哲学者デビッド・ベネターの反出生主義:『Better Never to Have Been』読書メモ(セルフまとめ)

哲学者デビッド・ベネターの反出生主義の著作『Better Never to Have Been』を読書していた時のメモのセルフまとめです
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21世紀の道徳 @RiceDavit

…「実際に生まれてきたときに人は何を経験するだろうか」というものを比較すれば、前者のほうがより良いと言える、ということだと主張するのである。』lifestudies.org/jp/benatar01.h…

2016-12-25 13:07:35
21世紀の道徳 @RiceDavit

長々と引用したけど、この(3)の論証が、ベネターの原文を読んでいる時にも理解しづらかった。

2016-12-25 13:08:43
21世紀の道徳 @RiceDavit

しかし、後半の選好功利主義による考えでは(3)も(4)もすんなり理解できた。

2016-12-25 13:12:39
21世紀の道徳 @RiceDavit

選好功利主義によるシナリオの説明は、シンガーの「台帳 debit」モデルのアレだよね。 nationalhumanitiescenter.org/on-the-human/2…

2016-12-25 13:13:30
21世紀の道徳 @RiceDavit

自分のメモによると、『実践の倫理』の第3版ではシンガーは選好功利主義を捨てて、選好から独立した客観的な価値があると認めることで、「人生においてどれだけの快楽や苦痛を感じるかに関わらず、存在するよりも存在しないほうが常に善い」といった悲観主義的な結論を躱しているが…

2016-12-25 13:17:37
21世紀の道徳 @RiceDavit

…それはそれとして仏教・ショーペンハウエル・ベネターが主張しているような悲観主義・反出生主義にも一理を認めている。 (davitrice.hatenadiary.jp/entry/2014/04/…

2016-12-25 13:18:37
21世紀の道徳 @RiceDavit

「このページ」って書き続けていたけど森岡先生のページ lifestudies.org/jp/benatar01.h…

2016-12-25 13:21:40
21世紀の道徳 @RiceDavit

反出生主義の作法 0dt.org/dogma.html こういうサイトもあるのか

2016-12-25 13:21:59
21世紀の道徳 @RiceDavit

『Better Never to Have Been』、5章は中絶の話。

2016-12-25 19:55:53
21世紀の道徳 @RiceDavit

何回か書いているが、ベネターは「生まれるに値しない生」と「生き続けるに値しない生」にはそれぞれ別の基準があり、後者の基準の方が閾値が高い、としている。

2016-12-25 19:57:57
21世紀の道徳 @RiceDavit

なので、他者に生をもたらすことは悪とはいえ、すでに生まれてしまっており「生き続ける」ことについての利益を持ってしまっている他者の生を奪うことも悪になる。すると、中絶はどう判断されるかというと…

2016-12-25 19:58:27
21世紀の道徳 @RiceDavit

…妊娠初期の、胎児の意識能力が発達しておらず生き続けることへの利益を持たない段階では堕胎は罪とならないどころか反出生主義の観点からすればむしろ積極的に堕胎するべきだが、妊娠後期で意識能力が発達した段階になると胎児も生き続けることへの利益を持つので堕胎は道徳的に問題ある行為となる。

2016-12-25 20:01:47
21世紀の道徳 @RiceDavit

堕胎が道徳的に推奨される段階と、道徳的に問題のある行為となる段階の間にはグレーゾーンがある。わざと堕胎を遅らせて、自分の胎児を「生き続けることへの利益を持たない段階」から「胎児も生き続けることへの利益を持つ段階」にして堕胎を回避しようとすることも問題のある行為かもしれない、など。

2016-12-25 20:03:48
21世紀の道徳 @RiceDavit

もちろん「胎児の意識能力とはなんぞや(科学的事実の話と哲学定義の話)」や「利益とはなんぞや」ということも細かく論じられているのだが、面倒くさいのでここで書いて説明するのはパス。

2016-12-25 20:04:57
21世紀の道徳 @RiceDavit

まあ哲学とか倫理学的には「胎児の意識能力とはなんぞや(科学的事実の話と哲学定義の話)」や「利益とはなんぞや」ということを細かく論じる部分の方が、そこから導かれる結論より重要なんだけど。

2016-12-25 20:05:31
21世紀の道徳 @RiceDavit

利益や意識能力などの定義については、ベネターは生命倫理学の議論としてそれほど特殊ではない穏当な主張をしているように思える。

2016-12-25 20:06:38
21世紀の道徳 @RiceDavit

妊娠にしても堕胎にしても、「妊娠は道徳的に推奨されない・非難されるべき行為である」と論じたり「堕胎は道徳的に推奨されるべき行為である」と論じたりしても、不妊が堕胎を法律や政府によって強制するべきであるということにはならない、というのも留意されている。

2016-12-25 20:09:02
21世紀の道徳 @RiceDavit

出産は悪であるとしても、医者は出産に協力するべきでない義務を持たないが、現在の社会で想定されるように出産に協力するべきであるという義務を持つということにもならない、みたいな。

2016-12-25 20:12:04
21世紀の道徳 @RiceDavit

あと5章の最後では「出産を不道徳であると見なし出産の権利の制限も視野に入れた私の"プロ-デス"の主張を聞けば、堕胎を不道徳であると見なし堕胎の権利の制限を主張している"プロ–ライフ"の人々も、選択の自由の大切さについて考え直すことだろう」というような嫌味を書いている。

2016-12-25 20:15:09
21世紀の道徳 @RiceDavit

6章は人口とか人類絶滅についての話で、基本的には人類は絶滅すべきだが絶滅が近づくにつれて経済的な事情や人間らしい生活が送れなくなるという点で人々の幸福度は下がるので、段階的に人類を絶滅させる必要があるかもしれないが、絶滅を引き延ばして人間を生まれさせ続けるのも良くない。

2016-12-28 10:50:22
21世紀の道徳 @RiceDavit

遅かれ早かれ人類は絶滅すべきなのだから、対象となる世代に対するダメージが大きくなるとしても多少急速なペースでも人類が絶滅して生み出される将来世代の数を少なくした方が総合的には道徳的かもしれない。

2016-12-28 10:51:28
21世紀の道徳 @RiceDavit

あと6章では、総量功利主義と平均功利主義のそれぞれがもたらす反直観的な結論についてパーフィットが指摘したことが取り上げられていて、「生命の質に関係なく生は危害である」というベネターの主張を採用すれば、パーフィットが指摘したような反直観的な結論はもたらされない、と論じられている。

2016-12-28 10:56:07
21世紀の道徳 @RiceDavit

ロールズが論じたような無知のヴェールにおける社会契約で将来世代についても考えることはできるか、ということについては、そもそも無知のヴェールにおける社会契約がどのみち形而上学的な思考なんだから本気で考えれば将来世代についても社会契約に含むことができるだろう、みたいなことが書かれてる

2016-12-28 10:57:27
21世紀の道徳 @RiceDavit

7章は結論の章で、これまで論じてきたような主張に対する「直観に反する」という批判を退けている。人間の心理は生を実態以上に高く評価する傾向や自己欺瞞などがあるので、直観に基づいて論ずるべきではない。

2016-12-28 10:59:07
21世紀の道徳 @RiceDavit

生み出されることの危害と、死や自殺の危害は全く別の話で、生み出されない方が良いとしても死は危害となるし、自殺も周りの人に与える影響などを考えればしない方が良い場合が多い。

2016-12-28 11:05:23