攻城大陸二次創作IF「もしアヤノとリクトが本編で絡んだら」

武織火花@firefly_takeoriさんによる、攻城大陸https://kakuyomu.jp/works/1177354054882480403 の二次創作作品まとめです!
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佐賀屋火花 @muku_fire_muku

とりあえず #攻城大陸 タグは作って置いておきますね。 #攻城大陸二次創作 タグも一緒に置いておきますね。

2017-03-16 19:05:38
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

#攻城大陸 二次創作用主人公案 三輪綾乃(作中表記アヤノ) 日本から召喚された少女。幼少時両親が離婚、父方に引き取られてから十年に渡り凄絶な虐待を受け続ける。精神的な歪みはあまりにも大きく、人格の根底がまさにその歪みそのものになってしまった。 pic.twitter.com/Y6B2NNVvhv

2017-03-16 21:41:15
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佐賀屋火花 @muku_fire_muku

@firefly_takeori あまりにも痛みに慣れ過ぎてしまったせいで、「他人の痛み」を極限まで過小評価してしまう。また「何かを壊す/何かが壊れる」ことに無頓着で、それには自分自身も含まれているため、外的には被虐趣味に見えてしまう程。実際にはただ痛みなどに興味がないだけ。

2017-03-16 21:44:06
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

@firefly_takeori 大陸の小国、リネトラカ王国に召喚された彼女は、そこで鹵獲された巨神ジオノヘイズと出会う。ジオノヘイズ内で、城に取り込まれた《聖女》リンネと出会ったことで、彼女は屍竜ルッカスに搭乗し、ある決意を固めることになる。

2017-03-16 21:48:50
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

#攻城大陸 二次創作、作中だと絶対リクトと絡まないので、Twitterでは「もしコイツがリクトと絡んだら」を垂れ流します。非公式な上に基本妄想設定なので、「こういうことがあったらいいね」ぐらいの感じです。IFルートです。よしここまで予防線張っとけば怒られまい。

2017-03-16 22:48:51
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

#攻城大陸 二次創作IFルート(もしアヤノとリクトが出会ってたら編)スタート!

2017-03-16 23:03:05
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

「何で──何でだよ! アヤノ!」 慟哭が、夜空を衝いた。 赤々と燃える炎。逃げ惑う人々──崩れ去る外壁、降り注ぐ瓦礫に押し潰される者達。血と悲鳴、怒号と哀願が城内を満たしている。壮麗を誇る堅城グラン・ソラスを浸蝕し、無数の触手は尚も弱いものから順番に貪っていく。

2017-03-16 23:06:19
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

城の上空、斜めに傾いた月光に照らされる空で、リクトは白竜を駆る。その手に握るのは双刃断剣。傷つけることすら厭う、優しい竜の願いを託した兵装。だが今はその願いすら無惨に引き裂かれていた──切っ先は震え、一つところに定まらない。 胸部装甲の奥、操縦席の中で。 リクトはただ嘆いていた。

2017-03-16 23:10:36
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

──どうしてだよ! 叫び、思い、歯噛みして──そして、伝わらない言葉に怯える。 同じ時代、同じ国から呼び出された人間だった。リクトにとって、大陸の人間はどこまで踏み込んでも異邦人だったが、彼女は違っていた──アヤノは、故郷を同じくする仲間だと思っていた。 ──なのに、何で!

2017-03-16 23:13:20
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

「何で……何で、こんな酷いことができるんだよ!」 「……何で──って言われても」  眩いほどの星明かり。尾を引き過ぎ去っていく流星を背後に、対峙する異形の竜騎兵が僅かに傾いた。人間ならば、首を傾げたような動作。茨によって連結された槍を向けるでもなく、屍竜は無防備にその身を晒す。

2017-03-16 23:16:04
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

ラティが本来の姿を取り戻す以前の色に似た、灰色の機体。細い茨状の骨格だけが竜騎兵としての本体で、鎧は全て捕食した竜騎兵を外殻として再利用しているに過ぎない。禍々しく、おぞましい──ただ目にするだけで心を砕く、そういった類の狂気を孕み、屍の王は静かに天蓋を仰いだ。

2017-03-16 23:18:22
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

「……何となく?」 「──は?」 返された答え。 遠くにものを放り投げるような、どこまでも無感動な声音。 その声に、リクトは自分のどこかに亀裂の走る音を聞いた。大切にしていた何かが折れたか、折れかかっている。失えば二度と取り返すことはできない、喪失の音色。

2017-03-16 23:20:45
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

「何で、って言われると……その、困るんです。ごめんなさい。リクト君には何でも答えてあげたいんですけど……スリーサイズとか、全然教えられちゃうんですけど。でも、今のこれ、何でって聞かれると……困っちゃいます」 「……あ、やの?」 「多分リクト君が聞きたいのはこういうことですよね?」

2017-03-16 23:23:47
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

──何で、あんなに楽しそうにしてたのに、全部台無しにできるのかって。 「──それ、聞きたいんですよね? リクト君は」 「……あ。お、俺、は──」 「──逆に聞きますけど、何でできないんです?」 ──人を殺したりとか。 ──してるじゃないですか。

2017-03-16 23:25:21
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

「リクト君が撃墜した竜騎兵には人が乗っていました。リクト君が倒した敵には家族がいて、愛する人がいて、その愛する人にも両親や友人や知人がいました。グラン・ソラスが撃破した敵の城には、それこそ沢山の人が暮らしてました。それを──」 ──沢山沢山、殺したじゃないですか。

2017-03-16 23:26:46
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

「そういうものだ、って覚悟してるんですよね? 自分が傷ついても、大切な何かを守るため、誰かをも傷つけることを決めたんですよね? それ、私のこれと、何か違いますか? 勇気と誇りのために殺された人達は【気高い死者】にでもなるんですか? 違いますよね? みんなただの死体ですよね?」

2017-03-16 23:28:12
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

──だから、困ります。 無情ではなかった。 リクトを苛むのは、むしろアヤノの声が、本当に彼への配慮に満ちていたからだった。その音律には優しさがあり、想いがあり──そして彼女が冗談めかして言っていたように、思慕の色合いがあった。 竜が軋る。心の乱れがラティを震わせる。

2017-03-16 23:30:58
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

双刃断剣がだらりと脇に垂れ下がる。操縦席の中、ペダルを踏み込む足に力が入らない。四肢は震え、背筋に氷を注がれたような冷たさが汗となって全身に浮かんでいた。 ──俺は。 アヤノと過ごした時間。 リンとミァンを連れて、四人でグラン・ソラスの中を散策した。

2017-03-16 23:33:08
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

見たこともない果実のジュースを飲んだ。屋台で買ったイヤリングは一揃いしかなくて、誰にプレゼントするかで散々揉めた。竜騎兵ごっこをせがむ子供に、一緒に寸劇も見せてあげた。 楽しそう笑っていた。 楽しそうに──生きていた。 リクトにはわからなかっただけだ。 そういう人間がいるのだと。

2017-03-16 23:35:05
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

楽しさを。 嬉しさを。 笑顔を。 心から喜んで──心から望んで捨てることができる人間もいるのだと。 そんなことは、リクトにはわからなかった。 理解したくなかった。 同じ世界で生まれ育ったはずなのに、どうして心がそこまで捻れてしまうのか──想像もしたくなかったのだ。

2017-03-16 23:36:35
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

後悔が胸を押し潰す。 リクトには理解できたかもしれない──その希望はどこかにあったのかもしれない。 彼女の語った過去。 あまりにも凄絶な、三輪綾乃という少女が生まれ、そして実の父親によって壊されていくまでの物語。 知る機会はあったはずだ。だが手を伸ばさなかった。

2017-03-16 23:38:02
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

触れてしまうのが怖かった──アヤノを傷つけてしまうのではと恐れた。 アヤノを傷つけた先、自分自身もまた痛むことを、恐れてしまった。 その結果──今や、黒い炎はグラン・ソラスとその周辺一帯を燃やし尽くしている。熱もなく、灰を生まず、けれど何より忌むべき痛みを孕む烈火。

2017-03-16 23:39:16
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

「その、楽しかったです。今言うのは卑怯かもしれませんけど……ほら、リクト君がカリヴァン役をやってた、あの竜騎兵ごっことか。リクト君って子供に好かれるんですね? 私、子供は好きなんですけど、子供には嫌われるんです」 ──羨ましいです。 槍が。 地上を向いた。

2017-03-16 23:41:19
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

茨が伸びる。幾重の真空を裂き、衝撃波さえ伴って城壁に突き刺さり、その棘を撃ち放った。巻き込まれ、死んでいくのはその子供達。竜騎兵によって拡大した視力が、無惨と悲劇をリクトの網膜に刻んでしまう。やめろ、と叫ぶより早く、耐えがたい嘔吐感がこみ上げた。 身をよじり、苦悶する。

2017-03-16 23:43:24
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

──アヤノ。 同じ世界に生まれ、同じ世界に招かれた、新しい友人。 その少女は──今や、黒炎を纏い、屍と痛みの君主として空を抱いている。 「リクト君、優しいですね。怒っていいのに。私、こんなですよ? 何となく人を殺せますし、何となく世界とか滅ぼします。別に意味とかないです──」

2017-03-16 23:45:05