悠久なる世界の欠片 第一部

ティアの物語。 不定期 & 虫食い 連載
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目次と設定

まとめ 悠久なる世界の欠片 目次&設定 「タイトル未定の物語」から、正式タイトルへ改題。 同時に、長くなってきたので第×部ごとに分割。 物語のあっちこっちを飛び飛びに呟くごとに更新。 更新は不定期。 ゆえに、不定期連載にして虫食い連載 なのは相変わらず。 3635 pv 59

第一部

第一部第一話 冒頭

夢乃 @iamdreamers

夏の朝は早い。明るくなった草原に生える大きな木の側に、一軒の家が建っている。見える範囲には、他に人間の存在を証立てるものは見当たらない。 その家のドアが開いて、一人の少女が出てきた。 #twnovels

2014-11-22 12:35:50
夢乃 @iamdreamers

歳の頃は12〜3歳ほどだろうか。整った目鼻立ちに腰まで届く艶やかな黒髪、服から覗く長く伸びた白い手足が夏の朝に映える。袖の短い白いワンピースに、これも白いサンダルを履いただけの姿は突然現れた妖精のようにも見える。 #twnovels

2014-11-22 12:36:15
夢乃 @iamdreamers

少女は一つ伸びをすると、家を見下ろすように立つ大木の根元に歩み寄った。そこには二つの小さな墓石と思しきものがある。周りには白い可憐な花が咲いている。 「父さん、母さん、おはよう」 #twnovels

2014-11-22 12:36:39
夢乃 @iamdreamers

しばらく墓石の前に目を閉じて瞑想するように佇むと、少女は顔をあげて明るい暑い光を降り注いでいる朝陽を見て、独り言のように呟いた。 「さて、ご飯を食べて仕事にいかなくちゃっ」 #twnovels

2014-11-22 12:36:58
夢乃 @iamdreamers

家に向かって歩き出してしばらくしたところでふと足を止め、西の空を仰いだ。何かがこっちに向かってくるような音が聞こえる、気がする。 #twnovels

2014-11-22 12:37:18
夢乃 @iamdreamers

家の建つ場所から西の方角は少し離れた所から小高い丘になっており、その向こう側は見渡せない。その向こう側から、風を切るような音と、そしてごく僅か、何かが地面を疾駆してくるような音、いや、気配のようなものが感じられる。少女は耳を澄まし、丘の方向を凝視した。次の瞬間 #twnovels

2014-11-22 12:38:03
夢乃 @iamdreamers

丘の上に自動二輪車が飛び出した。こちら側が低くなっていることに気付かなかったのだろう、勢い余って宙を駆ける。そして空中でバランスを崩し、そのまま地面に激突した。 突然の闖入者に驚き、ほんの少しの間呆気にとられていた少女は、投げ出された操者を目掛けて駆け寄った。 #twnovels

2014-11-22 12:38:26
夢乃 @iamdreamers

「大丈夫ですか!?」 操者は、歳の頃は少女とそう変わらないだろう少年だった。背中に剣を背負い、庇うように身体を丸めている。その下の地面に真紅の色が広がっていく。 「大変!すぐに診療所に運ばないと!」 #twnovels

2014-11-22 12:38:46
夢乃 @iamdreamers

けれど、今日やってきたものはそれだけではなかった。突然大きくなった風切り音に目を上に上げると、そこには黒い巨大な飛行船の姿があった。 あまりにも大きく、距離感がはっきりしないが、丘に隠れて見えなかったことから考えると、かなりの低空を飛行しているようだ。 #twnovels

2014-11-22 12:39:10
夢乃 @iamdreamers

「あ、こんなことしてる場合じゃ」 少女は少年の容態を調べた。出血は横腹からのようだ。少女はベルトを外して剣を降ろし、服を切り裂いた。そこには大きな刃物で切りつけられたと思しき傷がある。これでよく今まで動けていたものだ。 #twnovels

2015-03-15 18:20:11
夢乃 @iamdreamers

「大変!」 少女は家のほうを見た。と、手元に小さな箱が現れた。箱を開けると消毒薬と綿紗(めんしゃ)を取り出し、応急処置にとりかかる。傷口を消毒し、血止めをして包帯を巻きかけたところに、突然声がかけられた。 「その剣を渡してもらおう」 #twnovels

2015-03-15 18:20:47
夢乃 @iamdreamers

声に振り返ると、黒服を着た男が立っていた。気付けば、上から聞こえる風切り音も小さくなっている。出力を落としたのだろう。 「だ・・・だめ・・・だ・・・」 少年が僅かに声を出した。 「これ・・は、わた・・・せ・・ない・・・」 #twnovels

2015-03-15 18:21:22
夢乃 @iamdreamers

「聞いた?駄目って。そんなことより、見えないの?この子、こんな怪我しているんだから用があるなら後にして」 少女は少年に向き直ると応急処置の続きに取り掛かった。 「それなら、ちょっと手荒にやらせてもらおう」 #twnovels

2015-03-15 18:21:52
夢乃 @iamdreamers

「何!?」 ただならない気配の増大に少女が再び振り向くと、真赤な炎球が男から放たれたところだった。 「魔術師!?」 と思う間にも少女は思わず右手を前に出す。勢いよく飛んできた炎球は掌に届く前に掻き消えた。 #twnovels

2015-03-15 18:22:24
夢乃 @iamdreamers

「ほう。魔術障壁を張れるか。俺の攻撃を防ぐとは、貴様もかなりの魔力の持ち主だな」 (まさか俺に匹敵する魔術師が、あの方以外にもこの世にいるとはな) 表面上平静を装ったものの、内心驚きを隠せなかった。 「今度は少し強くいくぞ」 #twnovels

2015-03-15 18:22:56
夢乃 @iamdreamers

男の前に再び炎球が現れる。先ほどよりは小さい、そしてより強力なものが。そしてそれは放たれた。 (まずい!) もう一度障壁を張る。 (耐えきれる?私の力で?) #twnovels

2015-03-15 18:23:27
夢乃 @iamdreamers

少女は半ば死を覚悟した。その時、目の前に、龍の姿を模した杖が現れた。 「母さん!?」 それは、母が残した魔杖だった。なぜ今。などと考えている余裕もなかった。放たれた炎は杖によって防がれた。 「なんだと?」 #twnovels

2015-03-15 18:23:59
夢乃 @iamdreamers

一度ならず二度までも防がれるとは思っていなかった男は、さすがに少し顔色を変えた。男の攻撃を防いだ杖はそのまま下に落ち、地に刺さった。 (このままじゃまずい!) 少女は素早く考えを巡らせた。 #twnovels

2015-03-15 18:24:35
夢乃 @iamdreamers

三度目の攻撃を仕掛けようとした男の目の前から突然、少女と少年の姿が消えた。杖と、目的の剣もない。 「何だ?」 咄嗟に魔力を放ち、周囲を探る。 (・・・異界を張って逃げたか) #twnovels

2015-03-15 18:25:18
夢乃 @iamdreamers

男の側に、さらに二人の黒衣の男が現れた。飛行船の船底から縄梯子が、地上5テナーほどのところにまで降りている。そこまで縄梯子を伝い、そこから瞬間移動したようだ。 「クリッグ様、目標は」 クリッグと呼ばれた男は、鋭い目を後から来た二人に向けた。 #twnovels

2015-03-15 18:25:50
夢乃 @iamdreamers

「逃げられた。異界を張って逃げ込んだらしい」 「それなら、ここで暫く張りますか。異界を張ってそう魔力が続くとも思えませんし」 「無理だな。ざっと探ったが、少なくとも周囲50テナーは異界で覆われている。どこに出てくるか、いつまで隠れていられるか、見当もつかん」 #twnovels

2015-03-15 18:26:53
夢乃 @iamdreamers

「50テナー・・・!そんなに」 「剣もあと二本ある。ここで無駄な時間を使っている暇はない。・・・そうだな、お前たち二人、ここに残れ。奴の行方を探して監視しろ」 「監視・・・だけで良いのですか?」 「構わん。飛行船が近付いたとき、念話で連絡しろ」 #twnovels

2015-03-15 18:27:32
夢乃 @iamdreamers

「わかりました」 「頼んだぞ」 それだけ言い残すと、クリッグは姿を消した。 残された二人は周りを見渡し、手がかりを探すために少女の家に向かった。 #twnovels

2015-03-15 18:28:21