【書きかけ】The 3rd birthday鎮守府
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dzurablk_kai
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深海さかな
@dzurablk_kai
その日、横須賀の朝の空気は、今だかつてないほど澄みきっていた 起床時間から一時間ほど経ちようやく朝日が顔を覗かせつつある藍色の空を見上げながらアヤは、宿舎の屋上から四方を眺める 西に見えるは滅多に見えない富士山の遠景と街の明かり #三番目の誕生日鎮守府
2016-12-02 02:24:44
深海さかな
@dzurablk_kai
その景色はこの数十年、否、数百年の間変わることなく、人々と自然が共存し織り成してきた風景だ だが残る三方の景観はこの数年で、見違えるほどに変質してしまっていた 南と東の方角に視線を下ろすと、血や臓物を思わせる、深紅に染まった海が嫌でも目を引いた #三番目の誕生日鎮守府
2016-12-02 02:27:21
深海さかな
@dzurablk_kai
深海棲艦、３年前に突如海から現れた化け物は暫定的にそう呼ばれている 各国軍の必死の抵抗も甲斐なく世界の沿岸を戦火に覆い尽くし、人を補食して爆発的に増殖した奴らがこの東京湾へ侵攻するのに、さほど時間を要しはしなかった #三番目の誕生日鎮守府
2016-12-02 02:32:08
深海さかな
@dzurablk_kai
アヤは気を紛らすために最近始めたタバコを、ジーンズの臀部から取り出すと、ひしゃげたソフトパックからバニラビーンズを思わせるシガーを口元へ運ぶ 見た目通りにバニラの香りを振り撒くピース・・・この皮肉なネーミングのタバコもこのところは手に入り難くなった・・・ #三番目の誕生日鎮守府
2016-12-02 02:34:50
深海さかな
@dzurablk_kai
その紫煙越しに北を臨むと、それは嫌でも目を引き、アヤの意識を引き付けた そこにあったのは、暮らしの日が消えて久しい横浜のビル郡の彼方に霞んだ、岩塩を思わせる巨大な灰白色の塊とそれを取り囲む枝のような螺旋状に伸びる構造物 #三番目の誕生日鎮守府
2016-12-02 02:37:31
深海さかな
@dzurablk_kai
東京の摩天楼に寄生するかのように発生したこのバベルと呼ばれる深海棲艦の巣窟は、数年前こそアパート程の大きさに甘んじていたのだが、日増しに巨大化を繰り返し今や高層ビルすら覆い尽くすばかりの成長を遂げている #三番目の誕生日鎮守府
2016-12-02 02:39:42
深海さかな
@dzurablk_kai
あのバベルから生まれた深海棲艦によって、一体如何程の人命が露と消え、また所在を失したのかは計り知れない が、その陰惨な歴史も今日で終わるはずである 今日のアヤの任務が上手く運べば、という条件付きであるが #三番目の誕生日鎮守府
2016-12-02 02:42:53
深海さかな
@dzurablk_kai
最も実戦経験も無いアヤに、自衛軍の火器ですら物ともしなかったあの化け物達を掻い潜り任務を達することができるのか、それ以前に生きてまたこの観音崎に立ち朝日を眺めることが敵うかは自分でも甚だ疑問であった アヤはピースを赤いクッキー缶のような煙缶に捩じ込むと、 #三番目の誕生日鎮守府
2016-12-02 02:46:06
深海さかな
@dzurablk_kai
バベルに背を向け屋上に突き出た階段室へと向かう 「過去・・・いや、未来は変えてみせる、この私の手で」 なぜならそれはアヤに与えられた、アヤにしかできない任務 #三番目の誕生日鎮守府
2016-12-02 02:48:35