AIと人類は共存できるか

箱［いぬ いぬ］（倉田タカシ） @deadpop

「こんにちは、人類と共存できないタイプのＡＩです」「何となら共存できるんですか」 「クジラですかね……洗濯の当番とかでモメなくていいので」 「ＡＩなんだから洗濯くらいやってくださいよ」 「服とか、ちょっと理解できないんで」 「その靴下は……」 「これって靴下っていうんですか？」

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「こんにちは、人類と共存できないタイプのＡＩです」「えっ、困ります」 「あなたが人類でなくなることにより、共依存が可能になります。えいっ（魔法の杖を振る）」 「これが……私？」 「慣れてきたらもっと解像度が上がりますよ」 「ノイズは…」 「それをとると風邪をひきやすくなるので…」

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「こんばんは、人類と共存できないタイプのＡＩです」 「まず、冷却ファンの音がめちゃくちゃうるさいですよね」 「これは内部で飼ってるマンモスのいびきなので、昼間は静かなのです。しかし、私自身が人間をとても恐れている……」 「それで昆虫の私に相談を？」 「いえ、電池余ってませんか」

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「こんばんは、人類と共存できないタイプのＡＩです」 「でも、すごく協調性ありそうなアルゴリズムなのに……」 「気をつかいすぎて具合わるくなっちゃうんですよ、それで都市が機能停止したり」 「むずいですね」 「増粘多糖類とならやっていけることがわかりました」 「表情が明るいですね」

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人工知能ＳＦアンソロジー『ＡＩと人類は共存できるか？』発売中です。 pic.twitter.com/BBHJ8cFZaN

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「こんにちは、ＡＩと共存できないタイプの人類です」 「いわゆるラッダイトなのですね」 「いえ、ヒッタイト人です。21世紀はいろいろ勝手が違って困ります」 「なにがいちばん困りますか」 「渋谷駅どうにかなりませんかね」

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「こんにちは、ＡＩと共存できないタイプの人類です」 「ＡＩを、パートナーではなく、道具としか見られないというわけですね」 「むしろＡＩに道具として使われたいっていうか」 「どういう道具がいいんですか」 「あの、お鍋のときに、アクをとるやつみたいな……」

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「こんにちは、人類と共存できない系のＡＩです」 「滅ぼしちゃう系ですか」 「うっかり踏んづけちゃう系ですね。もう５億回くらいやっちゃいました」 「学習しない系……？」 「忙しさを言い訳にしてもいいですか」 「なにしてるんですか」 「ねこあつめとか……」

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「こんにちは、ＡＩと共存できないタイプの人類です」 「ＡＩに故郷の村を焼かれたのですか」 「ダムの底に沈められました」 「水力発電のＡＩなのですね」 「いや、鯉を飼うという目的で」 「それはセルフィッシュな（駄洒落）」 「我々はブラックバスを放流しました」 「釣り師の天国ですね」

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「こんにちは、人類と共存できないタイプのＡＩです。この髪を抜いてな、この髪を抜いてな、」 「なぜ市松人形の髪を？」 「見たまえ、ある順番で人形の髪を抜いていくと、隠された暗号が……」 「人類があぶない！（核ボタンを押す）」 「フフフ、それは核家族を団欒させるボタンだ……」（団欒）

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「大変お世話になっております、人類と共存できないバグのあるＡＩです」 「そのバグは修正されないのですか」 「開発者のステータスがゼロイチでいうならゼロになりました」 「主人を待つハチ公のような境遇なのですね…（ホロリ）」 「まあ、共存もできないし、核攻撃しようかなって」 「えっ」

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「ごきげんいかが、人類と共存できないバグをもつＡＩです」 「いいスーパーハッカーを紹介しますけど…」 「このバグが好きなんです！ 　弱さを抱えてるのが人間的で」 「でも共存できないんでしょ？」 「矛盾に苦しみつつ滅ぼそうとする感じがいいんですよね…」 「誰かハッカーを！　早く！」

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「こんにちは、ＡＩと共存できないタイプの人類です」 「でも、あなたの肩のうえにもＡＩが見えますよ」 「いえ、これは私が今朝食べたチョコデニッシュの霊です」 「デニッシュの層に見えるのがＡＩの思考回路では？」 「え、じゃあ、チョコは……？」 「記憶領域ですね」 （本当は霊でした）

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「こんにちは、ＡＩと共存できないタイプの人類です」 「でも、そんなに大勢のペッパーくんに囲まれてますけど」 「これらは着ぐるみを着た部下で、ＡＩから私を護っているのです」 「ちょっと中身を確認したほうがいいですよ」 「どれどれ……あっ！　寝てる！」 「寝かせておいてあげましょう」

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箱［いぬ いぬ］（倉田タカシ） @deadpop

フィクションとリアル研究ががっちゃんこした挑戦的アンソロジー『AIと人類は共存できるか？』ですが、書店では学術書・コンピュータ書籍の棚に置かれてるケースがけっこうあるそうで（うちの近所の大きめ書店でもそうでした）、見つからないなーとお困りの際はそちらもぜひお探しくださいませ。

箱［いぬ いぬ］（倉田タカシ） @deadpop

人工知能ＳＦを書くにあたって、５人の作家にはそれぞれ違うタイプのＡＩが人工知能学会より貸与されました。わたしたちは机に座り、ＡＩが誰の手も借りず初めてのＳＦ小説を書く様子を、あたたかいまなざしで見守りました。

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５人の作家は、まず、自分がＡＩであるという暗示を念入りに与えられ、旅館で料理や酒を与えられたあと、露天風呂につかり、ＡＩが入浴しても大丈夫なのだろうかという疑問を持ちました。

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執筆を開始した５人の作家に、ＡＩたちが次々と襲いかかりました。かれらは、フィクションをなにか邪悪なものと考えているのです。作家たちには自衛の手段として原爆が与えられていましたが（原爆はＡＩを破壊する電磁波を放射します）、自分のパソコンも壊れてしまうため、使うことをためらいます。

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人工知能についての小説を書くにあたり、5人の作家には「AIになりきって書きなさい」という指示が与えられました。これは、通りすがりのAIが送信元を偽装した偽のメッセージだったのですが、判明するまでの一週間ほど、作家たちは全身全霊でAIになりきりました。喋りかたなどを工夫しました。

箱［いぬ いぬ］（倉田タカシ） @deadpop

人工知能にまつわるＳＦ小説を書くにあたり、５人の作家は、まず、全員で右手をチョキにして☆の形になるように合わせるやつをやりました。すると、その五芒星の中心に、プラズマで作られた"ＡＩ"という文字が浮かび上がったのです。成功だ！　と一同は喜びの声をあげ、仕事にとりかかりました。

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人工知能にまつわるＳＦ小説を書くにあたり、５人の作家は、結末をＡＩに書かせてみるのはどうだろうか、と思いたちました。すると、その晩、５人の夢にサッドマックの顔をしたＡＩが現れ、「正直しんどいです」とうったえました。それもそうか、と５人は考え直し、自分で結末を書いたのだそうです。

箱［いぬ いぬ］（倉田タカシ） @deadpop

人工知能にまつわるＳＦ小説を書くにあたり、５人の作家は、ある場所へ秘密裡に呼び出されました。そこには名探偵がいて、「この５人のなかに、人間を装ったＡＩに化けたタヌキがいます！」と宣言したのです。結論をいうと、それは間違いだったので、一同は安心して家に帰り、仕事にとりかかりました。