原子力災害における「避難」について

後知恵ではあっても、その時点で分かっていたこと、入手可能だった情報を基に、トータルの被害を最小化するという観点では何ができたのか、どうすべきだったのかを考えておくことには意味がある。この件について、自分の過去のツイートを拾ってみた。
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これ以前にも多少言及はしているが、ある程度まとまった言及は2014年9月の以下の一連のものが最初っぽい。

Flying Zebra @f_zebra

昨夜のリスクの話をもう少し突っ込んで考えてみた。しばらく前に、電気新聞の「時評」だったと思うが、元原技協の石川迪夫氏が福島事故の際の避難が本当に適切だったのか、強制的な避難はやり過ぎだったのではないか、というような事を書いていた。

2014-09-29 23:20:32
Flying Zebra @f_zebra

後知恵の結果論から言えば、恐らく避難指示の時期は早すぎ、規模は大きすぎた。避難指示のタイミングがもっと遅ければより細やかな避難計画が可能になり、避難区域も大雑把にプラントからの距離だけで決めずに必要最小限にすれば混乱も少なくて済んだだろう。

2014-09-29 23:21:46
Flying Zebra @f_zebra

実際に避難時の混乱の中で病院や高齢者介護施設に入院、入所していた人が亡くなっているが、そうした被害は避けられたのかもしれない。避難のタイミングを遅くして、規模を小さくしていたとしても、放射線被曝による被害はまず出なかっただろう。これらはあくまでも、今だから言えることだが。

2014-09-29 23:23:30
Flying Zebra @f_zebra

震災、津波に続く原子力事故の恐怖の中、最悪なのは人々がパニックに陥って判断力を失ってしまうことだ。皆が自分だけが助かろうと暴徒化すると、秩序が失われて結局自分が助かる可能性も小さくしてしまう。幸い、そうした大規模なパニックは起きなかった。

2014-09-29 23:24:14
Flying Zebra @f_zebra

全く避難しなければ被曝のリスクが増し、大規模に避難すれば混乱によるリスクが増える。大切なのは、情緒に走らず手に入る限りの情報と知見を基にトータルリスクを最小化できる合理的なポイントを見付けること、そして住民がそれを信頼して秩序を保って行動することだ。

2014-09-29 23:25:00
Flying Zebra @f_zebra

本来の手順であれば、原子力安全委員会が意思決定の助言のために緊急組織を召集し、集まった専門家が避難の基準とする線量や、線量を実測するための具体的な方法などを決定する。その場で1から作り上げる必要もなく、過去の知見を盛り込んだICRPなどの勧告も利用できる。

2014-09-29 23:27:08
Flying Zebra @f_zebra

そうした本来の手順を守らず避難を急いだのは政府の決定であり、一義的な責任は政府にある。ただ、東電がベント実施前の避難完了を要請したという事情もあり、その意味では東電にも落ち度がある。彼らにも、自分たちに直接責任のない部分も含めたトータルリスクを最小化するという視点はなかった。

2014-09-29 23:29:00
Flying Zebra @f_zebra

過剰な避難の弊害は当初の混乱だけに留まらない。住民がいなくなった集落はインフラの復旧も遅れ、生活の基盤が失われるため戻りたい人がいてもそこで生活を維持するのは難しい。結果的に多くの人が住み慣れた故郷を奪われることになる。

2014-09-29 23:31:12
Flying Zebra @f_zebra

生活環境の突然の激変による経済的負担や心理的なストレスは、健康にも少なからぬ影響を与える。あったとしても統計に表れないような僅かばかりの放射線被曝による影響よりは、リスクとしては比べものにならないくらい大きなものになってしまうだろう。

2014-09-29 23:31:50
Flying Zebra @f_zebra

今後、他の自然災害や有事の際に適切に行動するためにも、事故の初動において当時得られていた情報からどう判断すべきであったのかを検証することは、大きな意味がある。逆に、「犯人」を探して吊し上げるような「検証もどき」は何の役にも立たない。

2014-09-29 23:32:40

続いて、2014年10月にも一連のツイートをしている。この時はベント作業の是非やタイミングについての話題が中心だったが、避難にも言及している。

Flying Zebra @f_zebra

後知恵ではあるが、もし仮に近隣住民の避難完了や官邸、保安院の許可を待たず、速やかにベントを実施していれば結果的にFP放出の大部分は避けられ、近隣住民の初期被曝もかなり低く抑えられた可能性が高いと思う。今さら言っても仕方ないが、今後の防災計画を考える際には考慮すべきだろう。

2014-10-08 23:14:42
Flying Zebra @f_zebra

フィルタードベントでスクラベングで取りきれないFPの気体成分がどの程度除去できるのか分からないが、短半減期核種が支配的な気体成分だけであれば、タイミングを制御できるベントなら屋内退避でやり過ごすのは難しくはない。リスク低減のインパクトは大きくはないだろう。

2014-10-08 23:49:01
Flying Zebra @f_zebra

過酷事故が起きた後のリスクに大きなインパクトがあるのはむしろ、避難のタイミングと規模をどのように決めるかといったソフトの部分だ。1F事故では震災当日の21時に3キロ圏の住民に避難指示が出ているが、この時点ではまだ発電所の敷地外では線量上昇は起きていない。

2014-10-08 23:50:14
Flying Zebra @f_zebra

2号機からの大量放出で線量率が急上昇したのは14日深夜だ。10キロ圏の避難指示がこのタイミングであれば、避難途中に被曝する量は増えただろう。しかしそれで上乗せされる健康へのリスクは、統計では検知できないほどに小さい。そして3日間あれば、十分に準備して無理のない避難ができたはずだ。

2014-10-08 23:52:19
Flying Zebra @f_zebra

12日早朝時点で何の準備も計画もないまま強制的に避難させられる混乱の中で、高齢者を中心に多くの方が命を落とし、また健康を害した。過剰な避難は、過小な避難(極論を言えば、全く避難しない場合)よりも遙かに多くの人を死なせ、苦しめる可能性があることを忘れてはならない。

2014-10-08 23:52:52

年が変わって2015年の6月、安東さんのツイートへのメンションから始まる一連のツイート。避難に関する事前計画や緊急時対応のプロトコルについて。

安東量子 @ando_ryoko

別に、事故当時に国の人がさぼってたとは思わないよ、決定的に事前の備えがなかった、それ以前になにも考えてなさ過ぎただけで。制度として、まるっきりなっちゃなかったというだけで。

2015-06-25 16:41:47
Flying Zebra @f_zebra

@ando_ryoko この部分、私は少し違う意見です。事前に詳細な計画まで決めておくというのは現実的でなく、ただし合理的なプロセスで迅速に臨機応変な計画を立て、実行するためのプロトコルはきちんと決めておく必要があります。そのプロトコルは、あったと思います。

2015-06-25 20:14:06
Flying Zebra @f_zebra

@ando_ryoko 混乱を極めることが分かっている本当の初動については考える必要がないくらい明確な手順を定めておき、同時に原子力安全委員会が速やかに諮問組織を立ち上げる。そのプロトコルはあって、実際に初動の部分はほぼマニュアル通りに実行され、一定の成果を上げています。

2015-06-25 20:20:17
Flying Zebra @f_zebra

@ando_ryoko ところが後半のプロトコルは実行されませんでした。政治が介入したのです。その結果、後から振り返れば明らかに合理性を欠く施策がまともに検討されることもなく次々に決まってゆきました。事前に決まっていたプロトコルを無視した政治の過ち、というのが私の考えです。

2015-06-25 20:25:19
JUN TAKAI 2rd dose of primary course @J_Tphoto

@f_zebra @ando_ryoko 政治に振り回されるプロトコルは(振り回す政治が酷いのは議論を待たないとして)十分な準備と呼べるのでしょうか。それではおちおち政権交代と言う選択肢も選べなくなる気がいたします。

2015-06-25 20:33:25
JUN TAKAI 2rd dose of primary course @J_Tphoto

@f_zebra @ando_ryoko いや、本当に政治がひどかったのは何処かで総括して貰わないとと思うのですが……

2015-06-25 20:34:42
Flying Zebra @f_zebra

@ando_ryoko 舌足らずな物言いになってしまいました。私が言及したかったのも、社会対応、特に初期の避難指示の部分です。これについては私は素人です。現在の考えのベースになっている知識、理解は全て震災後に勉強したものです。 @J_Tphoto

2015-06-25 22:51:41
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