老後における「貯蓄格差」並みに恐ろしい「映像格差」について

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生命情報保存研究所 @rodan670

昔の人間は映像により時間を保存することができなかったので、例えばある子供が自分の先祖がまだ若かった時代に思いをはせても、それは脳内イメージの域を出ず、主観的に経験できる時間軸はあくまで自分自身の一生分に限られた。

2017-01-10 14:34:29
生命情報保存研究所 @rodan670

固有の時間が限定されているわけだから、その中で年をとり、老いていっても、そこには自分が時間を消費してやったという自覚と納得があった。今の時代はどうか?いまここに70歳の老人がいたとして、この人物が20歳であったのは1967年、30歳であったのは1977年となる。

2017-01-12 08:27:15
生命情報保存研究所 @rodan670

この時代になると、個々人がカラーの映像に保存されていることは珍しくないため、例えば彼に5歳となる孫がおり、この孫が祖父の若かりしころの映像を見た場合、その心はとたんにかき乱されることとなる。

2017-01-10 14:39:48
生命情報保存研究所 @rodan670

1967年はまだしも、1977年ともなると世相もだいぶ現代に近づいてきているために、映し出される背景には今日と通じる部分も多く、その中心に居座る若々しい人物は、現実世界においてはすでに皺くちゃに老いている。ここから得られるのは、個々人が時を消費するというこれまでの納得ではなく

2017-01-10 14:43:07
生命情報保存研究所 @rodan670

人が時間に消耗させられているという恐怖である。映像がなければ人間は時の流れが呼び込む老い、あるいは種々の変遷を飲み込むことができるが、過去の個々人を映像の力で鮮明に保存できるようになると、この当たり前の事実を理不尽に感じるようになり始める。

2017-01-10 14:46:16
生命情報保存研究所 @rodan670

とはいえ現状人間が不老不死となる手立てはなく、またそれが人間にとって真に幸福なことであるかも分かっていない。その中で過去の映像が古の時代のおとぎ話性を破壊し、時の変遷が人間だけに加える残酷な影響力のプレッシャーから逃れるには、もう自分自身の姿を撮影し、逐次、動画内存在として分離

2017-01-10 14:55:22
生命情報保存研究所 @rodan670

保存していくしかない。動画には動画で対抗する。問題の孫が、以後10歳であったとき、20歳であったとき、30歳であったとき・・・とそれぞれにおける己の姿を記録し、例えば祖父が20歳であった50年前の映像とともにyoutubeにアップロードした場合、少なくともyoutube上では

2017-01-10 15:26:18
生命情報保存研究所 @rodan670

全く異なる時空に生きていた二人の人物が並列して存在することになる。動画サイト越しには人は映像が記録したあらゆる時代と並び立つことができる。こうして映像が認識させる経時による消耗感を、逆に映像を利用した時間の征服感に変えることで、人は再び経時の恐怖から解き放たれることとなる。

2017-01-10 15:30:07
生命情報保存研究所 @rodan670

そうなると、今後の時代の人間には、その生き方によりある恐るべき格差が生じてくることとなる。現在、年金制度の不安定化をもとに、貯蓄が不十分な人間の老後破産を危惧する声がささやかれだすようになったが、ある種これに近いものとして、ある人間に関する映像格差が鎌首をもたげ出すと予想される。

2017-01-12 07:59:07
生命情報保存研究所 @rodan670

例えば、人生の要所要所において、自分を撮影した動画を残し続ける1967年生の人物と、カメラにあまり興味がなく、人生でほとんど映像を残していかない2017年生の人間がいたとする。この場合、あくまで前者のほうが古い時代を生きた存在ということになるが

2017-01-12 08:05:38
生命情報保存研究所 @rodan670

数十年後の未来において、その時代の人々が振り返った場合、確かに実在したと比較的強く認識されるのは前者であり、逆により新しい時代を生きたはずの後者は、主観的にはおとぎ話の登場人物と大差のない、実像の定かではない透明な存在として捕らえられることとなる。

2017-01-12 08:11:41
生命情報保存研究所 @rodan670

一般的には、時代が進むごとに映像関連をはじめとした情報保存媒体の質は高まるため、後年を生きる人間ほどその実像は高密度に残されていくこととなるが、それもある一定のレベルに達すると、むしろ情報を残す、残さないに関する、個々人の姿勢のほうが強い影響力を持つこととなる。

2017-01-12 08:14:03
生命情報保存研究所 @rodan670

奈良時代に生きた人間と、昭和に生を受けた人間であれば、当然後者の方がその実像ははっきりしている。しかし今後は動画撮影に熱心であった前時代の人間の存在感が、動画撮影に不関心であった新時代の人間のそれを上回る逆転現象が生じてくることになる。

2017-01-12 08:17:25
生命情報保存研究所 @rodan670

もちろん信念上の都合で、動画はあまり残したくないという人間も存在する。この場合は個人の意思の結果であるので問題はない。ただ、特に意味はなく、単なるなまけ癖の結果として、人生においてほとんど動画を残さず、いざ年老いた際に、己の生の存在感が相対的に希薄化していることに気づき

2017-01-12 08:32:27
生命情報保存研究所 @rodan670

孤独や疎外感に苛まれてはいたたまれない。よって今後の時代においては、老後における貯蓄格差に匹敵する厄介事として、映像格差にも警戒し備えていかなければならない。

2017-01-12 08:22:21