美術の価格と展示空間

いろんな考え方があっていい。
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樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

おカネと美術の話、余談。先日会った院卒の子は、私と会うことをお父様に報告したところ「そんなヤツに会って大丈夫なのか、騙されてんじゃないのか」と注意されたのだとか。なんか怪しい芸能プロダクションかなんかと勘違いされている(笑)。似たような話は多いのかも。

2011-03-02 12:17:15
さかぎしよしおう @sakagishi

20年前。イギリスの卒制では当然値段がついていて、手をつなぎあった老夫婦が「玄関に入ったところにこれがあったら」みたいことを言いながら品定めをしているのを見て、良いなぁ、と目を細めたことを思い出しました。 RT @hiroyuki9999 http://bit.ly/eAQDh6

2011-03-02 12:32:18
さかぎしよしおう @sakagishi

当時の日本は現在のようなマーケット状況ではなかったので「ここからやらなきゃダメなんだな」と。そして「そのためには、こうなる市民レベルがなきゃダメなんだな」と感じました。

2011-03-02 12:33:53
さかぎしよしおう @sakagishi

だって、孫の作品を買おうとしているんじゃなくて、本当に普通に、楽しそうに選んでいるんだもの。値段は概ね数千円(レートのこともあるけど感覚的に)。

2011-03-02 12:34:57
さかぎしよしおう @sakagishi

で、日本に戻ってくると、(当時はまだ現場だった)貸し画廊で平気で10万円とか20万円とかついている。もちろん売れていない。こりゃダメだ、と思いました。

2011-03-02 12:35:51
さかぎしよしおう @sakagishi

というわけで私は、西瓜糖という喫茶店でさせていただいた個展で、1点3000円で始めたのでした。ちゃんちゃん。

2011-03-02 12:36:53
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

@sakagishi 「売る」卒展をやった大学では、RCA留学組の名和晃平さんが、プライスをどうするかについてのレクチャーをされたそうです。こういう具体的な作家のアドバイスがあれば、わりと良い感じで浸透していきそうな気がします。

2011-03-02 13:16:01
さかぎしよしおう @sakagishi

@hiroyuki9999 なる。実体験者がいれば、無理なくリアルに伝わりますよね。やろうと思えば、全ての学校ですぐに出来そうなことに思いましたけど、激しく抵抗する向きがあるんでしょうね。20年経って、やっと京都で、という感じですものね。

2011-03-02 14:08:12
プチもりみ⋈ @petitmorimi

卒展に限らず「お金になる作品」と「評価されるべき作品」がイコールじゃないのが難しい。RT @hiroyuki9999 応用研究的な「売れる」作品をどう作るかという問題と基礎研究的な「すぐには売れないが革新的な作品」をどう作るかという問題、その双方をやぶにらみにしていかないと…

2011-03-02 13:44:32
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

@petit_molly すぐに換金の難しい作品については、助成の仕組みや申請の仕方を教えるレクチャーがあってもいいのかな、と。そこでつまずいてる子も多いみたいですし。最後はおカネにはならなくとも制作を続けていこうという、精神論の類いでも構わないと思います。

2011-03-02 13:53:56
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

@petit_molly 要はそういう卒業後を睨んだ教育、社会に出たときに自分の表現をどう継続させるかという教育があったって良いのじゃないかと思うんですね。「作品を売る」っていうのは、そのわかりやすい手法の一つで、それにだけ拘泥する必要もないと思います。

2011-03-02 13:55:37
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

昨日の卒展で作品を売るべきかという話が結構好評なので、ちょっと続きを考えたいと思うんですが、この話、展示空間をどうするかという話とも、若干絡んでくると思うんですよね。というのも、いま自由に空間作っていいよというと、みんな街の商業ギャラリーみたいにしてしまう。

2011-03-03 10:29:17
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

そりゃあ商業ギャラリーってカッコいいけど、それだけが売るのに都合の良いスペースなのか、っていう問題とは別だと思うんですよ。あれは高級な、少なくとも数万円以上のものを売るのに適したスペースの作り方で、逆に数千円とか数百円のモノを売るにはあまり向いていない。

2011-03-03 10:31:29
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

一般にモノを売る場所って、空間の「余白」が多いほど高級品が売れると言われる。実際、街の百貨店に行けばわかると思いますが、高価なブランドを扱って成功している店の多くは、天井がどーんと高くて、中央が吹き抜けだったりする。

2011-03-03 10:33:35
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

で、逆に数百円、数千円の雑貨なんかを売ってる店で成功しているのは、ドン・キホーテで有名になった「圧縮陳列」というやり方です。隙間なくぎっちりと商品を並べて通路も迷路のようにわかりにくくし、どれにしようかと迷う快感を見る側に与える。

2011-03-03 10:36:36
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

ほかに雑貨のダイソーとか、サブカルのヴィレッジヴァンガードとか、エロDVDの信長書店とかも、やはり圧縮陳列で成功しています。つまり安価な価格帯のものを売るには、商業ギャラリー的な空間の作りとは逆の、ギチギチに商品の詰まった空間の方が適している。

2011-03-03 10:41:09
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

もう一度まとめておくと、商品の密度と売れ筋商品の価格は反比例の関係にある。商品の密度が高いと低価格の商品が売れて、密度が低いと高価な商品が売れる。そこで問題なのが、作り手は一体誰に、いくらで作品を売りたいのかということです。

2011-03-03 10:43:53
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

たとえば高度な批評性を持ち、富裕層の保守的な価値観にも許容されるような作品を、高い価格帯で売りたいなら、これは商業ギャラリーの空間の作り方がマッチしている。けれども、もっとポップで若者の気持ちに届く作品を低価格で売りたいなら、雑然とした空間の方が良い。

2011-03-03 10:50:57
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

ここで極端な例を挙げておくと、イラストレーターの中村佑介は、最初は大阪の心斎橋の路上で、自作の絵はがきを売っていました。その頃私は30代前半で、どちらかといえばサブカルチャーにより熱心に注目していて、真夜中の3時ごろに泥酔して歩いていて彼の作品と出会ってる。

2011-03-03 10:53:31
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

その頃の私の見る対象には、現代美術はほとんど含まれておらず、刺青やゴシックイベントや球体関節人形といったものばかりだった。彼の、地べたに隙間なく手製の絵はがきを並べて売るという方法は、もくろみ通りに成功しているわけです。

2011-03-03 10:57:27
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

その後も彼は基本的にはオリジナルの作品を商業ギャラリーで売るということはせず、CDや書籍のパッケージというかたちで、数千円の価格帯で作品を届けている。いまや彼は大作家であって、数十万円で自作を売って大いばりしてる群小の「現代美術作家」など足許にも及ばない。

2011-03-03 11:00:40
樋口ヒロユキ _ SUNABAギャラリー @hiroyuki9999

服飾に例えて言うなら、ユニクロの服が作りたいのか、コムデギャルソンになりたいのか、それともリーヴァイスになりたいのか。それによって価格政策も展示手法も変わってくる。そこをごっちゃにして一方的に人を批判しててもしょうがない。そもそもめざすものが違うのだから。

2011-03-03 11:05:47