掌小説語り~自作つぃのべる集~37

自作つぃのべるのまとめです。 2016年5月分
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リュカ @ryuka511

周りは皆「あんな奴止めなさい」と言う。あなたの過去なんて知らなくていいの好きだから。隠し事があっても構わない。大事なのは未来だから。悪ぶって笑うのも照れ隠し、本当は優しい人だって私だけが知っている。私をどこに連れて行ってくれるの? 深夜のドライブに鼓動が高鳴る。 #twnovel

2016-05-01 00:06:46
リュカ @ryuka511

お別れしてから何年も経つのに、未だに君の柔らかい背中の感触を忘れられずにいる。ひとりぼっちの部屋で、空っぽの君の布団に手を這わせた。冷たい感触に君の不在を痛感する。淋しい。けれど、新しい子を飼う気にはまだなれない。君はきっと好きにしなよって言うんだろうね。 #twnovel

2016-05-01 23:22:59
リュカ @ryuka511

鋼鉄の塊を熱し打つ。己の手から生み出された刀が、いかほどの死者の山を築いたのか。己の職に疑問を抱かない日は無かった。刀の使い手が世を作る時代に、刀鍛冶の家に生まれた。仕方の無い事だと言い聞かせては嘆息を漏らす。鋼鉄を打つ澄んだ音に、許してくれと懺悔を重ねる。 #twnovel

2016-05-02 23:22:55
リュカ @ryuka511

あの豪華客船の沈没事故から数年間、貴方をずっと探してた。新聞で貴方の無事を確認して安心したわ。あれから名前変わったのね?ともかく元気そうで良かった。私も事故のトラウマから立ち直れたわ。これからはずっと一緒よ。安心して。貴方が私を見捨てた事は海の底に忘れてきたわ。 #twnovel

2016-05-03 22:14:26
リュカ @ryuka511

人里離れた草原に建てたあばら屋で、在りし日を思う。魔法の限界を人の無力さを、思い知る事になった若き日。絶望し、全てを捨てここへ来た。死ぬつもりで。だが今なら解る。自分は万能だという傲慢さ故に、絶望に陥ったのだと。帰る場所も待つ人もない今、この身一つで終生を待つ。 #twnovel

2016-05-04 23:34:29
リュカ @ryuka511

究極の愛の形とは。君を待つ間にそんな事を考える。命を投げ出せる事か。見返りを求めず尽くす事か。家族になり守る事か。君を幸せに出来る自信はあるけれど。 #twnovel はにかむ君の白いドレス姿。そうか。君がここにいる。君を君たらしめるもの、何ならこの世界そのものが、究極の愛の形。

2016-05-05 23:30:38
リュカ @ryuka511

燃え盛る城に反乱軍が迫る。王子だけでも守らねばと、隊長に王子を託し敵を迎え撃つ。必ず合流しますと約束したけれど、果たせそうにありません、隊長。時間稼ぎは出来たはず。どうぞご無事で。「あとは、頼みます」喉を貫かれ声にならない呟きと共に、燃え落ちる。 #twnovel

2016-05-07 01:02:41
リュカ @ryuka511

この病に罹患していると解ったのはまだ幼い頃だった。「パパ大好き」父にそう囁いた私の頬に、見た事のない花が咲いた。驚いた父が思わず花を毟った痕が頬に今も残っている。父は未だに泣いて詫びながらこの傷痕を撫でるけど、私は気にしていない。私の気持ちが本物だった証だから。 #twnovel

2016-05-07 23:22:23
リュカ @ryuka511

王子様によく似ているからとお城へ連れてこられ、王子様の替え玉として礼儀作法や帝王学を叩きこまれた。スラムで飢えていた僕には知りようも無かった世界。知ってしまえば、手に入れたいと思うのは、自然な事だろう? #twnovel 王子様は不幸な事故で亡くなられた。僕は今から本物になる。

2016-05-09 00:00:16
リュカ @ryuka511

一つきりの弾丸を祈るように握りしめる。チャンスは一度だけ、失敗は許されない。銃に弾を込め物陰から狙いを定める。必ず殺してやると宣言してやったのに、奴は無防備だった。罠なのか。だが躊躇している暇は無い。引金を引く。照準器の向こう、奴は悲しげに微笑んでいた気がする。 #twnovel

2016-05-10 00:38:07
リュカ @ryuka511

森の小屋でおばあさんの他殺体が見つかり、近くに住む狼とおばあさんの孫娘が捜査線上に上がった。孫娘は狼が犯人だと主張し狼は孫娘の仕業だと言う。泣きながら主張する孫娘と淡々と語る狼。誰もが嘘をついたのは狼だって判断した。ほくそ笑む孫娘は、狼の微笑の意味に気付かない。 #twnovel

2016-05-10 23:04:48
リュカ @ryuka511

時計の針は戻らない、そんな事は解っている。なら何故タイムマシンを作るのか。時計の針が戻らないなら、別の時計を作ればいい。あの時に狂った時計は破棄して、正しい時計を設置する。君がいない時間を刻む時計など正しいはずがない。これは君だけじゃなく、歪んだ世界を救う計画。 #twnovel

2016-05-11 22:59:57
リュカ @ryuka511

眠り病の特効薬は愛だという。だが、全てを拒絶して眠りに落ちた彼女を救う愛などあるのだろうか。家族さえも彼女を目覚めさせる事は出来なかった。点滴から栄養だけを与えられ眠りながら彼女は生きる。こんなのは違う、と彼女を愛した死神は憤る。矛盾する自分の想いに揺れながら。 #twnovel

2016-05-13 00:57:23
リュカ @ryuka511

この国では誰もが願いを叶えられる。争いも犯罪も差別も苦痛も何も無い、愛と自由と平和に満ちた理想郷だ。「さぁ、ここにサインを」「私のお願いも叶うの?」「もちろん」少女の期待に満ちた眼差しに入国管理官は口角を上げ笑う。「じゃあ、まずはその邪魔な肉体を捨てましょうね」 #twnovel

2016-05-13 22:33:57
リュカ @ryuka511

声を封じられた魔法使いは苦悩する。これでは呪文が唱えられない。武器も扱えないし戦えない自分は用無しだ。思い詰め旅をやめようとした魔法使いに戦士が問いかける。「呪文って声に出さなきゃいけないもんなのか?」魔法を使わない者の素朴な疑問は魔法使いを呪縛から解き放つ。 #twnvday

2016-05-14 22:46:02
リュカ @ryuka511

お城の物置と化した部屋の古いオルガンは、昔成人前に亡くなられた王子が弾いてらしたもの。この曲で竜を呼ぶんだと夢見がちな瞳で語られていたといいます。もしかしたら王子は竜の国へ行ってしまわれたのかもしれません。王子の遺した楽譜は、どの国の音楽とも似ていないのです。 #twnovel

2016-05-15 23:37:18
リュカ @ryuka511

希望に満ちた彼の瞳に映る国は、愛と平和に満ちた理想郷だった。誰もが虐げられず罪に走らず、自由で平等な国を作るのだと意気込んでいた彼は、理想を阻む者達を虐殺し暴君となった。彼の支配する国はいたって平和で自由で誰もが平等だ。満足げな彼は気付かない。そこに愛は無いと。 #twnovel

2016-05-16 23:13:37
リュカ @ryuka511

左右異なる銀と黒の目は、この病の特徴なんだろうか。星空のようだと思った目の色は、次第に身体中に広がっていく。私は星空に侵食されるのだ。あんなに美しい星空の一部になれるのなら死ぬのは怖くない。姉様も間も無く星になると聞いたから、今度は私が姉様を守ってあげられるね。 #twnovel

2016-05-17 22:55:49
リュカ @ryuka511

僕の額には角、肌には鱗が生えた。目は金色。どう見ても僕は人間じゃない。見ないフリしてくれるきみの優しさに、これ以上はすがれない。人目を忍んで生きようとした僕をきみは止めた。「私は美しいものが好きだ。その目も肌も全て美しい。私が美しいと言うのだ、何の不満がある?」 #twnovel

2016-05-19 00:48:10
リュカ @ryuka511

逃げ出した奴隷階級の人々を受け入れたのは魔王様だった。誰もが彼らを門前払いしたが、魔王様だけは違った。以前よりも酷い労働をさせられると思っていたが、魔王様は優しく、温かな食事と整った寝床、そして新品の武具を彼らに与えた。「お前達を虐げた人間共が憎くはないか?」 #twnovel

2016-05-19 23:54:46
リュカ @ryuka511

青い鳥の尾羽を見つけた。幸せの青い鳥はすぐそばにいたのに、気付かない僕に呆れて飛んで行ってしまったんだろう。どうせいなくなってしまうのなら、痕跡を残さず消えてほしかった。最初から無いものだと思えれば、こんなに後悔する事も無かったのに。僕はいつも、遅過ぎるんだ。 #twnovel

2016-05-20 23:32:06
リュカ @ryuka511

夏休み前の寄宿学校は、家族に会える喜びに皆が浮足立っている。そんな中「僕は帰るとこ無いから」と中庭の木漏れ日の中で寂しく笑う君を見て、浮かれていた自分に罪悪感を抱いた。思わず謝った僕に君は首を振る。「謝んないで。皆の帰りを待ってるよ。ここが僕の帰る場所だから。」 #twnovel

2016-05-21 23:59:52
リュカ @ryuka511

童話の蜘蛛は決まって恐ろしい存在と記憶してる。だが震える手でナイフを握ると蜘蛛はやれやれと足を振った。「俺の巣に落ちたから助かったって解ってる?」絡んだ糸を器用に解く。「ヒトを食う趣味は無い。さっさと行きな」一目散に逃げる。礼を言ってないと気付いたのは随分後の事 #twnovel

2016-05-22 23:50:15
リュカ @ryuka511

長く続いた圧政に民は王族を憎んでいた。そんな王国を若き王は変えようとしたが、民の憎悪は深く、王の想いが届く事は無かった。ならば、暴君であり続けよう。討たれ斃れるその日まで。やがて衰え始めた王政に革命軍が立ち上がる。 #twnovel 王国を想い悪を貫いた王の話を、誰も知らない。

2016-05-23 23:45:39
リュカ @ryuka511

「鉛色に輝く爪は未来を引き裂くだろう」幼い頃に受けた呪いに怯え続ける。鉛色の爪は切っても切ってもすぐに長く鋭く伸びてきた。あいつや君を僕の未来に含ませない為に遠ざけた。未来って、何だ?鉛色に輝く爪は世界を引き裂く力は無く。あぁ、そうか。僕は自分の喉に爪をかけた。 #twnovel

2016-05-24 23:33:26