「フォビドゥンフォレスト3話「蝶舞の町内」 #6「帰り道」
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まとめを更新しました。「「フォビドゥンフォレスト3話「蝶舞の町内」 #5「地域会」」 togetter.com/li/1072249
2017-01-20 23:02:23(前回までのあらすじ:妖怪の棲む禁忌の森を要する田舎町、風科。人里と森を隔てる結界と監視システムをすり抜けて40人以上が中に連れ込まれ、半数が犠牲になるという一大事件が発生した。その二日後の水曜日、大人達とは別に若手有力メンバーの間でもこの事件についての会議が行われた)
2017-01-22 23:54:52(慎重に言葉を選びながらも、単なる妖怪の仕業にしては不自然な点が多いと言うことで一同の見解は一致する。佐祐里が「黒幕」をつつき出す策を用意していると述べたことで、議論は終了した。「敵」の出方次第ではあるが、策の準備中に真っ向から仕掛けては来ないだろうと思われた)
2017-01-23 00:01:15(一方、事件解決の功労者の一人、片桐春夏は並列思考と未来予知の使用で一日半入院していたものの、なんとか登校を許可された。前日も入院中ながら過去の資料を漁っていた彼は、生徒会の仕事もするつもりではあったが、瑠梨共々早めに帰るようにと申し付けられてしまった)
2017-01-23 00:15:25俺、片桐は学校が終わるとすぐに瑠梨と一緒に風科に帰された。今は4時少し前。月曜も来た駄菓子屋にいる。今こうしてる間も久浦と朝来、藤宮先輩は森の中で、ラッタも向かってる。佐祐里さんたちは会議、恵里は部活、大人達も僚勇会の施設や森で大忙し。…すっげー罪悪感がある。 1
2017-01-23 00:34:32瑠梨は昨日も巫女業で働き詰めだったから良いが、俺も別に好きでサボってるわけじゃあねぇ。病み上がりっつっても不調は感じねぇし事務くらいは出来る。佐祐里さんに上手いこと言い包められて、今日期限の割引券を押し付けられちまった。明らかに佐祐里さんの手書きだったが、何故か普通に使えた。 2
2017-01-23 00:39:34先輩には昼の会議後に瑠梨と一緒に会いに行った。リハビリにもなるから、学校の方だけでも手伝わせてくれ、と言ったんだが、病み上がりが無理をするな、とのらりくらりだった。終いには、俺に何か有ったら自分の責任問題だ、と泣き真似までされた。…それを言うのは卑怯だろ…? 3
2017-01-23 00:48:12「まあまあ、そのハチマキが取れたら、その分頑張ればいいじゃない」 「お前が、あそこでそういう援護射撃するから押し切られたんだぞ」 あんまんを食べる。 「あとハチマキじゃねぇ」 「包帯…じゃないよね?ターバン?」 瑠梨は白いアイスバーを食ってやがる…だから屋内とは言え冬だぞ? 4
2017-01-23 00:55:11俺は寒々しさに身震いしたあと、錆の目立つ石油ストーブのほうに尻と足だけで移動して、残りのあんまんを食った。瑠梨は膝立ちになって片手でスカートを押さえながら寄ってきた。 「溶けるぞ」 「その前に食べちゃうよ」 そう言うと、残り6割位になってたヤツの半分までをパクリと咥えた。 5
2017-01-23 01:08:17周りを見ると、ガキどもは3人しかいねぇ。月曜は5時過ぎでも倍はいたのにな。 「今日は子供会だよ」 店のばあちゃんが、俺の視線に気付いたのかそう説明した。 「ああ、そうだったな。乃愛が朝、そんな話してたっけか」 「アンタ、頭大丈夫かい…?」 「ばあちゃんもその言い回しかよ…」 6
2017-01-23 01:14:47別にボケたわけじゃ無ぇ。前はそこそこ顔を出してたが、この半年は忙しくて乃愛達が話題に出した時しか思い出さなかっただけだ。今も罪悪感に気を取られて朝んことが飛んでた。 「ちゃんと検査受けたから大丈夫だよ」 「そうかい…?」 心配そうに聞いてくる。 「らしくねぇぞ、ばぁちゃん」 7
2017-01-23 01:21:07「らしくないとは心外だね、木登り小僧が木から落ちるほうがよっぽどらしくないだろ」 ああ、そういうことにしたんだった。 「悪ぃ、気をつける」 「そうしな、彼女に心配掛けるんじゃないよ」 「彼女なんていねぇっての」 今はまだそれどころじゃねぇしな。 8
2017-01-23 01:24:09「瑠梨ちゃんも彼氏にちゃんと首輪と手枷足枷鉄球付けとくんだよ」 「付け過ぎだろ」 「大丈夫ですよ、今はこの脳波を測るターバンだけで…あと」 「ターバンじゃねぇって…あと」 「彼氏じゃないです」「彼氏じゃねぇって」 「…にしちゃあ、息ピッタリじゃないかい」 9
2017-01-23 01:31:57店を出た俺達だが、早くても5時までは帰るなと厳命されている。乃愛達の子供会は5時半に終わるっつうから、あっちに顔を出せば、調度いい頃合いだ。ただ、ここで失敗に気付いた。次のバスまで後20分もある。普段はこの時間にはこねぇし、来たとしても歩いて帰るだけから気が付かなかったぜ。 10
2017-01-23 23:16:39子供会の場所は風科の西側で、ここは東だ。北側を左回りに行くのが最短だが、普通に歩いて20分くらいかかる。歩いても良いが、バスなら5分なんで待ったとしても到着時間が大差ねぇ。 「どうする?」 「うーん。来るなら四時半までにって言われてたよね」 その時間から劇をやるそうだ。 11
2017-01-23 23:21:20バスを待ってから行くと、数分は遅れちまいそうだ。私道や地下道を使えば直線で行けるんだが、緊急時以外にはやらねぇほうが良い。俺達は一応はその気になりゃ車に近い速度でも走れるんだが、瑠梨に無理させたくねぇし、そもそも目立っちまう。風科は俺達、魔術師だけの町じゃねぇんだ。 12
2017-01-23 23:31:32つー訳で、折衷案として早歩きをすることにした。ギリギリ常人の域を脱してねぇ速度だから、まあ良いだろ。今のペースなら3分前くらいには着く。最悪ちょっとくらいなら走っても良いしな。 「迷うほどのことでもなかったよね」 「定期持ってると、逆に損した気分だけどな…ん?」 13
2017-01-23 23:41:36「どうしたの?はる君」 「足発見」 バス停2つ分を過ぎて、もうちょいで鳥姫神社ってところで良いものを見つけた。目の前の一軒家に止まってるワゴンだ。近寄ってみると家から人が出てきた。 「幸川の兄ちゃん!」 「お、桐くんか。体調はどうだ?」 「大丈夫。お陰さんでな」 14
2017-01-24 00:07:19幸川(よしかわ)の兄ちゃんは、ワゴンで風科を回りながら、御用聞きみたいなことをしてる。遠出が厳しい爺ちゃん婆ちゃんの様子を見て話し相手になったり、頼まれたモノを実家の商店の仕入れついでに買ってきたりもする。こっちの儲け自体はそこそこだって聞いたな。 15
2017-01-24 00:20:36そうして風科を周りながら、聞き込みに加えてワゴンに搭載した妖気測定器も使って、妖怪が結界を抜けてきてねぇかを確かめるアマテラス隊の仕事もしている。風科の光剣(シャイニングブレード)の異名を取る実力者でもある。近接戦でなんでもありのルールなら、僚勇会でも五指に入る。 16
2017-01-24 00:26:00面長で少しロン毛の兄ちゃんだ。ちなみに「ユキカワ」とか「サチカワ」とか呼び間違えられやすいのが悩みだそうだ。正直、俺も素で迷う時がある。 「すみません、急に」 「いいさ、方向も同じだからな」 途中で一軒寄る時の荷降ろしを手伝う条件で、俺達は載せてもらった。 17
2017-01-24 00:30:08俺は助手席、瑠梨は真ん中の補助席だ。ちょいと狭いが位置が高くて見晴らしが良いんで譲ってやった。ちゃんとシートベルト付きで瑠梨はたすき掛けにしっかりと止めている…俺からも見晴らしが良いな、コレ。 「いいぞ瑠梨」 「…何が?」 「もう着くぞ。瑠梨ちゃんは待っててくれ」 「はい」 18
2017-01-24 00:36:26