写真家 小林幹幸氏（@motoyuk）による「プリントの買い方」

コバヤシモトユキ/次世代へ夢を撮る写真家　10/25-30キミトミタユメ・アメリカ橋ギャラリー @motoyuk

友人たちと、プリントを眺めたおし、これがプロのプリントかあって、クオリティーの高さに驚愕したのを憶えている。そのときの体験はわすれない。なぜかそのプリントを見ると僕にも立木さんのような写真が撮れるようになれば、活躍出来る未来が広がっているんじゃないか？そう信じられた。

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プリントを見て自分の夢を育てて行った。　　　あっと、これから、一本撮影なので、ちょっと休憩ね。

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そう、だから僕にとってプリントを買う事に拠って自分の夢を育てて行ったんだ。こんな写真が撮れるようになりたい、これ以上の作品を撮ってみたい。憧れのあの人みたいになってやるんだ。有名写真家のアシスタントを２名もクビになった僕には立木さんのプリントは唯一、夢に繋がるトビラに思えた。

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プリントを買う理由って人によって違うと思う。コレクションとか、インテリアとして楽しむとか、、、僕はインテリアって言うのは凄くあり得る選択だと思う。　いわば額は“窓”なんだ。風景写真等は、額の向こうにその場所とは違う場所が広がる。それは持ち主の部屋とも相乗効果でその場が感性の空間に

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感性の空間になるんだよね。インテリにこってる人は試してみて欲しい。高いデザイナー家具も良いけれど、そこにセンスの良い写真がくると違う物だよ。今でも趣味のおじいちゃんおばあちゃんは床の間を月ごとに買えるんだ。たとえば端午の節句の３月は梅の花を生けて、３月にふさわしい掛け軸をかざる。

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その掛け軸にあたるのが現在のプリントだと思う。僕の事務所では、季節によって（というよりも手に入れた順に）手当たり次第、飾ってる。世界の有名写真家や自分が認める写真家と一緒に自分の作品も飾るとなんか自分も世界に手が届く気がして、、、これは個人的意見が多いね、、うれしくなるんだ。

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プリントが買えない時代は、自分の写真しか飾れなかった。お金がなかったと言うのもあるんだけど、人の作品を認める余裕がなかったんだと思う。そんな時代の僕の写真はどこか心が閉じていて、、、人の写真を飾るのは、僕の写真世界的にも成長させてくれたんだと思うんだ。

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いくつか忘れられないプリントもあるよ。僕が師事していた横須賀さんにもらったプリント。なくなる数ヶ月前、僕を呼んでくれて”おいモトユキ、どれがいい、いくらでもやるぞ”と言って数ある作品の中で選ばせてくれた。僕は”光銀事件”のプリントを選んだ。彼がシュールレアリズムへの傾倒を素直に表

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表現した作品だ。僕はザギンザのギャラリーで見て忘れられなかった。そのプリントは一枚一枚ネガを組み合せ多重露光された作品で同じ物はない。その希少性もあった。彼の暗室で行った執念、写真への執念が入っていると思ったからだ。それを持つ事で彼の執念をいつも心のそばに置いておきたいと思った

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その後、数ヶ月、横須賀さんは亡くなってしまった。形見のような物を託したかったのかも知れないと思った。

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はじめてギャラリーで写真を買ったのはブリッツギャラリーでテリーオニールのブリジットバルドーの写真だった。その一枚に惚れた。クールそのものだった。煙草をくわえるバルドーのモノクロのポートレートだ。１８万円くらいだった。事務所に来るモデルたちがあのモデルは誰だ？と聞いて来た。

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バルドーの写真にモデルたちが反応した。モデルたちはバルドーをしらない人も多く、このかっこいいモデルは誰だと聞いて来たのだ。この写真が事務所にあると同じ時期にファッションの仕事がたくさん入るようになった。その写真は僕の守り神みたいだった。

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ファッションの仕事をたくさん持って来たのはその写真のおかげではないかと思っている。そんな写真が有名カメラマンにはある物だ。ギャラリーで何人ものカメラマンがプリントを購入するのを見て来た。時には事務所に呼ばれて、遭遇することもある。売れているカメラマンには自分の象徴のようなプリント

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を事務所に飾っている事が多いと実感した。ある人は目標とする人、ある人は影響を受けた作品、などだ。それで仕事が入るなんて事はないと思うがクライアントに志の高さは見せる事は出来るだろう。人の作品も尊重する、なにより仕事より、写真が好きなんだなあって思ってもらえると思うのだ。

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今、僕は４０代で若い人の作品も欲しいと思った。自分が若く、行動力のあった頃の初々しさを忘れたくないからだ。海外の有名写真家の威光に頼るだけでなく、日本の写真家にも良い作品がたくさんあるのを同業者として知っていたからだ。でもそんな作品はギャラリーにはないんだ。

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有名なギャラリーでも良いものと良くない物が混在している。誰が買うのか分からない作品が混在しているのだ。賞を取った作品だけどセルフポートレートは、、、とか、死を扱った作品は買いたくないし、プラチナプリントが偉い訳でもないし、僕が欲しい作品ってギャラリーには売ってなかったりするんだ。

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ギャラリーの立場も分かるし、若い写真家を育てなくちゃ行けない事も理解出来るけど、、.ちょっともったいないなっていう人もいる。はっきり言うけど、誰が才能があって誰がないか、将来性があるのは誰か？なんてギャラリーのひとより、僕ら現役の人の方がわかるからね。

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ギャラリーの人は現役の人になぜか、苦手意識持ってるみたい。だって自分の推す人や方針が間違ってると指摘されるのが怖いから、、現役も、自分のやり方が作家の基本方針に合致してるかどうか、気にし過ぎなんだと思う。

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それらが、作家と、実際活躍してる人の間に溝を作ってる原因だと思うんだ。雑誌は編集者と言うクライアントがいて、ギャラリーはギャラリストというクライアントがいる。ひとつで結果を出せる人はどこでも結果を出すのは早いんだ。

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いまの僕は若い作家の写真が欲しいと思う。でも、それは将来成功する可能性があるかどうか？もしくは成功してる事が条件！そしてまじめに作品を作っているか？　　　僕の考えで言えば、デジタル、アナログは関係ない。まじめに作家活動してるかが問題なんだ。

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マーケットを見透かして写真撮ってるような作品はそれも好きだけど、買わない。商売の匂いを感じるとまじめじゃなく思えるんだ。商売は請負仕事でやればいいんだからね。価値のある物を撮って作品に価値が付くみたいな誤解が写真家側にもあるから誤解されると思うんだ。それは純粋じゃなく思える。

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ティルマンズが金塊を撮った写真があるけど、あれは物質世界への風刺だと思うしね。よくあるのが木を撮るって言って屋久島の縄文杉撮っちゃう人とか、、、木の世界の大スター見たいな所にいっちゃうんだよね。芸術の面白さのひとつとして価値のないものに価値を付けるっていうのがあるんだ。

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商売は価値がある物を高める行為だけど、価値のないもの売っちゃったら詐欺になってつかまっちゃう。だけど、芸術は写真や絵というフィルターをかませれば無価値の事を恐ろしい高額で売る事も出来るってことに面白さがあるんだ。昔、アービングペンの道に捨てられていた煙草の吸い殻が１００万以上の

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金額で売られているのを見たとき、ユダヤ的な錬金術が作品に反映されているんだなあと思った。話しはそれたけど、最初から価値の或る物を撮るより、価値のないものを撮り、写真家自身が価値を付ける方が芸術的価値は高いと思うんだ。

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僕が買いたい写真は、値段には換算出来ない世界がそこにあるって言う事だ。出来る訳ない体験、新しい考え方、過去の歴史の継承、などがそれなんだ。オリジナルプリントなんて言ったってそれはただの紙だよ。それが何万円も価値を持つのか？僕はそうも思わない。写真家だから原価も計算出来るし、