#ぴくめす 外伝 「The heir of the Orcmage」

オークメイジを継ぐ者 pixivのR-18企画 【pixiv牝化騎士団陵辱】 略称 ぴくめす 企画目録 http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6313499
1
帽子男 @alkali_acid

#ぴくめす 外伝「The heir of the Orcmage」 そこはとある豊かな王国。他種族の雌を奪う邪悪なオークを率いて、恐るべきオークメイジが暴れ回ったのは今から百五十年前のことだった。亜人の魔道士はついに同胞の手にかかって果て、地には平和が戻った。

2017-02-12 21:13:13
帽子男 @alkali_acid

指導者を失ったオークの群は、散り散りになり、あるいは世の涯にあるという祖先の故郷を目指し、あるいは密林や嶮山の間に隠れ、そまつな筏で海原を渡って、すべて姿を消した。

2017-02-12 21:14:41
帽子男 @alkali_acid

長命なエルフやドワーフのあいだには、いまだおぞましい獣鬼と戦いの記憶を持つものもいたが、短く儚い生を紡ぐ人間のあいだでは夜更かしをする子供を寝床に追い立てる方便でしかなくなっていた。

2017-02-12 21:16:35
帽子男 @alkali_acid

あれほどオークと勇敢に剣を振るい、馬を駆った騎士にとっても、敵とすべき相手としてもはや真面目に考えるものはない。代わりに刃を交えるのは、かつての朋輩。都には陰謀が荒れ狂い、もののふの栄誉も武勲も色褪せ、弓と槍にかわって、毒と短剣、讒言と誣告とが主な武器となっていた。

2017-02-12 21:19:07
帽子男 @alkali_acid

辺境では、まだしも昔ながらの技を振るうますらおに寄る辺があった。 とはいえ誇りある戦とは到底言えなかったが。 陰謀にうつつを抜かす宮廷をよそに、貧しい村々では疫病ゆえか飢餓故か、物狂いのようなった住民が旅人を襲うという事件が起きていた。

2017-02-12 21:24:07
帽子男 @alkali_acid

かつて騎士だった男は、護衛として隊商に付き添い、あるいは斥候として代官の先手を務め、浮世の憂さを晴らす葡萄酒を呷るだけの代(しろ)を稼ぐ日々を送っていた。もう幾多、目を血走らせ、口から泡を吹いて襲いかかる、痩せこけた農民の首を刎ねてきたか。

2017-02-12 21:26:35
帽子男 @alkali_acid

都では、一年も前に身罷った王の後継をめぐっていまだに門閥の争いが続いているという。柔弱な美貌と婦人への愛にばかり長けた先君は、正室、側室、家臣の夫人、はては侍女に市井の女など、わずか三十四年の生涯に胤ばかり撒いたのだ。

2017-02-12 21:34:04
帽子男 @alkali_acid

「ばかばかしい」 早朝、酒場を追い出された元騎士は、あくびをひとつし、開いたばかりの聖堂の隅の席に腰を落ち着ける。 顎の無精ひげをなでて、こっそり懐から革袋を出し、とっておきの白葡萄酒を呷る。風は清潔な漆喰の壁に遮られ、朝の陽ざしが曇り硝子の窓から入って仄かに温かい。言う事なし。

2017-02-12 21:39:01
帽子男 @alkali_acid

やがて、朝の祈りの歌が響いてくる。祭壇には金髪の侍童がひとり、声変り前の甘やかな高音で、天への感謝を伝えている。 耳を傾けながら、まぶたを閉ざすと、別の光景が浮かぶ。絹の帳を開いた劇場、波打つ黄昏色の髪と青い瞳した歌姫。まだ若者だった元騎士が胸を高鳴らせて聞き入った、あの一幕。

2017-02-12 21:42:34
帽子男 @alkali_acid

「またこちらでお休みですかな騎士殿」 初老の司祭が呆れ顔で話しかける。 「騎士殿はやめてくれ。ただの用心棒だ。どちらにせよ、ここは身分の隔てをせぬ場所だろう」 つぶやきながら、それでも酒袋は隠して、マントの前を掻き合わせる。

2017-02-12 21:44:41
帽子男 @alkali_acid

「とは申せ。天は我等にそれぞれふさわしい職分を与えるもの。それを忘れてはなりませぬ」 「俺の仕事は昨日済んだばかり。今は旅をつつがなく終えた感謝を捧げているところさ。次もかくあれと」 「ではまさに天の導き。あなた様に新たな旅へ出るようにと、お計らいがありますぞ」

2017-02-12 21:49:11
帽子男 @alkali_acid

せっかく気持ちよい酔い心地で、あえかな歌声に聞き入ってひと眠りというところだったのに、追い出すつもりかと、元騎士がじろりとにらむと、司祭はいつになく神妙な面持ちだ。 「日頃、町から一歩も出ぬ老師が、よもや俺を雇いたいとか?」 「私ではありませぬ。弟子よ。来なさい」

2017-02-12 21:51:04
帽子男 @alkali_acid

髪の侍童が小走りに祭壇を離れて寄って来る。 「この子を都まで、送り届けていただきたい」 「ほう…」 「できれば人目につかぬよう。急いで」 「悪いが都は…」 あまり行きたくない、と応えようとしたところで、幼い歌い手がじっと見つめているのに気づく。 「都へ行ってなんとする」

2017-02-12 21:53:13
帽子男 @alkali_acid

「あの…う、歌の勉強を…できたら…」 侍童がつぶやいてから、ちらりと司祭をうかがう。老人は溜息をついて答えた。 「たわけたことを申します。まことは、この子の親戚に不幸がありまして、その用事でございます」 「…ふむ…親戚の方では、来てほしくない、という向きもあるのかな」

2017-02-12 21:56:07
帽子男 @alkali_acid

元騎士が問いかけると、司祭はかすかに眉間にしわを寄せた。 まず弟子を身振りでいくらか遠ざけてから、酔漢に近づき、ただよう息の酒くささにむせつつ、声を落として答える。 「あるいは…」 「詳しくは言えんと…普通そのような依頼は受けんぞ。馴染の間柄とはいえ」 「見当がつかぬのです」

2017-02-12 21:59:19
帽子男 @alkali_acid

「誰も気にせぬやも…しかしもし目障りと思えば、何かよからぬたくらみをするやもしれませぬ。それゆえ、目立たぬように、急ぎ送り届けて欲しいのです」 「…まあ、いいだろう」 「ありがたい」 司祭は明らかにほっとしたようすで、たもとから袋を取り出した。いそいそと開くと、金貨の煌き。

2017-02-12 22:01:08
帽子男 @alkali_acid

元騎士はさすがに苦笑して押し返す。 「ありがたいが、さすがに持って歩けぬ。戻ってきたら受け取るとしよう」 「は、いや、この子に何かあったときのための支度金として親戚から預かったもので…」 「分かった分かった。しかしそのような大金一度に渡すと、護衛が追いはぎに豹変することもあるぞ」

2017-02-12 22:03:11
帽子男 @alkali_acid

困ったような顔をした司祭を置いて、元騎士は、金髪の侍童に近づくとげっぷをもらしそうになって口をふさいだ。 「ではよろしくな。お若い方」 「はい!」 「せっかくの機会だ。今から、うまいこと親戚とやらを説き伏せて歌学に進む作戦を練っておくといい」 「…は、はい!」 「では後でな」

2017-02-12 22:05:22
帽子男 @alkali_acid

旅支度を済ませて、落ち合うころには、酒もまあ六割がたは抜けていた。侍童は若く元気な驢馬に乗って、元騎士は老いた軍馬にまたがり、街道をそれて、裏道をゆく。

2017-02-12 22:07:00
帽子男 @alkali_acid

周囲に人気がなくなると、道の縁までせりだした木々の枝の上を小鳥が飛び交い、囀る。侍童はつい、気を取られて、口を開きかけ、また閉じる。 「…どうした」 足並みを合わせながら、元騎士が問いかける。 「いえ…」 「歌いたいのか」 「め、目立つのは」 「いいさ、人気もない」

2017-02-12 22:08:54
帽子男 @alkali_acid

「俺も好きにさせてもらおう」 革袋を出して、がぶりと白葡萄酒を一口。 「そら」 「は、はい…じゃあ」 小鳥の囀りをまねて、甘やかな歌声があふれる。 即興で節、詞までつけているのだろうか、木々のあいだから応じる音色があると、それを織り込んで次々に変化していく。

2017-02-12 22:11:40
帽子男 @alkali_acid

羽搏きがして金糸雀が二羽、歌い手の細い肩に止まり、一緒になって囀る。 「はは。たいしたものだ。都を夢中にさせた金髪の歌姫もかくや…知っているか、かの人の生まれ故郷は、俺達の後にしてきたあの町さ」 「…あ、はい…はい知ってます!僕…聞いたことはないけど…」 「うむ…む…さてと」

2017-02-12 22:16:27
帽子男 @alkali_acid

「そろそろ宿場につく。老師は急げと言っていたが、旅慣れぬうちに無理をしてもかえってよくない。今日はあそこで泊ま…」 元騎士の眼が細まった。 前方の茂みを揺らして、路上に男が這い出てきたのだ。いでたちは見慣れたもの、馴染の旅籠の丁稚だ。目つきはもっと見慣れていた。

2017-02-12 22:19:11
帽子男 @alkali_acid

「よもや…」 鞍から弩を外し、矢を番えて弦を引く。 「いつでも駈け出せるようにしておけ」 元騎士は連れに告げると、じっと丁稚を見つめた。向こうは口から泡をふき、手足を振り回すと、獣じみた叫びを放って突進してきた。 午後の陽射しが照らす地面を、短箭の黒影が風切りをたてて疾る。

2017-02-12 22:23:18
帽子男 @alkali_acid

丁稚は頸椎のあたりを貫かれて即死した。だが合図になったかのように、茂みから次々に人、いや人だったものが這い出して来る。 「引き返す!」 馬首を返して叫ぶと、侍童を驢馬の鞍から掬い上げて抱きかかえる。 「驢馬が」 「捨ておけ」 軍馬は二人を載せて、かえって奮起したかのように疾駆。

2017-02-12 22:27:07