桝田省治さんによる「桃鉄が繰り返しかつ長時間のプレイに耐える理由」

12/29 桝田省治さんより指摘を受けましたので、デコレーションを外しました。
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桝田省治 まとめサイト無断転載お断り @ShojiMasuda

桃鉄2017も無事に発売したので、調整中に考えた「桃鉄が繰り返しかつ長時間のプレイに耐える理由」を忘れないうちに書く。「長期間運営するとパラメータのインフレでバランスがぐだぐだ」「初心者と上級者の差が開く一方」とお悩みのスマホやPCゲームの開発者にはヒントになるかも。#桃メモ

2016-12-27 00:54:43
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桃鉄が繰り返しかつ長時間のプレイに耐える理由を3つ述べたのちに、それらを踏まえて演習の代わりにスマホやPCゲームの新しい企画を提案する。けっこう長くなる予定なので興味のある方だけよろしくお付き合いください。#桃メモ

2016-12-27 00:55:25
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(1)まず桃鉄のゲームデザインの特異性。設定期間終了時に参加プレイヤーの中で「総資産が最大」という全体の勝利条件と、指定の目的地に一番乗りするという各局面の勝利に大きく影響する諸条件(所有するカード、目的地までの距離など)が必ずしも一致しない。これはかなり珍しい。#桃メモ

2016-12-27 00:56:08
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たとえば、最終目的である竜王討伐のために勇者はレベルを上げてより強い剣や鎧を装備する。その手段はモンスターを倒し経験値やお金を得ること。これをひたすら繰り返す。ゲーム全体と各局面の勝利が一直線に連続し、各資源が完全に循環していて美しい。これが通常のゲームデザインだ。#桃メモ

2016-12-27 00:56:57
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ところが桃鉄は、たとえるならラスボスの竜王討伐と中ボスの打倒に必要な戦闘力が同じ性質ではない。見通しのいい連続性や完全な循環からは程遠い。おまけにすべての剣や鎧、魔法に至るまでが消耗品。新しい目的地という中ボスが永遠に登場する。と書けば桃鉄の特異性がわかるだろうか。#桃メモ

2016-12-27 00:57:47
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結論。桃鉄では全体と各局面での勝利が大して関連がない。派手にインフレする収支や値段に目を奪われるが、目的地を目指す各局面でのトップと最下位のプレイヤーの戦力は何年たっても決定的な差が生じない。ゆえに誰もが常に局地戦では勝利の可能性をもち、モチベーションが保たれる。#桃メモ

2016-12-27 00:58:39
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桃鉄では全体と各局面での勝利が一致せずねじれている。部分と全体をつないでいるのが貧乏神のさまざまな破壊や妨害。それに目的地に誰かが一番乗りした時点で最も遠いプレイヤーに貧乏神がつくという、単純明快で絶対的なルール。この二つがないと桃鉄の特殊なバランスは成立しない。#桃メモ

2016-12-27 00:59:24

(2)

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(2)先にも触れたが、桃鉄では新たな目的地が指定されることで常に「状況のリセット」が起きる。これが繰り返しかつ長時間のプレイに耐える理由その2だ。最も似た構造をもつゲームは麻雀だろう。だが麻雀は完全にリセットされるが、桃鉄では貧乏神というマイナスが継承される。#桃メモ

2016-12-28 00:15:44
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桃鉄では新しい目的地が提示されることで「状況のリセット」が頻繁に起きる。その瞬間からゴールまでのルートや距離、赤青黄など効果が異なるマスの構成が一新され、最適な戦術も変わる。同じマップでありながら、新しいステージやダンジョンが間断なく出現するようなものだ。#桃メモ

2016-12-28 00:16:38
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「状況のリセット」の中でも最大級の要素は、プレイヤーのひとりが貧乏神という災厄を背負ってスタートすること。貧乏神がつく条件は、誰かが前の目的地に一番乗りした時点でそこから最も遠くにいた、というたったそれだけの理由だ。その判定には資産の多寡は一切関係しない。#桃メモ

2016-12-28 00:17:24
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貧乏神の悪行は容赦がない。プレイヤーがゲーム全体の勝利を目指し積み上げてきた資産を、局地戦に一度負けただけで、最悪の場合は数ターンで無に帰す。もちろん発生する確率はとても低いが、無視できない程度に高い。これは長時間のプレイを前提に設計されたゲームでは稀有な特徴だ。#桃メモ

2016-12-28 00:18:01
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加えて、貧乏神のもうひとつの性質。貧乏神がついたプレイヤーが他のプレイヤーを追い越すか同じマスに停まれば、この災厄は簡単に他に移る。これを防ぐには貧乏神がついたプレイヤーから距離をとること。だがプレイヤー全員が同じ目的地を目指すので、その間の距離は次第に縮まる。#桃メモ

2016-12-28 00:18:44
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貧乏神のなすりつけを恐れて目的地に近づかなければ、新しい目的地が提示されたときそのプレイヤーに貧乏神がつく。局地戦の勝利によるリターンと貧乏神がつくリスクは常に表裏一体だ。どう差配するかプレイヤーはその判断から逃れられない。この仕組みにより緊張と緩和が繰り返される。#桃メモ

2016-12-28 00:19:26
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少し雑談:目的地と貧乏神が生まれた経緯。第1作のFC版の桃鉄にはどちらもなかった。発売後さくまさんの感想「桃太郎ランドを買うためプレイヤー全員が自然に岡山に集まってくる終盤が熱い。あれが最初から何度も起きれば」から、目的地に一番乗りなら報奨金、遅れた者には罰(貧乏神)を。#桃メモ

2016-12-28 14:24:54

(3)

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(3)桃鉄はボードゲームもしくはパーティゲームに分類される。当然ながら他の人間と一緒に遊ぶ。言い換えれば、他の人間がゲームの進行に介入することが前提の設計だ。これが繰り返しかつ長時間のプレイに耐える理由その3。他の人間による介入には、大別し2つの意味がある。#桃メモ

2016-12-28 23:41:13
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桃鉄には固定のシナリオがない。サイコロを振って進み、乱数を使ったイベントがほとんど。これらは次々に新しい状況を発生させる。先の展開が予想できないので飽きにくい。中でも最大の不確定要素が他のプレイヤーの行動だ。人間はあまり合理的ではなく必ずしも最適な選択をしない。#桃メモ

2016-12-28 23:42:03
桝田省治 まとめサイト無断転載お断り @ShojiMasuda

「こうなったらいいな」「ああなったら嫌だ」など根拠が薄い期待や不安。偶然が重なって起きた成功や失敗の記憶。人間は未来や過去の影響のもとに現在を判断しがちだ。判断基準は人それぞれ。それは長所であり弱みでもあるが、ようするに人の行動は先が読めずゲームの展開を豊かにする。#桃メモ

2016-12-28 23:42:45
桝田省治 まとめサイト無断転載お断り @ShojiMasuda

他の人間と一緒に遊ぶことのもうひとつの意味。たとえば、同じマップ内に自分と同等の知能や体力をもつ敵が何体もうろついていて常に隙をうかがっている。そのうちの1体はいつ破裂するかしれない強力な爆弾を抱えていてどんどん近づいてくる。この地獄絵図さながらの状況が桃鉄の日常だ。#桃メモ

2016-12-28 23:43:25
桝田省治 まとめサイト無断転載お断り @ShojiMasuda

おまけに自分と同等の知能や体力をもった敵は、トップのプレイヤーを蹴落とすためなら目配せひとつで徒党を組む。さらにはさっきまで味方だったはずが「この状況では致しかたない」などの言い訳ひとつで裏切る。それも何度もだ。実に楽しいね。他の人間と遊ぶということはそういうこと。#桃メモ

2016-12-28 23:44:10
桝田省治 まとめサイト無断転載お断り @ShojiMasuda

〈まとめ〉桃鉄が繰り返しかつ長時間のプレイに耐える理由3点。 (1)全体と部分の勝利要件が一致しない。その結果、局地戦では誰もが勝利する可能性をもちつづけモチベーションが保たれる。 (2)状況のリセットが頻繁に発生することで、局地戦の勝利条件が変わり優劣が逆転する。#桃メモ

2016-12-29 20:14:57