青薔薇と屠り風の【ラストダンス】

ブリード（同盟） @goldius_m

@sendis_19 　ディザから少々離れた場所。フランチェスカが本拠地を置く国に、センディスと帰ってきていた。目的はただ一つ。幕閉じ。 終了した戦争、尚もまだ続く物語はあれど、一度は終曲した交響曲。 #ラストダンス

ブリード（同盟） @goldius_m

@sendis_19 　指揮する者のいなくなった演奏では踊れない。再度指揮者を探すには、この幕を閉じなければならないのだ。 「ここに来るのは懐かしいな」 　そして、今。始まりの場所である花畑に、ラストダンスを踊るために、戻ってきていた。 #ラストダンス

ブリード（同盟） @goldius_m

@sendis_19 　自分が花と一体化して寝ていたところを発見して、起こしたセンディス。そのセンディスを殺そうとして、踏みとどまった自分。その頃から始まっていた長い長い演奏。 「……実に、何か月ぶり、か。傷の具合は平気か？　誤って殺したくはないぞ、私は」 #ラストダンス

センディス @sendis_19

@goldius_m ｢うん。本当に久しぶり。だいぶ長く離れていたね。もうここが帰る場所じゃあなくなってしまったし……｣ 始まりの花畑。自分にとっては、終わりになるはずだった場所。→ #ラストダンス

センディス @sendis_19

@goldius_m 花畑に佇むゴルディウスの姿に、改めて息を呑む。やっぱり彼は花だ。 ｢……あ、そうだ、ちょっと待っててねゴルディウス｣ そう言い残して、一度、近くの納屋に入る。この日のためにちょっとした思いつきで用意したモノがあるのだ。→ #ラストダンス

センディス @sendis_19

@goldius_m 納屋から出る。 驚いてくれるだろうか。 自分の今の出で立ちは、まるで執事のような、文官のような、きちりとした白いシャツに黒いズボン。 いつもと同じなのは武具であるブーツだけ。→ #ラストダンス

センディス @sendis_19

@goldius_m ｢おまたせ、ゴルディウス。僕の身体は大丈夫。さ、踊ろうか｣ 彼のそばに歩み寄って、にっこりと微笑みながらそっと右手を差し出した。 #ラストダンス

ブリード（同盟） @goldius_m

@sendis_19 「……似合うじゃないか」 　驚いた。頓着のない彼がそんなふうな装いをしてくることに、ただ驚いた。目を閉じて、息を吐いて、その右手をそっと取る。自分の細いものとは違う、男性の手だった。 #ラストダンス

ブリード（同盟） @goldius_m

@sendis_19 「さて……センディス。ラストダンスだが……ただ、踊るだけではつまらない。どうだ、いつものやり方ではなく、勝った方が、負けた方の出した条件を1つ聞く、というのは」 #ラストダンス

ブリード（同盟） @goldius_m

@sendis_19 　くすくす、といたずらっ子のように笑う。昔は負けたら花壇、なんていうめちゃくちゃな案件を持ってきていた自分が、今は友人と遊ぶ子供のように、いわゆる『罰ゲーム』なんていうものを提案している。変わったものだ。 #ラストダンス

センディス @sendis_19

@goldius_m ｢えーと、勝った方の言う事を負けた方が聞くってわけだね？｣ 突拍子もない提案はいつものことだ。いいだろう。ラストダンスだ、賭けるものも盛大にいこう。 ｢いいよ、撤回はナシね｣ → #ラストダンス

センディス @sendis_19

@goldius_m 正直な話この罰ゲームはハナから成立していない。なにせ僕はゴルディウスにならば何を要求されようが困らない。むしろ嬉しい。というのは黙っておく。 ｢そう言ってくるってことは、僕にさせたいことがあって、しかも勝算があるって思ってるわけだ｣ → #ラストダンス

センディス @sendis_19

@goldius_m にんまりと笑って挑発じみたことも言ってみる。 その自信のもとに叩き伏せてほしい、という気持ちと、逆にそれすらまとめて踏みつけてしまいたい、という欲望でせめぎあいが始まって、いよいよ口元が弧を描いたまま動かない。 #ラストダンス

ブリード（同盟） @goldius_m

@sendis_19 「すまん普通に間違えてたわ、自然な訂正本当にありがとう。コホン」 　咳払い。勝算があるわけではないが、センディスに一度勝てたという経験が若干自分を傲慢にしていたところもあるかもしれない。 #ラストダンス

ブリード（同盟） @goldius_m

@sendis_19 「……そうだな。お前にさせたい事、ある。先に、お互いの条件を言ってからラストダンスを始めようじゃないか、王子様」 　さて、どんな顔をしてくれるのだろうか。 #ラストダンス

ブリード（同盟） @goldius_m

@sendis_19 「まず私が勝ったら、お前はその一日、名前をセンディス（メイド）にする。何人ディザに残っているかは知らんが、話しかけられたら相手の事はご主人様と呼ばなければならない。むろん私の事も、ルルの事も」 #ラストダンス

ブリード（同盟） @goldius_m

@sendis_19 「それと、メイド服は私　の　お　手　製　だ。ふっふっふっふ、なに、お前に似合うようにきちんと採寸して可愛いやつを作ってやるさ」 #ラストダンス

センディス @sendis_19

@goldius_m ｢め、メイドーーーーー！！？｣ あまりにもあんまりなその条件に、さすがに叫んだ。 めまいがする。ここまできて要求することがそれか。僕の愛した相棒はここまで馬鹿だったか。 ｢嫌がらせだ……びっくりするほど嫌がらせだよゴルディウス……｣ → #ラストダンス

センディス @sendis_19

@goldius_m こちらにも同じような条件を出す権利はあれど、それでは意味が無い。だってあのゴルディウスだ。女装なんか慣れっこのゴルディウスにメイドだの救護婦だのの衣装を着せたところで、どうせ特に恥ずかしげもなく歩き回るに違いない。→ #ラストダンス

センディス @sendis_19

@goldius_m しかし、あまりこういう時の罰ゲームの選択肢は僕の頭にストックがない。 ｢うー、あー、じゃあ僕が勝ったら……ゴルディウスで一日遊ぶ権利を貰う！！ これでどうだ！！｣ 所詮このくらいの望みしか出てこないのだった。 #ラストダンス

ブリード（同盟） @goldius_m

@sendis_19 「…………は？」 　あまりに頓狂な言葉に、反応が遅れた。目をぱちくりさせて、確認するように、ゆっくりと聞き返す。 「私『と』遊ぶのではなく、私『で』遊ぶ？　言葉の間違いではないだろうな？」 間違いであると信じている。 #ラストダンス

センディス @sendis_19

@goldius_m 何かの間違いだろうと尋ね返してくるあたりが既に可愛くて困る。 ｢うん。君"で"、君"と"遊ぶつもり。どう？嫌な予感がするでしょ？ふふ｣ これならばお互い死ぬ気で罰ゲームの回避のために全力を尽くせるはずだ。 #ラストダンス

ブリード（同盟） @goldius_m

@sendis_19 「私、で、私、と……？？」 　首を傾げる。だが嫌な予感がすることは確か。確実に何か、それもこの自分が辱められたと思うようなことをされる。 「っ……負けるわけには、いかんな！　では、踊るぞ、センディス！」 #ラストダンス

ブリード（同盟） @goldius_m

@sendis_19 「では……ロサ・ペタルム！」 　いつものように、左腕の蔦から咲かせた薔薇を散らせる。散った花弁は収束し、レイピアの形に。バシッと右手で掴む。これで、準備は万全。使わない左腕の蔦は、ずるりと抜き取った。これで、首から繋がる蔦はカウンター用に。 #ラストダンス

ブリード（同盟） @goldius_m

@sendis_19 「それでは踊ろうか、センディス……！」 　一旦とった距離を一気に詰めた。体制を低くして走り出す。踏まれて宙に散った花弁は、自分の指示でセンディスへと弾丸のように向かう。 #ラストダンス