哲学者デビッド・ベネターの反出生主義:『Better Never to Have Been』読書メモ(セルフまとめ)

哲学者デビッド・ベネターの反出生主義の著作『Better Never to Have Been』を読書していた時のメモのセルフまとめです
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21世紀の道徳 @RiceDavit

…「子供を生み出さないという義務」が規範として浸透した後の世界では養子にできる子供も生み出されないので「子供を養育したいという欲求」が満たされることはなくなるが、親のそういう欲求と比較しても「生み出されることによって子供に生じる危害」の方が重大なので仕方がない、的な。

2016-12-25 00:16:50
21世紀の道徳 @RiceDavit

『Better Never to Have Been』4章読んだ。

2016-12-25 11:43:36
21世紀の道徳 @RiceDavit

ベネターは「全ての生には生まれてくるに価する価値がない」と主張しているので、「障害者の生には生まれてくるに価する価値がない、という主張は健常者の基準による一方的な決め付けだ」という障害者の権利運動の主張に同意する(健常者の生も障害者の生も生まれてくるに価する価値が等しくないので)

2016-12-25 11:45:40
21世紀の道徳 @RiceDavit

ベネターの議論では「生まれてくるに価する生」と「生きるのを継続するに価する生」の価値の基準は違うとされているんだけど、後者についても、ベネターは障害者の権利運動の主張に同意するところが多い。

2016-12-25 11:47:26
21世紀の道徳 @RiceDavit

健常者は障害者の生を不幸ななものだと判断して自分たちの生を幸福なものだと評価しがちであるが、それは自分の生の幸福度を実態以上に高く評価するという人間心理の賜物であり、健常者であっても不幸であることが多い。また、障害者の生の幸福度を様々な手段で上げることもできる。

2016-12-25 11:50:56
21世紀の道徳 @RiceDavit

しかしどちらにせよ生は惨めで不幸。

2016-12-25 11:51:11
21世紀の道徳 @RiceDavit

4章の続き。性や出産に関する伝統的な倫理は「セックスは出産を目的としたもののみ認められる」「出産はセックスを介したもののみ認められる(人工出産)などは認められない」とするが…

2016-12-25 12:49:49
21世紀の道徳 @RiceDavit

…ベネターの反出生主義では「セックスは出産を伴わないもののみ認められる」「出産はセックスを介したものだろうが人工出産だろうが全て認められない」となる。

2016-12-25 12:51:57
21世紀の道徳 @RiceDavit

出産っていうか"繁殖(reproduction)、繁殖的な(reproductive)"という言葉が使われているのだが。伝統的な倫理は「セックスは繁殖的である時のみ認められる」で、反出生主義は「セックスは繁殖的でない時のみ認められる」。

2016-12-25 12:54:23
21世紀の道徳 @RiceDavit

そもそも子供を生み出すことが非道徳的なので、世間一般の「子供を普通に生み出すことはよいが、臓器移植のためのクローン人間を生み出すことは悪だ」という倫理観も否定される。普通だろうがクローン人間だろうがどっちも非道徳的。

2016-12-25 12:55:42
21世紀の道徳 @RiceDavit

「生まれてくる子ども自身のために子どもを生み出す」ということは論理的に不可能、というのが根幹となる主張の一つ。

2016-12-25 12:56:12
21世紀の道徳 @RiceDavit

昨日も紹介したが、2章で論じられている、このページの第3節の部分が(lifestudies.org/jp/benatar01.h…)ベネターの議論の根幹で、あとは3章の「様々な基準から見ても生には快楽よりも苦痛の方が多い」と論じている部分も議論の前提となっていて…

2016-12-25 12:58:39
21世紀の道徳 @RiceDavit

…4章以降の応用的な話も2章と3章が前提となっている。

2016-12-25 12:59:07
21世紀の道徳 @RiceDavit

『ベネターによれば、害悪harmsと利益benefitsのあいだには、非対称性がある。それを示すために、悪いことの例として痛みpainsを考え、良いことの例として快楽pleasuresを考えてみる。このとき、次のことが言える。…

2016-12-25 13:02:54
21世紀の道徳 @RiceDavit

… (1)痛みが存在することは悪いことである。The presence of pain is bad. (2)快楽が存在することは良いことである。The presence of pleasure is good. この二つは議論の余地なく正しいとベネターは言う。…

2016-12-25 13:03:10
21世紀の道徳 @RiceDavit

… ところが、このような対称性は、痛みや快楽の非存在については見出されない。 …

2016-12-25 13:03:49
21世紀の道徳 @RiceDavit

…(3)痛みが存在しないことは、たとえその良さが誰によっても経験されていない場合であっても、良いことである。 …(4)快楽が存在しないことは、快楽を奪い取られたがゆえに快楽を経験できなくなるような人間がいないかぎり、悪いことではない。 … (字数のために英語部分は消している)

2016-12-25 13:04:16
21世紀の道徳 @RiceDavit

…(中略)…(3)と(4)について、それぞれベネターは注釈を付ける。まず(3)であるが、次のような反論があるだろうと彼は言う。すなわち、たとえ痛みがないのが良いことであったとしても、その良いことが誰によっても経験されないのならば、どうしてそれが良いことであると言えようか。…

2016-12-25 13:04:46
21世紀の道徳 @RiceDavit

…痛みがないことは、それを善として経験するであろうところの人間が誰も存在しないのならば、けっして良いことではあり得ないのである、と。…

2016-12-25 13:05:06
21世紀の道徳 @RiceDavit

… しかしそれは間違っているとベネターは言う。なぜなら、(3)は、現存する人間がもし仮に存在していなかったならばという「反事実的なケースcounterfactual case」についての文章だからである(p.31)。…

2016-12-25 13:05:22
21世紀の道徳 @RiceDavit

…まず現存する人間の痛みについて言えば、(3)が意味するのは、痛みが存在しないことが、たとえ痛みをいま感じている人間が存在しなくなることによってのみ達成可能だとしても、それは良いことであっただろう、ということである。このことは、いま現存する人間の利害によって判断することができる。

2016-12-25 13:05:43
21世紀の道徳 @RiceDavit

…次に、けっして存在することのなかった人間の痛みについて言えば、痛みが存在しないことは、もしその人間が非存在なのではなくて存在していたと仮定したらばその人間が判断していたであろう利害に基づいて、良いことと言える、というのが(3)の意味なのである。…

2016-12-25 13:06:01
21世紀の道徳 @RiceDavit

…(3)は、痛みが存在しないことが良いことであるところの現実の人間がいるというバカげた主張なのではない。』lifestudies.org/jp/benatar01.h…

2016-12-25 13:06:10
21世紀の道徳 @RiceDavit

…これが(3)についてのベネターの発想の核心部分である。言い換えれば、「生まれてこなければよかった」というのは、「本当は生まれてきていないのだけれどももし仮に生まれてきていたとしたら人は何を経験するだろうか」というものと、…

2016-12-25 13:07:23