渋谷課長①【危険人物】

クラゲの秘密のお部屋 @04_kurage

【危険人物 ①】 “渋谷課長は結婚しないんですか？” この前後輩にそんな事を聞かれた 結婚なんて考えた事もなかったな いつかするんやろー くらいに思ってたけど 30をとっくに過ぎてもた 同期は結婚して子どもできたり 幼馴染と運命の再会したり

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【危険人物 ②】 俺にはあんまり羨ましいって思えへんくて むしろ 恋人やって 何年もおらんし 独占欲とか面倒で ドライに行きたいやん？ けど 女には困ってない 週末に連絡くる女と飲んでそのままホテルに行く 名前も知らん女と… ってのもあったなー

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【危険人物 ③】 やからか俺は 会社では近づいたらあかん 危険人物に一部の女子社員の中ではなってるらしい まぁたまに遊ぶ子もおるけど “渋谷さん、久しぶりにどうですか？” ってメール 香澄…？ って誰やった？ あー経理部の子か 大倉狙いの子やな

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【危険人物 ④】 大倉は全然相手にしとらんねん この前も お昼休みに大倉と社食で飯食ってたら “渋谷さん今ご飯ですかー？” って近づいて来てん 「あぁ。せやで」 “大倉さんもお疲れ様です” 「お疲れ」 “渋谷さんではまた” フリフリのスカートなびかせて去っていった彼女

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【危険人物 ⑤】 「課長あの子知ってるんですか？」 「あぁ。なんや？」 「あの子ちょっと苦手っすわ。計算された感じで」 なんて言ってたって知ったらどうするんやろか まぁ俺には関係ない “ええで。行こか” そうメールを返して仕事をする 「あー資料いるんやった」

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【危険人物 ⑥】 資料室に入って 案外早く見つかった資料 時計を見ると 定時まで1時間 「明日でええし、ちょっとサボろ」 そう思って置いてある椅子に座る 携帯のタイマーをセットして ウトウトし始めたとき “キャッ…” って聞こえて目を開ける

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【危険人物 ⑦】 目の前は真っ暗で 「え？なんで？」 入り口のスイッチを探してカチカチしてみるけど着かへん 「え？停電？」 よく見ると少し向こうに小さな灯りが見える 「誰かおるん？」 近づいてみると床にうずくまってる子がおった 「大丈夫か？」

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【危険人物 ⑧】 『す、すみませんっ…』 顔を上げたその子は初めて見る子やった 「俺そこでウトウトしててんけど、これ停電？」 『た、多分…雷が聞こえてたから…』 マジか… 資料室の扉はオートロックで 開くはずもなく とりあえず村上に連絡しておく

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【危険人物 ⑨】 「俺らここにある事言ったし、復旧するまで待つしかないな…」 『はい…』 「現場おったらちょっと大変やったやろうし良かったんちゃう？」 『…』 返事なくて 彼女を見たら ハンカチで口抑えて震えとる 「ちょ。大丈夫か？こっち座れ」

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【危険人物 ①⓪】 椅子に座らして 俺のジャケットを肩に掛ける 「大丈夫か？」 『すみませんっ…暗いところが苦手で…』 「とりあえず大きく息しろ」 かなり震えとって 背中をさすったりする 中々治らず 苦しそうにする彼女をみて 思わず俺は彼女を抱きしめてた…

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【危険人物 ①①】 『あ、あの…大丈夫ですっ…』 俺が抱きしめた事で余計パニックやけど 更に力を入れて背中を摩る 「拒否るなら落ち着いてからにしろ」 『…ありがとう…ございます』 ちょっとずつ落ち着いてきて 離れようとするけど 「明るくなるまでええよ」

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【危険人物 ①②】 なんて言って 離れたくないのは俺の方で ただただ抱きしめていた 「そういや名前は？」 『えっと...マーケティング部の葛西です』 「俺渋谷」 『知ってます...噂でっ...あの...』 「ろくな噂やないみたいやな」 『すみませんっ...』

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【危険人物 ①③】 「葛西さんに謝れてもな」 しばらく色々話ししてたら 急に明るくなった 『付きましたね』 俺の腕からすーっと離れていく そのまま立ち上がって誇りを払ってる彼女 『あの…これ、ありがとうございました』 「お、おう」 彼女に貸してたジャケットを受け取る

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【危険人物 ①④】 『あの…またお礼を…あの…』 なんか言いたげで俯く彼女 「なに？」 『た、大した身体はしていませんが！』 や、待て待て！ 俺のイメージどんなんやねん そこまでちゃうぞ 「アホか。んなん簡単に言うな」 『すみません…』 「身体目当てで助けたんとちゃうわ」

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【危険人物 ①⑤】 君やからやなんてよう言わんけど 『本当にありがとうございました』 深々とお辞儀して去ってく彼女 「なぁ、」 その背中に声かけたら振り向いた彼女 「飯でも行かん？お礼。飯付き合って」 『はい。行きます』 「ほな連絡先教えて？」

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【危険人物 ①⑥】 部署に戻ると丸山が1人でパソコンに向かってた こいつなら色んなところで女に声かけてるし 知ってるかもしれん… けど データが消えたらしく 黙々とパソコンに打ち込んでるし よう話しかけられへんかった 自分のパソコンが大丈夫やったのを確かめて立ち上がる

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【危険人物 ①⑦】 「お、大丈夫やったか？」 村上がコーヒーやら持って戻ってきた 「おぉ、もう1人おって、まぁ1人やなかっただけマシやな」 「そうか。丸山、終わったか？」 「もう少しです…」 まだまだかかりそうな丸山に付き合うつもりか 差し入れ渡す村上

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【危険人物 ①⑧】 鬼部長とか言われとるけど そういう所がええ上司なんやなーって思う 2人を残して俺はエレベーターに乗り込む 途中マーケティング部を覗いてみようかとも思ったけど やめた ストーカーみたいやんけ “また連絡します” そう言ってくれたしそれを待とうかな

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【危険人物 ①⑨】 ある階に止まって扉が開く 『あ、渋谷さんだー。お疲れ様です』 あー。 今日キャンセルって言うん忘れとった… 『偶然ですねー。会社出たら連絡しようかなーって思ってたんです』 「あー。すまん。俺これから部署のやつの差し入れ買って戻るねん」

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【危険人物 ②⓪】 『えー。せっかく会えたのに…』 そういう彼女をなんとかなだめて 帰って行くんを見送って ほんまに差し入れ買って持って行った 「おまえなんかあるんけ？」 って村上には怪しまれたけど なんかちょっと気持ちが晴れ晴れしとって それから俺はめっきり遊ばなくなった

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【危険人物 ②①】 “今週末の金曜日空いてる？” そう送るのに 何日費やしたやろか… あの時勢いで飯行こうって言ったけど 彼女の事何も知らん どこに住んでるのかも ってかそもそも彼氏おったらどうすんねん って思って や、それより俺の印象があんまり良くない

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【危険人物 ②②】 そもそも彼氏おったら 飯だって断るやろうし おらんやんな？ そんな事を考えて 何度も丸山に聞こうか迷ったけど 丁度ええタイミングがなくて ばったり出喰わす何て事もなく… こうなったら勢いや！ ってたった一文のメールを送る

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【危険人物 ②③】 だってあの時だって 身体がどうとか言ったし でも兎にも角にも メールしてみんとな… 意を決して送ったメール 意外とすぐに返事がきて 金曜日 絶対残業にならんように 必死に仕事をこなす 「渋谷…お前熱あるんか？」 「課長が仕事に真面目や…」

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【危険人物 ②④】 好き勝手言う奴は放っておいた 村上は勘がいいから気をつけんと 大喜びして横と3人また朝まで飲まされかねんし… そーっと村上を見やると 「大丈夫か？ゆっくりしとけよ。早よ帰るから」 って電話中で 予定日近いんやったな

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【危険人物 ②⑤】 結婚なんてしてええもんなんか それより遊んでる方がいいってこの前まで考えてたのにな この歳で 俺も自分で気持ち悪いわ ちょっと待ち伏せしてみたり 「大倉、これ経理部持って行ってくれんか？」 「あ、俺行くわ。ちょっと用事あるし」