元はWarBirdsのAnsqに質問として投稿したものを出沼ひさしさん@ijnsenpenが拾ってくれました。
「ヤキ1カ」と「ヤル1カ」
捷号作戦における第一遊撃部隊のレイテ湾突入直前の反転は「ヤキ1カ」電がポイントになったことは周知の事実である。 ところがこの「ヤキ1カ」電は発信者が不明とされ、一部では反転の口実として捏造されたのでは?とまで言われている。 今回はこの問題について考察したい。
2016-07-07 01:01:41第一遊撃部隊戦闘詳報にもこの電文の受信記録は残っておらず、第一遊撃部隊が基地航空部隊に攻撃要請をした電文に記されているのみである。 pic.twitter.com/pNb0fZSzTt
2016-07-07 01:07:47「ヤキ1カ」の符号は捷号作戦時に定められた飛行機用の符号なので、この電文が飛行機から発信されたのは事実である。 だが第一遊撃部隊戦闘詳報以外には「ヤキ1カ」の電文は記されていない。
2016-07-07 01:11:30「ヤキ1カ」に似ている電文はないかと探したところ、機動部隊戦闘詳報に「ヤル1カ」という電文が残っている。 pic.twitter.com/IQfJzXVi0N
2016-07-07 01:14:44「ヤキ1カ」と「ヤル1カ」は一字違いでありモールス信号に直すと キー・-・・ ルー・--・ で非常に似ている。 ということは第一遊撃部隊でこの電文を受信した際に「キ」と「ル」を間違えた可能性があるのではないだろうか?
2016-07-07 01:21:03機動部隊戦闘詳報では0830発信、第一遊撃部隊戦闘詳報では0945受信となっておる。 発信から受信まで1時間15分は無理のない時間である。
2016-07-07 01:23:13この時刻前後の第一遊撃部隊、機動部隊、「ヤキ1カ」地点、「ヤル1カ」地点の位置図 pic.twitter.com/5yBgLVZo5K
2016-07-07 01:26:06それから半年後にツイートしていただいたことに気づいたので、お礼するとともにせっかくなので前後の情報をつぶやくことに
「ヤル1カ」の発信者は誰か
小沢艦隊が10月25日の早朝に直援隊以外の機をフィリピンに退避させたことは有名である。これは0610に彗星1機戦爆7機をニコラス飛行場に送るとともに天山3機を210~250°方向に索敵させたものである。 pic.twitter.com/Pu2AE5f6y6
2016-12-28 13:12:35だが、小沢艦隊は0710にさらに1機の「天山」を180°に索敵させる。位置と発見時刻(0830に機動部隊から南に140浬)から「ヤル1カ」に敵を報じたのは本機であろう。
2016-12-28 13:13:18ただし、戦闘詳報に「天山」とあるこの機に該当する記録は601空行動調書にはない。代わりに0610の編隊の次頁に時刻不明「転進飛行機隊誘導」目的の艦爆1機の記載があり、これが該機である可能性がある。 pic.twitter.com/ChcqjZi8BI
2016-12-28 13:14:500610発進の編隊員は不明だが、この艦爆は搭乗員の記載があり、ネットで検索すると後に沖縄戦で戦死したようだ。また彼らは前日の攻撃隊で「彗星」に搭乗していることから、この艦爆も「彗星」である可能性が高い。
2016-12-28 13:15:27ただし、小沢艦隊が直接に「ヤル1カ」を受信したかは疑問の余地がある。理由の1は「ヤル1カ」の記載が戦闘詳報に「1100」の判断の根拠として初めて記載されていることである。また、0830当時の小沢艦隊の状況ももう1つの理由であるがこれは後述する。
2016-12-28 13:16:57「ヤル1カ」が航空機からの直接発信であれ、どこかからの転電であれ、おそらくこの電文は多くの部隊で「ヤキ1カ」として認識されたのだろう。栗田艦隊以外にも多くの部隊が「ヤキ1カ」周辺の敵のみを認識していたらしいから。
2016-12-28 13:18:081人小沢艦隊のみが正しく「ヤル1カ」と認識したのは単に彼らが当該機の派出元だったからだろう。逆に言えば、栗田艦隊の戦闘海域に近かったことが他の部隊が「ヤキ1カ」と誤認した原因であったかもしれない。
2016-12-28 13:18:29