たゆさいオリジナル妄想 『テシナプス』 「輪花」 その1

たゆさいのオリジナル妄想です
0
たゆさい @tayusai

たゆさいオリジナル妄想 『テシナプス』  「輪花」 その1

2017-01-28 22:12:03
たゆさい @tayusai

テシナプス十大国の内の一国にしてイアスヤット教団の総本山「ヒルデン」。その東部に「陽来市」がある。この地に数千年暮らす半神の名前からつけられたその街の東にあるのがナルサ湖だ 1

2017-01-28 22:27:41
たゆさい @tayusai

そして陽来市街の対岸、ナルサ湖を挟んだ湖畔にその魔術道場は存在する。WMA(世界魔術師教会)に認可された魔術研究および指導団体、「クウラカ会」である。2

2017-01-28 22:33:51
たゆさい @tayusai

今日もまた、クウラカ会には多くの門下生が集まり、魔法の稽古を受けていた。「デリヤッ!」「ハイヤツァッ!」魔術師の卵達の声が響き渡る!そしてそれを眺めるカジュアルな格好の女あり。緑のセミロングヘアーに赤い瞳、右側頭部に3本の触角。ルート族だ 3

2017-01-28 22:39:34
たゆさい @tayusai

「あまいあまい。そんな腕の突き方で人が殺せるか、うん?」女は魔術師になる上で必須の格闘武術稽古を行う門下生の動きを一人一人入念にチェックしている。この指導の立場にいるという時点で彼女が只者でない事は明らかであろう。4

2017-01-28 22:43:24
たゆさい @tayusai

そう、彼女こそクウラカ会の筆頭魔術師にして世界最高峰の魔術師「マスターメイジ」の称号を持つ戦略兵器級メイジ「珠・ブランシェ」だ。周囲からは「おたま」と呼ばれている。「ん?」おたまは早速不器用に武術の型を構える少女に目をつけた。おたまと同じルート族だ 5

2017-01-28 22:48:42
たゆさい @tayusai

「どうしたの輪花ちゃん?」おたまはその少女輪花に優しく声を掛ける。同族の女の子には優しいのだ。「あ、おたまさん……ごめんなさい……ちょっと、今日は学校で……嫌な事があって……」「嫌な事?」「いや、なんでもないんです……ごめんなさい……集中できなくて……」6

2017-01-28 22:53:56
たゆさい @tayusai

「ふ~む」おたまは腕を組む。輪花が通う中学でどのような境遇に会ってるのかはおたまは知らないしそこに首を突っ込むつもりは毛頭ない。だがこの精神状態ではマジック・アーツの練習は残念ながら難しいだろう。「輪花ちゃん。辛いなら今日はもう帰っていいよ」「……はい」7

2017-01-28 22:59:46
たゆさい @tayusai

輪花は武術衣装を脱ぐために更衣室へと去っていった。「まああれぐらいの歳だと色々あるものねぇ」おたまは腕組みしたまま納得したように頷いた。8

2017-01-28 23:05:11
たゆさい @tayusai

「はあ……」数十分後、道場を後にした輪花は自転車で湖畔の道路沿いを走り、家路につこうとしていた。その表情は重い。今日は何もかもが嫌になる。学校のバカ達の罵声。輪花の机に書かれた中傷の数々。自分が中学の中で置かれている状況を思うと、精神が押しつぶされそうになる 9

2017-01-28 23:11:20
たゆさい @tayusai

自転車を漕ぐ足も重く感じる。輪花が着ている服は中学の制服だ。もうこの服を着ているのも嫌だ。あのクウラカ会の道着のままでいたい。あそこには自分を貶すヤツもいない。師匠のおたまさんは優しいし、魔法を鍛えているあの時だけが今の自分の幸せなのだ 10

2017-01-28 23:16:31
たゆさい @tayusai

「ん?あれ?」ふと、輪花は前方の車道の前を手を広げて歩く女の姿を見つけた。女は妙に露出の高い着物を着ており、白く短い髪からは黒い触角が二本伸び、その先端に赤色の宝石状の物体が付いている。明らかに異質な存在だ。輪花は自転車を止めて、その女を見つめた。11

2017-01-28 23:31:28
たゆさい @tayusai

「ムフフフフフ。そこの貴女、今の暮らしに不満がある。学校でのいじめ、辛いよね」その女、突如輪花の方を見ると一瞬で彼女の側に移動し、語りかけてきた。「えっ?」突然の事に輪花は目を見開いて動かなくなった。12

2017-01-28 23:39:32
たゆさい @tayusai

「さて、私がそんなクソッたれな世界を変えてあげましょうか……この、『ブレイス』が」女、ブレイスは獣じみた歯を見せて輪花に向かって微笑んだ。 つづく 13

2017-01-28 23:47:07