても、自尊心を守るために笑うことがある。それは最後の防衛線、デッドラインなのだけど、悲しいことに辛ければ辛いほど、自分さえ騙せてしまうほどに笑い方がうまくなる。

2016-12-02 12:01:40
たられば @tarareba722

そういう「自尊心を守るために笑っている人」を見分けるのは難しい。何より誰かに「お前は今、自分を守るために笑っているな」と見抜かれるのは、そういう人たちにとっては死活問題になる。「こうすればいい」という処方箋はない。ただ大事な人には丁寧に丁寧に接するしかないよなと、今日も思う。(了

2016-12-02 12:02:31