日露首脳会談で日本がロシアに外交的敗北を喫したのは、北方領土が還ってくる未来しか認められない心理的バイアスがあるから

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生命情報保存研究所 @rodan670

12月15.16日に行われていた日露首脳会談では、北方領土問題に歴史的な進展、具体的には色丹、歯舞2島の変換へ向けた何らかの動きがあるものと囁かれていたが、結果は肩透かしに終わった。なぜこのような期待がまかり通ったのか。

2016-12-19 16:27:01
生命情報保存研究所 @rodan670

考えられる理由は大きく分けて二つ。 まず安倍総理とプーチン大統領との個人的な信頼関係が、これまでの首脳間になく強いものとされたこと。どちらも自国内で高い支持率を有し、特にプーチン大統領は半ば独裁に近い辣腕をもってロシアの舵を取れる力を持っているため

2016-12-19 16:31:50
生命情報保存研究所 @rodan670

両国間の70年にわたる懸案事項に大胆な形で決着をつける事も可能と考えられた。 もう一つは国際舞台でロシアが立たされた苦境。 2014年に生じたクリミア侵攻にてロシアは世界中から非難を浴び、G8の議場から締め出された。さらに原油価格の下落で通貨ルーブルが暴落し

2016-12-19 16:41:39
生命情報保存研究所 @rodan670

経済的にも厳しい状況に陥った。すなわちロシアは弱った。ここに漬け込めば2島返還もあり得るだろうと日本側は腹積もりした。G8の日露を除く西側国家は道義に厳しく、クリミアの問題が現状のままならロシアは取り付く島がない。そこで日本が唯一の仲介役を荷い、ロシアの立場を守るとともに

2016-12-19 16:47:03
生命情報保存研究所 @rodan670

経済協力の名の下に札束をちらつかせれば相手は落ちるであろうという考え方である。 しかしその目論見は外れた。プーチンには2島すら返す意思はなかった。なぜこのような読み違いが生まれたのか?原因は日本人とロシア人がそれぞれ抱く世界のストーリーの違いとこれがもたらすバイアスにある。

2016-12-19 16:54:50
生命情報保存研究所 @rodan670

敗戦により日本はサハリンと千島列島の領有を放棄しソ連に明け渡した。同地帯へのソ連への侵攻は、8月15日の無条件降伏後に行われたものも多かったが、比較的素直にこれには応じた。しかし北方4島については、ほぼ一貫して認めていない。

2016-12-19 17:03:25
生命情報保存研究所 @rodan670

これは千島列島の、少なくとも北方4島部分については、日本「固有」の領土であるとするストーリーを、日本全体が抱いているためである。ある国にとって「固有」の領土とは何か、特に千島のような他国との隣接地帯においてそれがどこまでであるかを規定するのは難しいが

2016-12-19 17:08:36
生命情報保存研究所 @rodan670

あくまで北方4島は日本固有の領土であるとする答えは、恐らく日露間における最初の境界の取り決め、択捉島とウルップ島の間に国境を儲けるとした1855年の 日露和親条約によって出された。

2016-12-19 17:15:13
生命情報保存研究所 @rodan670

また同条約でサハリンはどちらの領土でもない両国民混住の地とされ、その後両国の国境は樺太・千島交換条約やポーツマス条約等により、北方領土以北の千島やサハリン上で移り変わりながら最終的に今の形に至る。 この視点から見ると、北方領土以北の千島やサハリンは一時日本に属したことがあるものの

2016-12-19 17:16:57
生命情報保存研究所 @rodan670

日本のすべてのストーリーと連続性を有しているとは必ずしも言えない継ぎはぎ的な領土であったということとなる。ゆえに日本人はここにはあまり固執しない(中にはあくまで北方4島のみならず千島サハリンの返還を叫ぶ声もあるが)

2016-12-19 17:21:52
生命情報保存研究所 @rodan670

これに対して北方4島は、最初に国境が引かれた段階から日本側にあった、すなわち日本という国の歴史、ストーリーとずっと連続性を持ってきたものととらえられる、その一部である。国のストーリーは時間の集積の上に作り出された資産であり、精神的には肉体の一部にも近い所がある。

2016-12-19 17:25:36
生命情報保存研究所 @rodan670

よってこれを「不当」に占拠されているということになれば、体の一部を盗み取られたような違和感に人は襲われ、これは絶対に取り返されなければならない、取り返されるのが当然であるとする自己回復バイアスが生まれる。

2016-12-19 17:29:10
生命情報保存研究所 @rodan670

すると領土交渉状で少しでも自分たちに有利な事項(両国首脳の仲、ロシアの苦境等)が見出されると、これはもう今度こそ還ってくるに違いないと、過度な思い込みが育つこととなる。 一方ロシア側の視点で見るとどうか。 ロシアは大戦の結果武力で北方領土を奪い取った。

2016-12-19 17:31:45
生命情報保存研究所 @rodan670

ロシアにとってこの地域は固有の領土というより獲得物である。日露戦争に勝利した結果日本領となった、日本にとってのサハリンと同様の存在であるといえる。ゆえにソ連、あるいはロシアは、北方領土をあくまで自国領土としつつも、

2016-12-19 17:42:26
生命情報保存研究所 @rodan670

日本の対応(日米同盟の破棄)如何によっては、2島だけ「譲渡」してやってもよいとの建前を見せることがある。 とはいえ生物にとって領土=縄張りとは、最も原始的な財産である。 より多くの食料を得られる土地を手にできたものが生き残り、子孫を残せ、ゆえに生き物は縄張りを巡って命がけで争う。

2016-12-19 17:44:17
生命情報保存研究所 @rodan670

その領土を平時において他者に明け渡すということは、人間の深層心理的な問題としてあり得ない。弱ったロシアに金を積めば、という考え方があるが、どれだけ積もうと恐らくこの問題は金では動かない。 人は自分にとって都合のいいことは好意的に受け取る傾向があるので

2016-12-19 17:50:36
生命情報保存研究所 @rodan670

北方領土強奪の過程に多少問題があろうと(無条件降伏後の侵攻)、ロシア人がこれを怪しむことはない。自分たちが常に正しいというバイアスのもとに彼らのストーリーは是正され補完される。固有の領土かというと微妙な、戦争の結果付加された継ぎはぎ的獲得物であっても当然に自分たちの物なのである。

2016-12-19 17:56:27
生命情報保存研究所 @rodan670

新たなる戦争で日本に負けたわけでもないのに、ロシア側に日本へ領土を還さなければならない理由は何一つない。 しかしこれとは逆に、北方領土は当然にして還ってくるものと認識している日本側は、ロシアは領土返還に応じてもよいと考えていると思い込む。

2016-12-19 18:11:10
生命情報保存研究所 @rodan670

同じく領土問題を抱えている中韓と異なり、日露両国の国民間にさしたる憎悪感情も渦巻いていない現実が、ロシア組し易し説にさらに拍車をかける。 しかし別に不仲ではなかろうと、一度自分たちのものとした土地=縄張りを、自らの意思で手放す国はなかなか考えられない。

2016-12-19 18:14:56
生命情報保存研究所 @rodan670

日本はクリミアを強奪し、国際社会的に苦境となったロシアを見て好機ととらえた。しかし21世紀の世の中で、時代錯誤的に武力で他国の領土を奪い取る、縄張りへの強い執着心を示したプーチンから土地を取り戻す不可能性のほうをむしろ汲み取るべきだった。

2016-12-19 18:18:52
生命情報保存研究所 @rodan670

戦後武力ではなく経済力で国際社会に存在感を示してきた日本は自らの金の力を過信する傾向があるが、生物学的事情に基づく人間の深層心理が障壁となり、領土問題は金銭では解決しない。であれば現実的には次なる戦争に勝つことくらいしか奪われた領土を取り戻す見込みはないということになる。

2016-12-19 18:27:27
生命情報保存研究所 @rodan670

とはいえ、領土=縄張りの深層心理的な価値は日本にとっても同様のものである。加えて、日本の場合それが古来からの固有の土地であったという、時間的資産価値もまた北方領土へは抱いている。精神的に自己の一部と化したこの領域を諦めることは、自分の指を自ら切り落とすがごとき苦痛を伴う。

2016-12-19 20:04:35
生命情報保存研究所 @rodan670

物理的に4島をロシアに支配されている状況であっても、日本が精神的な意味でこの地を失うのは、あくまで自らその帰還可能性を無と捕らえた瞬間である。ゆえに日本側は諦めることはできない。また、じっとしていれば4島がロシア領であるという既成事実化が進むだけなので、

2016-12-19 20:09:08
生命情報保存研究所 @rodan670

常に行動を試みなければならないという焦燥感にもかられる。日本はとにかく返還を目指して動き出さなければならない。返還は必然と感じる心理がそうさせる。対するロシアには応じる理由がない。この時点でロシア側が心理的に優位に立っている。結果その中で進められる交渉は、ロシアに有利なものとなる

2016-12-19 20:11:58
生命情報保存研究所 @rodan670

今回の首脳会談では、北方領土は1島として還らず、4島の共同開発に関する合意は取り付けられたものの、一方的に3000億を出資させられ、また開発はロシアの法律下で行われるとするプーチンの主張を退け切れなかった点で、同地がロシアに属するという実情の既成事実化をさらに強める結果となった。

2016-12-19 20:26:25