壊れたドンとくるしいヒラくん

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さうす @sa__za_n_

ドンの愛を一度は受け取り確かに恋人関係になっておきながら、しばらくして一緒にいることができないと感じたヒラくんがドンにもらった誓いを置き去りに別の組織に拾われることになり、その後ドンの組織に別の組織にいることを知られ「あなたを責めることはできない……しかし、あなたはドンを殺した」

2016-12-19 01:32:06
さうす @sa__za_n_

と言われ、ヒラの組織との会合の場にあらわれたドンの姿にゾッとする話。 全てを諦め、全てを捨てた人間はあれほど美しくなるのかとカラ松は総毛立った。穏やかに弛んだ目元は何も映さず、口元は柔らかに微笑むだけで表情はなく、何より彼の全てから、カラ松の知る彼らしさが全て削ぎ落とされていた。

2016-12-19 01:33:54
さうす @sa__za_n_

「ド、ン……」 カラ松の声はみっともなく震え、あまりに小さかった。その声に彼の顔がカラ松に向く。 「久しぶりだな」 それは知り合いへの挨拶に他ならなかった。貼り付けられた笑みを向けられ、カラ松の心臓が嫌な音を立てて軋む。 「元気だったか」 「あ、ああ」

2016-12-19 01:36:29
さうす @sa__za_n_

自分を置き去りに逃げた相手への感情はそこにはひとかけらも含まれていなかった。 罵倒も殴打も、殺されることすら覚悟していたはずなのに、それ以上に残酷な結末にカラ松は今自分が立っていることさえ信じられなかった。

2016-12-19 01:38:06
さうす @sa__za_n_

彼の後ろに立つ眼鏡の青年が、哀しげな表情でカラ松を見つめた。 ――これがカラ松の導いた結果だった。

2016-12-19 01:39:17
さうす @sa__za_n_

ってあとに、何だかんだでヨリ戻してもう一度くっつくけど、それからはもう二度と始めの時のような何もない甘やかさは無くなり、ドンはヒラの永遠を信用しなくなる。ヒラはドンのことはちゃんとずっと愛してるのでそれを教えようとするんだけど、やっぱりもう一度信用されるには長い時間がかかる話。

2016-12-19 01:41:14
さうす @sa__za_n_

「……いちまつ、いちまつ……」 まるで人形を抱き締めているようだった。彼は何をされているのかわからないような、変わらぬ無表情でカラ松の抱擁を受け入れたが、その腕がカラ松の背に回ることはなかった。嘗ては逆だった。彼の方からカラ松に抱き着き、カラ松は忙しさを理由にそれを無下に扱った。

2016-12-19 01:44:29
さうす @sa__za_n_

あの時彼はどれ程胸を痛めたのか。どれほど自分は彼の心を細かに傷付けたのだろうか。今更になって彼の好意に胡座をかいていた嘗ての自分を殴り殺したくて仕方がない。 「好きだ、大好きだ。お前しかいないんだ……」 肩口に埋まる彼の頭が微かに震える。 「グラーツェ」 その謝礼に涙が溢れた。

2016-12-19 01:47:52
さうす @sa__za_n_

「お前を尊重することはできなかった。お前のために全て捨てることもできなかった。そのために、お前の意思を無視してこの国に連れてきたんだから、お前が俺に愛想を尽かすのもあたりまえだ。指輪も、だから棄てていったんだろう? 当然の報いだよ、おれには」

2016-12-19 12:15:51
さうす @sa__za_n_

「それでも……」ドンは目を伏せて自分の左手の小指に視線を落とす。 「これをおれが持っていることだけはどうか許して」カラ松には彼にかける言葉が見つからなかった。どれほど言葉だけを重ねても、彼には通じないことが痛いほどわかってしまった。彼にはもうあの日の永遠は見えなくなっていた。

2016-12-19 12:22:48
さうす @sa__za_n_

カラ松にも一度は見えなくなっていた。彼の勝手に怒り、彼の側に自分がいることが耐えられない弱い自分が恐ろしくなって一度は彼の元を逃げ出した。 その弱さになぜ向き合おうとしなかったのだろう。向き合わなければならなかった。これほど彼を殺してしまう前に。

2016-12-19 12:27:05
さうす @sa__za_n_

「幸せになってくれればいいんだ。そこにおれがいないことなんて当たり前でいい。これからを生きていくためには十分な思い出を貰ったから。もういいんだよ、マツノ。これ以上おれの我儘に付き合わなくていいよ。ずっとごめんね、お前は優しいから、断りきれなかったんだよね。もう大丈夫だよ」

2016-12-19 12:31:02