天上院照樹の憑魔録 1~Another END~

これは、ある少年のあったかもしれないもう一つの終わり。 もう一つの、幸せの形。
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たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

退魔なんて、最初っから俺にはできない事だったんだ。 照樹君の心は、恐怖と諦めに支配されていました。 だったら……もう、忘れたい。今日の事……なかったことに、したいよ。 そんな気持ちが、勝手に言葉になってこぼれてきます。それは、すっかり弱気になってしまった発言です。 #憑魔録

2016-11-29 21:17:52
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

ですが、照樹君を誰が責められるというのでしょう。照樹君は、死ぬような思いをしたのですから。 それも……後一歩の所で、本当に死んでしまっていたような。 「……そうかい」 それを聞いた読詠の表情は、とても穏やかなものでした。それを聞きたかった、そう言わんばかりの安堵でした。 #憑魔録

2016-11-29 21:21:47
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

照樹君は、理解しました。 自分はずっと、この人に守られていたのだと。そして、これからもきっと母は、自分の事を守り続けてくれるのだろうと。不機嫌そうに睨みつけて、けれど決して目を離さないで。 そんな親がいてくれる事がどれだけ嬉しいか、照樹君はようやく気づいたのです。 #憑魔録

2016-11-29 21:22:14
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

「じゃあ、早速だけどもう行くよ。あんたはもう眠りな、そうすれば全て……忘れられるから……」 言うが早いか、読詠の手が照樹君の方へ伸びます。それは、先ほどまで武器を握っていた手。ですが、照樹くんはもう知っています。その手の中にある、確かな優しさを。 #憑魔録

2016-11-29 21:23:38
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

『ふむ、これで次は数十年後というところかの……じゃあの、照樹。短い間じゃったが、楽しかったぞ……』 すると、頭の中にそんな声が聞こえてきました。 ミコトはミコトで、照樹君に対して思うところがあったようです。 最後まで、彼女が何を考えているのかは良くわからないままでした。 #憑魔録

2016-11-29 21:24:53
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

けれど。そんな彼女へ、優しい母へ。 照樹君は、忘れる前に言いたい事がありました。 ……ありがとう。 目をつぶっている照樹君には、わかりませんでしたが。ミコトも、読詠も……嬉しそうに笑っているような、そんな気がしました。 #憑魔録

2016-11-29 21:29:20
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

ーーーーー 翌朝、目を覚ました照樹君からは昨夜の記憶が全て消えていました。 読詠には昨夜の事を覚えているか、と何度も聞かれました。しかし、照樹君は何のことだかさっぱりわからず、しきりに首をひねるばかり。 ただ……言われて見れば、何かが足りないような気はしていたのですが。 #憑魔録

2016-11-29 21:30:31
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

それが演技ではないことを確信して、読詠はその日以降は何も口にする事はなくなりました。そうして、照樹君は元通りの日常に戻ったのです。 それからの照樹君の人生は、怪異も妖怪もない平和そのものでした。 #憑魔録

2016-11-29 21:31:20
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

母親の教え通り蔵には入らず、文句を言いながらも母と一緒に服を選んで。幸運のお守りだと言われて渡されたものを、肌身離さず携帯するようになって。母親のいうことは聞いておいた方がいい気がして、大分素直に話を聞くようになって。それからの二人の関係は、絵に描いたように良好でした。 #憑魔録

2016-11-29 21:31:56
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

親を思いやる良い子になったからか、その後彼は人並みの幸福を手に入れました。 少しずつ疎遠になっていった幼なじみとの失恋を経ながら、後に伴侶となる女性と新たなる恋に落ちました。不況の中で定職にもありついて、暮らしの中で子供をもうけて。平凡で、ありふれて、とても輝いた人生。 #憑魔録

2016-11-29 21:33:39
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

そんな一生を、照樹君は過ごしました。 家族に囲まれて、幸せに彼の生涯は幕を閉じました。 とても幸せに、終わりました。 #憑魔録

2016-11-29 21:35:15
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

――――何かが、足りない。 しかし、そんな思いは……人としての生を終えるまでの間、消える事はありませんでした。 ーーーーーー Another end 静寂 #憑魔録

2016-11-29 21:36:40

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