- yokosimakoutaro
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「サヨナラ!」トライリーフムシは壁へ大の字に叩き付けられ、爆発四散した。油断ならぬカラテの使い手であった。ニンジャスレイヤーはザンシンする。「ハァーッ・・・ハァーッ・・・」その息は荒い。連戦による消耗である。1
2016-12-10 14:05:56連戦。然り、彼は戦い続けていた。この出口の無い袋小路に迷い込んでから、ずっと。時間の感覚はとうの昔に失せている。一体いつからこうしているのだろう。一時間? 二時間? あるいはそれ以上か?2
2016-12-10 14:10:55「ヌゥーッ!」強いて己を奮い立たせ、ニンジャスレイヤーは前方の暗がりを睨んだ。カラテを構え、全方位を警戒しながら、じりじりと歩みを進める。既に何度も通った筈の細道を。3
2016-12-10 14:16:23「ハァーッ・・・ハァーッ・・・」視界が歪む。脂汗が滲む。先程トライリーフムシに受けた吹き矢の影響か。首筋の傷の熱を努めて無視しながら、タタミ一枚よりやや拾い幅しかない通路を、ニンジャスレイヤーは油断無く進んでいく。4
2016-12-10 14:21:08夜に沈むビルの谷間。バチバチと火花を散らすLEDボンボリ。蛍光色に輝く「30時間働いた」「全卵かしまし」などのネオン看板群。それらを横目に進むフジキドは、突き当たった曲がり角を右へ進む。5
2016-12-10 14:25:58夜に沈むビルの谷間。バチバチと火花を散らすLEDボンボリ。蛍光色に輝く「お先にどうぞ」「実際安い」などのネオン看板群。それらを横目に進むフジキドは、突き当たった曲がり角を右へ進む。6
2016-12-10 14:31:25夜に沈むビルの谷間。バチバチと火花を散らすLEDボンボリ。蛍光色に輝「お家」「ふかしポテトでも」などのネオン看板群。それらを横目に進むフジキドは、突き当たった曲がり角を右へ進む。7
2016-12-10 14:36:01夜に沈むビルの谷間。バチバチと火花を散らすLEDボンボリ。蛍光色に輝く「おてまみ」「たぶん川」などのネオン看板群。それらを横目に進むフジキドは、突き当たった曲がり角を右へ進む。8
2016-12-10 14:40:59「バカな・・・同じ場所とは・・・!」ニンジャスレイヤーは目を見開く。火花を散らすボンボリが、見覚えのある「30時間働いた」「全卵かしまし」と言った看板群を照らし出している。更には、通路中央に佇むニンジャの姿さえも。9
2016-12-10 14:46:30「ドーモ。トライリーフムシです」虫のような装甲に覆われた装束のニンジャは、幾度となく聞いたアイサツをニンジャスレイヤーへと放った。10
2016-12-10 14:50:55タタミ敷きの四角い小部屋の中央、正座姿勢でスズリをするニンジャあり。部屋はシュギ・ジキと呼ばれるパターンで、十二枚のタタミから構成されている。四方は壁であり、それぞれにはスコーピオン、カニ、バッファロー、山羊の見事な墨絵が描かれていた。11
2016-12-10 15:01:07イヤーッ・・・イヤーッ・・・イヤーッ・・・。防音処理が施されたカニ壁の向こうから、それでも響いて来る途切れ途切れのカラテシャウト。それを耳にしたニンジャ、ショドーカは、墨をする手を止めた。スズリの中のイカスミめいた墨に、酷薄な双眸が反射する。12
2016-12-10 15:06:01「ウフフ。キミの相方はまたカラテトレーニングを始めたようだな、YCNAN=サン」正座姿勢のまま、ショドーカは左へ視線を向ける。その先に居たのは、おお、ナムアミダブツ! ニンジャスレイヤーの協力者、ナンシー・リーその人ではないか!13
2016-12-10 15:10:58「ンーッ! ンーッ!」ナンシーは動けない。縄で動きを拘束された上、猿ぐつわまで噛まされているからだ。そんなナンシーへ嗜虐的な視線を注ぎながら、ショドーカはやおら正座姿勢から立ち上がった。14
2016-12-10 15:16:26「ここまで忍び込んだ手管は実際見事。しかし・・・ウフフ。それこそがワナだったのだよ。もはやキミの相方は、ワタシのショドーの虜だ」ショドーカは笑いながら懐から筆を取り出すと、やおらナンシーに・・・おお、おお、ナムアミダブツ!15
2016-12-10 15:20:53「ンアーッ!」「そう、虜だ。もはや逃れる事はできない。ワタシ達はこれまでに何匹ものクセモノをこの手で葬ってきた。そうとも、ワタシと、トライリーフムシ=サンの連携、は」ショドーカの筆が、ぴたりと止まる。16
2016-12-10 15:26:06イヤーッ・・・それと同時に一際甲高いニンジャスレイヤーのシャウトが響いた。それを最後に、壁向こうのカラテは途切れた。またトライリーフムシが爆発四散したのだ。ニンジャスレイヤーのニューロンの中で。17
2016-12-10 15:31:17「・・・」ばきり。ナンシーを嬲っていたショドーカの筆が、音を立てて折れた。ショドーカのニューロンに、トライリーフムシとの記憶がフラッシュバックする。ソニックブームにスカウトされたあの頃。ソウカイヤへ楯突く企業への潜入爆破ミッション。マルノウチ抗争。18
2016-12-10 15:35:55コンビは上手くいっていた。その戦績を認められ、あのダークニンジャをも退けたニンジャスレイヤーの討伐も任されたのだ。だがもはや、そのコンビは二度と組めない。「・・・ウフフ。このイクサが終わった暁には、彼のメンポで祝杯を挙げてくれましょうねェ・・・イヤーッ!」19
2016-12-10 15:41:03墨汁よりもなお黒い殺意を吐き出しながら、ショドーカはバク転で元の位置に戻って正座した。そのまま、傍らのUNIXモニタを起動。外の通路に仕込まれた小型カメラが、ザンシンするニンジャスレイヤーの姿を映し出した。そして、壁に刻まれた爆発四散痕をも。20
2016-12-10 15:46:13聡明なる読者諸兄ならばもうお気づきであろう。トライリーフムシというニンジャは、ニンジャスレイヤーが通路の周回を始めるよりも前に爆発四散している。僅かに残る痕跡は、最初のアンブッシュでニンジャスレイヤーの首筋へ突き刺さった幻覚薬物吹き矢と、壁の爆発四散痕のみ。21
2016-12-10 15:51:01だが、ならば。なぜニンジャスレイヤーは、未だトライリーフムシの残影とイクサを繰り広げているのか?それこそはショドーカのジツ、サブリミナル・ジツがためなのだ。22
2016-12-10 15:55:58「彼のニューロンもいつまで保ちますかねェ」 ショドーカは先程ナンシーを苛んでいたものとは別の筆を執りだし、筆先を墨汁に浸す。傍らに山と積まれたショドー用の紙を一枚取り、正面にセットする。筆を、構える。23
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