フォビドゥンフォレスト３話「蝶舞の町内」 #4 「同級生」

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まとめを更新しました。「フォビドゥンフォレスト３話「蝶舞の町内」 #3 「資料室」」 togetter.com/li/1063731

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（前回までのあらすじ：新種の妖怪との戦いで能力を酷使した俺、片桐は半日ほどぶっ倒れてた。いつまでも寝てちゃいられねぇと新種野郎の正体の手掛かりを過去のデータから探そうとしたが結局、成果はなかった。そして翌朝、検査の時間だ。結果次第では学校に行けるが…。）

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まとめを更新しました。「フォビドゥンフォレスト３話「蝶舞の町内」 #4 「同級生」

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朝日が差す病室のベッドの上。俺は脳波検査用のヘッドギアを付けて横たわっている。並列思考と予知能力で酷使した脳に後遺症がねぇかを調べて貰ってんだ。 「うん、もう大丈夫そうね」 白衣の女の人、葉月さんが俺の頭から器具を外した。昨夜俺を診てくれた愛生の爺さんの孫の医者だ。 1

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爺さんの診療所に勤めながら僚勇会も手伝ってくれてる。今日は、昨日忙しかった爺さんの代わりに急遽来てくれたそうだ。葉月さんは器具を横に置くと、俺の胸に耳を当ててきた。聴診器でじゃねぇ、直だ。 「うんうん。心臓もちゃんと動いてるわね。もう大丈夫！」 2

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葉月さんは俺の胸から顔を上げた。柔けぇ感触が遠のいていく…いや何でもねぇ。 「いや大丈夫じゃねぇよ…そもそもそっちは悪くねぇから！」 この人は心音を聞くのが大好きというアレな性癖を持ってやがる。普段は聴診器で満足するんだが「身内」相手だと遠慮ってものがねぇ。 3

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「取り敢えず学校には行っていいけど、向こう数日間はコレを巻いておいてね」 葉月さんは俺の頭に黒い帯を巻いた。真ん中に四角いパッドみてぇのが付いてた。脳波測定器らしい。 「風呂とかは良いのか？」 「耐水性があるから水洗いしても平気よ。ただし外したら３分以内に付け直してね」 4

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「脳波に異常があった場合も含めて警報音が鳴ってこっちにも連絡が入るから」 「面倒だな…」 迂闊に髪も洗えねぇ。でも冬だからって３日も洗わねぇと瑠梨がうるせぇしな…。 一応、オフにも出来るようだが、その場合は医療スタッフに連絡した上で、誰かに側にいて貰えって話だ。 5

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「過保護過ぎんだろう」 脳梗塞経験者相手でもここまではしねぇだろ…。 「脳は本当に危ないんだからね。特にウィザード、それも片桐くんみたいなタイプの人には」 「…分かったよ」 「それと、帰りにも診察を受けること。早抜けして瑠梨ちゃんとデートした後で良いから」 「待った待った！」 6

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「なぁに？」 「今日は会議とかあるし…早抜けなんかしねぇよ？」 「授業が終わったら帰らせようって、私達と佐祐里ちゃんで話はついてるよ？」 「にしても何でデ…寄り道するんだよ！？抜けといて！」 「昨日は瑠梨ちゃんも大変だったし、一緒に休ませて上げると思って、ね？」 7

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車で学校へ送って貰い、何とか一時間目の終わり前に着いた。それは良いが、頭が痛い。別に後遺症じゃねぇ、一日近く寝こけてる間に随分あちこちに世話を掛けちまった。佐祐里さんたちは俺を休ませる気満々みてぇだが、そうもいかねぇ。これ以上のんびりしてたら鈍っちまう。後で話をつける。 8

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僚勇会の関係者や普通の教師のところに顔を出して教室の前に来ると、授業終了３分前だった。今入っても邪魔にしかならねぇから休み時間になるのを待つ。すれ違う教師に挨拶をして、俺は教室に入った。 9

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「片桐、頭は大丈夫か？」 「片桐くん、頭平気？」 俺に気付いた同級生が心配して声を掛けてくれてるんだが…この言い回しは何とかならねぇのか。 「木から落ちたんだって？」 「まあな」 一応そういうことで話は合わせてある。 「カタギリクワガタともあろう虫が…」 10

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「虫だって木からぐらい落ちるぞ。ていうか虫じゃねぇ」 軽々しく下の名前で呼ばれんのは嫌だが、妙なあだ名も困るぞ。適当に対応をしながら、真ん中後ろの俺の席へ向かう。 「おはよう、はる君。調子はどう？」 俺の一つ前の席の瑠梨が挨拶してきた。 「まあ、お陰さんでな」 11

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「片桐、これ昨日の分のノートのコピーな」 「おう、ありがとな風間」 席に荷物を置いたところでやってきたのは風間新司。ダチの一人で今は生徒会も手伝ってくれてる。魔術師でも僚勇会でもねぇが、俺たちの事情は知ってる。新司は俺に顔を寄せて小声で話しだした。 12

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「なんか大事だったって会長に聞いたぞ。お前、かなり無理したんだってな？」 「そうでもねぇよ」 「あんま心配かけんなよ」 「…心配ねぇよ」 「それと、会議の方だけどな」 「ああ、手伝わせちまったらしいな。悪い」 「昨日で準備は終わってるから会長と金枝先輩だけ出るってさ」 13

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「会議はともかく、まだそこそこ仕事はあっただろ？」 本来なら大した量じゃねぇが、月曜の夜の騒ぎで俺はぶっ倒れ、僚勇会も忙しかった。本来６人の予定の所を、新司を含めた３人だけだから倍の作業量だ。てっきり会議の裏でも仕事をやるもんだと思ってた。 「昨日のうちに頑張っといたぜ」 14

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「お前こそ、無理してんじゃねぇよ…」 「平気平気、そんな訳だからお前と北里は先に帰っていいってさ」 「いや、だってよお前…」 今日は朝来と久浦は午後から、ラッタは放課後すぐ森へ行くことになってる。恵里は部活だ。生徒会は昼の部活動会議のほかに夕方にも「地域会議」がある。 15

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「俺達だけ先に帰るわけにも行かねぇだろうが…」 「私もそう言ったんだけどね…本当に仕事がなくて…明日の分まで少しやっちゃってたくらいだし」 瑠梨が苦笑する。 「頑張った褒美だと思って素直に休んどけよ」 「でもよ…」 「良いから休みなよ」 女子生徒が新司の肩に肘を乗せた。 16

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コイツは不知火乃愛、鳥姫神社の舞巫女の一人でもある。 「考えてみなよ。朝来さんと久浦くん、金枝先輩は『その場』にいなかったし、永友くんも別行動だったんでしょう？皆、負い目に感じちゃってるだろうし、その分、二人が休んで相殺しちゃうんだよ」 特に声を潜めない代わりに暈して話す。 17

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「相殺…なぁ…」 「どっち道、昼前に先輩と顔会わすだろ？その時北里と二人で話してみろよ」 新司は微笑している。コイツ先輩に俺を言い包めさせる気だ。でも実際会わねぇのもどうかと思うしな…。 「まさかと思うけど、お前今日も出る訳じゃねぇよな？」 気になって聞いてみた。 18

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「出たかったんだけど、そこまで世話にはなれないって言うから、放課後は乃愛に付き合うことにした」 「デートか？」 「ハッハッハッ！デートって違う違う。デートって。ハッハッハッ！痛ッ！」 乃愛の軽い肘打ちが新司の首に炸裂した。 「笑い過ぎ。…子供会の手伝いよ」 「ああアレか」 19

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乃愛は巫女見習いの子供達との繋がりで、風科子供会も手伝ってる。お遊戯会だの朗読会やら劇やらをやる。下手すると瑠梨に匹敵する忙しさかも知れねぇな。今日は下手に会議や僚勇会に行くと休んでろと怒られそうだし、場合によっちゃそっちに顔を出すのもアリかも知れねぇな。 20