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カップラーメンの麺が伸びている。麺を浸していたスープは、今やすっかり冷め切っている。小さな贅沢のつもりか、浮かんだ卵黄は所在無さ気に佇む。カップラーメンの完成を待ち望んでいた孤独な男は、深く頭を垂れ、世界の全てに感謝をするような姿勢で、その心の臓を止めていた。 #twnovel
2016-09-06 21:15:09ネットゲームに熱中する。一人しか居ない部屋の中、一人で延々とマウスクリックを繰り返す。近くの敵を粗方狩り尽くしたので、別エリアへ移動する。画面が一瞬だけ黒くなり、そこに映り込んだのは、やつれた顔の俺と上の長い女。驚いて振り返っても、当然そこには誰も居なかった。 #twnovel
2016-09-15 01:10:03携帯に電話が掛かってきた。見知らぬ電話番号は、「×××-×××-37564」…。物騒な番号に取るのを躊躇していると、その内にコールは途切れた。後日、“皆殺し回線”という都市伝説を聞いた。なんでも、とある番号から掛かってきた電話を取ると、殺されてしまうとか…。 #twnovel
2016-09-15 01:14:22まあ、電話を取るだけで殺されるというのも嘘臭いし、そもそも電話を取った人間が殺されるのなら、こんな話が広まるわけが無い。鼻で笑っていた私だったが、その数日後、例の番号から再び電話が掛かってきた。都市伝説のことを思い出しながらも、私はコールに出る。「…もしもし」 #twnovel
2016-09-15 01:16:48『もしもし、○○さんですか?』…電話の相手は、普通の男の人だった。「いえ、違います」『あれ?○○さん…の電話じゃない?』「はい。こちら、△△です」『あれ…?すみません、間違えました』通話は、これで終わった。なんだ、やっぱり物騒なだけの偶然だ。私は、安堵した。 #twnovel
2016-09-15 01:19:56学校の帰り道に、赤ん坊を抱いたお母さんを見掛ける。とても幸せそうな親子の顔だ。俺は、見掛ける度に会釈をするし、そのお母さんも会釈を返してくれる。親子は毎日立っている。会釈は毎日交わしている。今日は、とうとう高校の卒業式。お母さんは、今日も俺と会釈を交わす。 #twnovel
2016-09-17 00:37:25「お前、いつもここで頭下げてたよな。何かあんの?」「いや、特に意味は無いよ」友だちの疑問をはぐらかしながら、親子のことを横目で眺める。今日も、お母さんは赤ん坊を抱いて、幸せそうな顔をしていた。 #twnovel
2016-09-17 00:39:34ベッドに拘束をされ、そろそろ一週間が経つ。動けず、何もすることができない俺は、拘束初日に散々汚された自分の体の一部を眺めるしかできない。そして、今日も部屋を訪れる男が一人、二人。「よう。気分はどうだ?」「…最悪」「お前はそればっかりだな」笑い声が響く。 #twblnovel
2016-09-28 00:57:51「あーあ、つまんねえ…」俺の呟きを聞きつけた男たちは、ここぞとばかりに鞄から荷物を取り出す。「ほら。そう言うと思って持ってきてやったぞ。お前好みの巨乳」「いやいや、こっちの美尻本も」「まあ、1番は俺が持ってきた海外無修正だろ」「おー!」部屋の中がどよめく。 #twblnovel
2016-09-28 01:00:52「いらねえよ!バカ!この足じゃトイレも行けねえんだよ!」落書きまみれのギブスと吊り台に固定された足を指さしつつ、エロ本を布団の上に広げるバカ共を殴る。「おいおい、看護婦さんがヌイてくれるんだろ?おいおい?」「エロ漫画の見過ぎだし、担当はババアだ」 #twblnovel
2016-09-28 01:03:26大きくため息を吐けば、思春期特有の夢物語をぶち壊されたバカ共にも暗い雰囲気が伝染する。「…ま、いいや。とりま、本は置いてくから使ってくれな」「だから要らねえって…!」軽く見舞いに来ただけのバカ共は、結局エロ本を置いてさっさと帰ってしまった。 #twblnovel
2016-09-28 01:05:39俺は再び深いため息を吐きながら、散らばった本をまとめて、傍らのゴミ箱の中に突っ込んだ。そのとき、隣のベッドからクスクスと笑い声が聞こえてきた。「君の友だちは、いつも元気だね」「いや、うるさいだけっス…。スマセン」そう言って、俺はふて腐れる。 #twblnovel
2016-09-28 01:08:35でも、隣の人はまだ笑っているようだった。「君たちくらいの年齢だと、美人な看護師さんに性処理をして貰うのが憧れなのかい?」カーテンが開く音を聞きながら、隣の人の質問に答える。「いやいや、あいつらが夢見がちなだけっしょ」隣の人は、やはり面白そうに笑っている。 #twblnovel
2016-09-28 01:11:11「いやあ、若いっていいねえ。性にストレートで」隣の人が、先ほどまで奴らが座っていた椅子に座る。つまり、俺のベッドサイドだ。「どうせなら君も、教えてあげたらよかったんじゃないかな?」そう言って、俺に手を伸ばしてくる。その指先を見つめて、顔が赤くなるのを感じた。 #twblnovel
2016-09-28 01:13:31「美人の看護師さんじゃなくて、隣のベッドのお兄さんが、毎晩性処理してくれてる、って」男性にしては綺麗な指先が、俺の股間を弄くり回す。入院生活で溜まりやすいのは若さ故なので、俺の股間は即座に熱を持つ。そして、彼からの愛撫を受け入れるがままとなっていた。 #twblnovel
2016-09-28 01:17:29今日、来るんじゃないか。そう思ったから、お前の好きな料理を作っといた。けど、そんな雰囲気を出さず、突然泣きながら駆け込んできたお前に、夕食を分ける自分。お前の目には、どう映っているんだろうな。まあ、今のお前は、直前の失恋と目前の好物しか目に映ってないけど。 #twblnovel
2016-10-19 23:58:23