2016年12月28日

大正期の若手日本画家の実力

元『芸術新潮』編集者でローティーンファッション誌『nicola』初代編集長を務めた元新潮社編集者の宮本和英氏による国画創作協会系を中心とする大正期若手日本画家の実力の凄さに言及した一連のツイートをまとめました。この一連のツイートが行われたのは2010年に練馬区立美術館で開催された「稲垣仲静・稔次郎兄弟展」の頃です。氏に言わせると「戦後のチャチな現代日本画とはまったくの別物」とのことです(「チャチな現代日本画」とはおそらく東山魁夷氏らのことを指しているのでしょうが)。
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宮本和英 @kazmiyamoto

大正日本画1 80年代の半ば頃、僕は大正期の日本画発掘に熱中していた。今でこそ近代日本美術史の中で大正期の日本画は絵画芸術の最高の時代と認識されてきたが、当時はほとんど顧みられることがなく、その実態も不明のことが多かった。近い過去ほど分かりにくくなってしまうものなのです。

2010-09-26 01:33:36
宮本和英 @kazmiyamoto

大正日本画2 83年に田中日佐夫氏の「日本画 繚乱の季節」という労作が出版され、大正期の、主に京都の画家達の画業を再評価する画期的な論考が世に出た。僕の全く知らない世界が紹介されていて、むさぼり読んだ。

2010-09-26 01:41:26
宮本和英 @kazmiyamoto

大正日本画3 高校生の頃から美術を志し東京芸大の芸術学科を出て「芸術新潮」の若手編集者をしていた僕自身が全く知らなかった。美術的環境の中にいて聞いたことさえなかったのだから、一般に知る人はほとんどいなかったと思う。田中先生にそう感想を述べたら、みんな忘れられてしまったんですと。 

2010-09-26 01:49:32
宮本和英 @kazmiyamoto

大正日本画4 そこから大正期の絵画作品をひたすら見て歩くことに熱中した。同時に戦前の資料をあさり、古い印刷資料等で大正期の若手画家達(ほとんどが画業を全う出来ずに消えた)の作品をあたり、これは凄い世界があったと確信を深めた。大正期の日本画作品にほれこんでしまった。

2010-09-26 01:54:11
宮本和英 @kazmiyamoto

大正日本画5 だいたい日本画などというものは古臭く、大家巨匠と世に喧伝されている戦後の日本画家は売り絵作家であり、芸術的にみるべきものなど何もないと思っていた当時の僕にとって、大正期に活動した主に国画創作協会に集った若手画家達の作品は、衝撃なんていう言葉では語れない驚きだった。

2010-09-26 02:01:11
宮本和英 @kazmiyamoto

大正日本画6 甲斐庄楠音や岡本神草らの舞妓を描いた作品などに鳥肌が立った。古い図録で見ただけでもそうなのだから、何とか実物を見たいとそればかり考えていた。 しかしほとんどが忘れられた画家達で、美術館などに収蔵されている作品は稀で展示されることなどまずはなかった。

2010-09-26 02:08:35
宮本和英 @kazmiyamoto

大正日本画7 とにかく1点でも展示される展覧会があればどこであろうと飛んで行った。初めて甲斐庄の裸婦の絵を見たのは大阪だった。古い図録で知っていた作品なのだがその絵の迫力から勝手に大きな作品だと思い込んでいて、実際は40×60センチほどの小品であったのに吃驚した。

2010-09-26 02:15:22
宮本和英 @kazmiyamoto

大正日本画8 甲斐庄の裸婦作品の小ささに吃驚しながら、その絵の凄みにしばし近づけず、本当に感激の余り鳥肌が立った。長いこといろんな絵を見てきたが、絵の前に立って鳥肌がたった経験は、その絵が初めてだった。

2010-09-26 02:20:14
宮本和英 @kazmiyamoto

大正日本画9 そんな風に熱中している僕に、田中先生が京都の星野画廊の星野桂三氏を紹介してくれた。星野氏は明治から昭和初期の忘れられた画家達を発掘紹介しているほとんど唯一の画商で、その世界の主のような人。星野氏のもとに足繁く通い色々な画家を教えてもらった。

2010-09-26 02:51:35
宮本和英 @kazmiyamoto

大正日本画10 もう一人、大正日本画再評価の原動力になった人が、笠岡市立竹喬美術館の当時主任学芸員だった上薗四郎さん(現・館長)だった。小野竹喬が国画創作協会の結成同人だという縁で、83年に「特別展国画創作協会の歩みⅠ」展を企画し、国画創作協会再評価の先鞭をつけた。

2010-09-26 02:59:34
宮本和英 @kazmiyamoto

大正日本画11 83年から数年間、僕は何かと星野さん、上薗さんと連絡を取り、「芸術新潮」誌上で大正期の日本画の紹介に努めた。そんな中で、実は昨晩テレビ東京の「美の巨人たち」で放映された稲垣仲静と出会った。

2010-09-26 03:06:11
宮本和英 @kazmiyamoto

大正日本画12 実はこのツイートをする気になったのは、テレビ東京で稲垣仲静を紹介していたからで、83,4年当時の僕は、国画創作協会に出品していた若手画家の仲静の事がずっと気になっていた。25歳で夭折し、遺作はほとんど分からなかった。いろいろ調べているうちに遺族の存在が分かった。

2010-09-26 03:18:54
宮本和英 @kazmiyamoto

大正日本画13 仲静の弟で染色作家として後に名を成した稔次郎の遺族のもとにどうやら作品が残っているらしいことが分かったので、星野氏を誘ってある日、京都の稲垣家を訪問した。当時、仲静の事など誰も知らなかったので、遺族ももちろん重要なものとは思っておられなかった。

2010-09-26 03:27:06
宮本和英 @kazmiyamoto

大正日本画14 僕が星野さんと伺った時、稲垣仲静の作品は未整理のまま、たまたま残っていたというような状態だった。でもこの時「太夫」「鶏頭」「軍鶏」などの作品を“再発見”した。後日僕はそれらの作品撮影を行い「芸術新潮」で紹介した。これらの作品はその後京都国立近代美術館に収蔵された。

2010-09-26 03:35:43
宮本和英 @kazmiyamoto

大正日本画15 あの時から25年余りたって、今年「稲垣仲静・稔次郎兄弟展」が京都国立近代美術館、笠岡市立竹喬美術館を巡回し、今、東京の練馬区立美術館で10月24日まで開催中である。

2010-09-26 03:44:32
宮本和英 @kazmiyamoto

大正日本画16 稲垣仲静の作品を発掘したように、他にも遺族を探し当てて見つけた作品がある。現在、京都国立近代美術館に収蔵されている木村斯光の大正10年頃の作品「花魁」もその一つ。古い京町屋の家で、この作品をみた時の感激は忘れられない。暗い家の中でこの絵が光り輝いていた。

2010-09-26 03:52:16
宮本和英 @kazmiyamoto

大正日本画17 大正期の日本画の特徴は、絹地に濃密な描法で描かれ、テーマは社会風俗から舞妓花魁、裸婦まで多様だが、とにかく全般的にデカダンな雰囲気が溢れている。絵に狂気が漂う。「狂」を感じさせるムーブメントが大正日本画の凄さだと思う。

2010-09-26 03:58:16
宮本和英 @kazmiyamoto

大正日本画18 大正期の日本画は、速水御舟や村上華岳を最高峰に、ものすごい数の若手家たちが裾野を作り、そのどれもが濃厚濃密な作品を残した。しかしその多くが画家として全う出来ない運命を歩む。売れる絵ではなかったし、戦争へと続いていく時代の波を乗り越えられなかったのかもしれない。

2010-09-26 04:02:46
宮本和英 @kazmiyamoto

大正日本画19 大正期の日本画が日本の、いや世界的にみても、絵画史上類い稀な豊かな時代であったことを、一編集者として駆け回って身をもって知った。大正という時代の不思議な熱気を、半世紀後に僕は体験した。寝ても覚めても大正期の日本画! 戦後のチャチな現代日本画とはまったくの別物です。

2010-09-26 04:12:27
宮本和英 @kazmiyamoto

稲垣仲静1 練馬区立美術館で開催中の「稲垣仲静・稔次郎兄弟展」を見に行った。前にも書いたが、大正期、国画創作協会で将来を嘱望されながら25歳で夭折した仲静は、長らくその存在が忘れられていて、今から25年ほど前に、僕が遺族の元を訪ねて再発見・発掘した思い出の日本画家です。

2010-10-11 01:48:52
宮本和英 @kazmiyamoto

稲垣仲静2 今展には、僕も1点出品している。絹本に鉛筆で描かれた裸婦素描。僕と一緒に稲垣家に行った星野画廊の星野桂三氏が86年に遺族の元にあった作品による展覧会を開き、その折、自分が再発見した画家の記念に求めた作品です。大正期の日本画家の技量がよく分かる習作です。

2010-10-11 01:54:11
宮本和英 @kazmiyamoto

稲垣仲静3 絹本に鉛筆で描くというのは、かなり難しい描法です。今の画家たちには無理でしょう。大正期の若手日本画家たちはそうした習作をかなり残しています。僕は日本画家が絹本に描かなくなって、絵が駄目になったと考えています。

2010-10-11 01:57:28
宮本和英 @kazmiyamoto

稲垣仲静4 現代の日本画は、塗り絵です。顔料を画面に載せていく描法ですね。一方、絹本に描くというのは、あくまでもドローイングであり、画家の技量や感性がストレートに伝わってきます。

2010-10-11 02:00:53
宮本和英 @kazmiyamoto

稲垣仲静5 今展には僕が見つけてきた仲静の代表作「太夫」「鶏頭」「軍鶏」そして多数の習作の他に、その後の25年間で発掘された作品がかなり集められ、仲静の全貌がようやく明確になりました。さらに嬉しかったのは、やはり僕が25年前に見つけた木村斯光の「花魁」が参考出品されていたこと!

2010-10-11 02:08:16
宮本和英 @kazmiyamoto

稲垣仲静6 仲静を始め、大正期の忘れられた若手日本画家達の凄さは当時の日本画のレベルの高さを示しています。この時代の日本画に比べたら、現代の日本画の売れっ子画家の作品など、絵と呼べるのかと思います。大正期を頂点として、日本画はどんどん駄目になりました。

2010-10-11 02:12:36
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