フォビドゥンフォレスト3話「蝶舞の町内」 #12「空中戦」
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まとめを更新しました。「「フォビドゥンフォレスト3話「蝶舞の町内」 #11「電子娘②」」 togetter.com/li/1077250
2017-02-04 03:30:53弾着の跡とエイジの反応からして、姑獲蝶野郎は同じ場所で滞空を続けている様だ。俺が飛び道具を持ってるから背を向けて逃げるのは下策と判断したのか? 「乃愛!ガキども!おい!声出せ!生きてんのか!」 俺は耳を澄ます。呻くような声はするが返事はねぇ。 1
2017-02-05 01:22:04ここ数日はまだ暖かい方とはいえ、今は真冬だ。しかも乃愛達は屋内から攫われた。現場検証や怜人達の証言では厚着はしてなかったらしい。0度以下の高空を時速100キロ前後で、既に20分も連れ回されている。凍死寸前でもおかしくねぇ。 「そうだエイジ!心音分かるか!」 2
2017-02-05 01:26:59鋏で警戒音を鳴らし続けていたエイジは、一度静かになる。そして大きく4回鋏を鳴らした。攫われたのは4人だ。 「よし、信じるぞ」 俺は左手で剣を、右手で粘着弾を撃つ銃を持った。 「ノゾム!」 コクワガタのノゾムは既に俺の腰にいた。俺の声に応じて分析用のドローンを開放する。 3
2017-02-05 01:33:16俺の装備を確認する。索敵用のドローン数枚は今飛ばした。俺のグラスと本部に情報が行く。二本の剣は刃を分離して動かせるものだが、剣を持ってないと刃を制御できねぇ。刃に乗って滞空し続けるには常に片手が剣で塞がるわけだ。そして装弾数四発の粘着銃と、発煙弾にビーコン弾が1発づつだ。 4
2017-02-05 01:39:17俺はまだ奴を攻撃できねぇ。本来なら姑獲蝶の一匹くらい俺一人でも倒せるが、今は奴を倒しても乃愛達を救う手段がねぇ。一人だけなら刃の背で受け止める自信はあるが、二人以上は厳しい。今はとにかく時間稼ぎと透明状態の解除だ。そして可能なら奴の高度を下げる! 5
2017-02-05 01:47:36「おらぁっ!」 俺は粘着銃を剣と交換し、20枚の刃で奴を上から切りつけさせる。蝶は俺の下を目指して躱すが、俺は高度を落として進路を塞ぐ。激突を覚悟したが、蝶はふわりと後退して口吻を俺に向ける。その先端から麻酔液が吹き出された。俺は刃を足場に側転気味に避ける。 6
2017-02-05 01:53:29蝶が羽を強く後ろに引いた。まずい!俺は10mほど後ろ宙返りで跳ぶ。強めの衝撃を4枚の刃を交差せて受け止める。羽ばたきとともに鱗粉が舞い、俺のいた場所に残しちまった刃3枚が力を失って落下し、操作圏外になる。 「くそっ…やべぇな」 鱗粉の魔術妨害効果だ。俺の刃とは相性が悪い。 7
2017-02-05 02:01:18『片桐くん。風は現在微風で北東から吹いています。そのまま東を背に戦えば鱗粉を被りにくい筈です。目標B出現への警戒も後ろを取られないよう、東側に重点を置いています』 麻衣さんの支援情報。グラスにも映ってるが戦闘中は見辛いから助かる。特に今は敵が透明だからな。 8
2017-02-05 02:07:18「サンキュー麻衣さん…奴が見えるか?」 「いえ…地上からの観測及び片桐くんのドローンでは捕捉不能です。少なくとも光学・熱・電波・音では捉えられません。霊波とスマホの電波が僅かに分かるだけです」 「そうか…」 鱗粉のおかげで奴の輪郭が一瞬見えたが、また見えなくなってきた。 9
2017-02-05 02:11:25(町中に現れた妖怪・姑獲蝶が俺のダチの乃愛と子供3人を攫いやがった。俺と瑠梨は、断続的に捉えた霊波を元に奴を追った。途中で知り合いの愛の協力を得て携帯の位置情報も得たことで奴の移動ルートの先読みに成功したが、結界を開けて奴を森に引き戻した所を攻撃する作戦は、スルーされて失敗した) pic.twitter.com/rhIVKIElCt
2017-02-07 00:36:48(風科には対空装備はあっても空中戦が出来るのは、今俺くらいだ。東から接近していた俺が奴を足止めし、その間に救出部隊を呼び寄せる作戦が提案され、俺は武器と仲間のクワガタを受取り、上空50mへと跳び上がった。だが奴はどういう訳か透明になってやがった!姑獲蝶にそんな能力はねぇ筈なのに) pic.twitter.com/iYMNu1LbuZ
2017-02-07 00:40:34俺は右の剣を鞘に戻し、素早くホルスターから拳銃サイズのランチャーを引き抜く。粘着弾の跡めがけて引き金を引いた。奴は後ろへ飛び退いた様だが、遅い。つうか無意味だ。 「煙いと思うが我慢してくれよ!」 煙幕弾が空中で炸裂する。辺り一帯…体育館ほどの広範囲が煙に包まれる。 10
2017-02-07 00:45:00奴の姿が一瞬見えなくなるが、奴は羽ばたきまくって煙を飛ばそうとしてる。かえって居場所が分かりやすい。鱗粉も舞ってるが、煙の粒子に押し返されてあまり広がってねぇ。チャンスだ。俺は煙で身を隠しながらまず上へ、次に奴の左…北側へと刃を跳び渡って移動する。 11
2017-02-07 00:52:21一応、奴が逃げねぇように煙の外側から15枚の刃で包囲しておく。今なら鱗粉に巻かれて落ちる心配もねぇ。それでも剣一本だと20枚しか制御できねぇから、右手で他の武器を持つと刃のやりくりは大変だ。今は残る5枚だけを足場にしてる。つうか必要最小限の残りを包囲に回したんだがな。 12
2017-02-07 01:07:22使い終わったランチャーを麻衣さんに断ってから下に放り捨て、同型のもう一つのランチャーに持ち変える。ペイント剤とビーコンを撒き散らすマーキング弾入りだ。両手が使えんなら弾だけ変えりゃ済むが、今は常に片手が剣で塞がるから仕方ねぇ。麻衣さんが重いとか言ってたのはこのことだ。 13
2017-02-07 01:11:12この弾は、元々透明な妖怪対策用だ。まさか姑獲蝶に使うことになるたぁ思わなかったがな。大勢の隊員がいた上を通った筈なのに目撃者ゼロだった時点で、透明になれる変種の可能性を考えてコイツを送ってくれたんだ。コイツを撃ち込めば地上から援護して貰えるし、万一逃げられちまっても追える。 14
2017-02-07 01:20:26「…つっても、逃がすつもりはねぇけどな!」 俺は射線上の煙が晴れた瞬間を狙って、奴に弾を撃ち込んだ! 15
2017-02-07 01:21:53-地上部隊。作業車の上の三人に駆から通信が入る。 『桐くんからの伝言です。エイジの奴が心音を四つ確認したそうです!』 「つまり生きてるってことか!?良かったな!ヤナ!」 「はい!」 梯子を降ろした先輩に柳原が応じる。彼の弟もこの空の上にいるのだ。 16
2017-02-08 00:08:28「エイジって誰だっけ?」 素朴な質問をした40代の男性は、柳原と共に息子が乗る脚立を支えている郡田だ。一家で討ち手をしており、この場ではリーダーでもある。 「はる君のクワガタですよ!」 「ん…あ、ああ!そうか」 北側のトンネルから降りてきた瑠梨は作業車に駆け寄る。 17
2017-02-08 00:19:56