荒ぶる海の波の上に、威勢の良い娘 祖国を護ると豪語して 砲弾も魚雷もなんのその 乙女の心は燃えている この娘の目を見張る美しさを記憶せよ 帆布の担架に載せられて、運び出される乙女を…… #艦娘は女の顔をしていない
2017-03-03 21:04:43ひらがなも書けない
私は主砲を撃つこと、魚雷を発射すること、爆雷を投げることを覚えたの。もちろん、操艦もね。速度を落とさず、綺麗にターン。目的の位置にびしゃり。誰よりも綺麗にできた。
2017-03-07 22:34:19艤装の整備なら目をつぶっててもできたけど、高校入学の試験では、小学生もやらないような間違いだらけ。文法なんてめちゃくちゃだし、ひらがなだって全部は書けなかったのよ。
2017-03-07 22:35:21勉強を始めた。 本を読んでも、理解できない。 詩を読んでも、理解できない。 そういう世界のことが、なにもわからなかった……。
2017-03-07 22:36:08夜ごと悪夢にうなされた。 並べた単縦陣、私は先頭。機関の唸る音、響く砲声、駆逐艦の大砲は小さいけれど、腹の底まで響く。被弾した仲間の、断末魔の叫び。死んでいく娘達は、よくなにか呟いているんです。これは悲鳴より怖い。
2017-03-07 22:36:51夜戦で、魚雷に狙われた敵艦、もう避けられない。その目に浮かんでいるのは、恐怖。おかしいでしょ? 化け物なのに。最後の瞬間に、両手で自分を庇おうとして……。 毎朝、私の頭はこういう悲鳴で、パンパンに膨れ上がっていた……。
2017-03-07 22:38:17戦争中は考えることもなかったのに、ふっと思い始めたの。次々に、それが幾度も幾度も繰り返されて……。私は眠れなかった。
2017-03-07 22:38:56でも、学生寮の仲間の女の子達が、みんなで面倒をみてくれました。毎晩、交替で無理矢理にでも映画に連れ出してくれたんです。コメディを見に。笑うことを覚えなけりゃね。たくさん笑うことよ。コメディは多くなかったから、どれも百回は見たわ。最初のうちは、笑うより泣いていた……。
2017-03-07 22:39:23新品の、白い下着
「ねえ、あたし、今度の出撃で死ぬわ。そんな予感がする。下着を新しくしておきたいの。明日、一緒に上陸許可を頼みに行かない?」 私は彼女をなだめて言ったわ。 「もうどれだけ戦ってきたと思っているのよ。砲弾のほうが怖がってくれるわよ」
2017-03-03 22:26:10その翌朝、一緒に提督のところに行って、上陸許可を貰ったわ。 買ってきたのは、官品みたいに真っ白なシャツにショーツ。 もっとおめかししたら? って言ったけど、これがいいんだ、って。
2017-03-03 22:26:43新しい下着は血に染まった。 下着の白と、血の深紅のコントラストが今でも鮮明に記憶に残ってる。彼女はそれをはっきり思い描いていたのね。 私はまだ浮いたままの彼女の死体に曳航策を着けて、鎮守府まで帰った。とても重かった。
2017-03-03 22:27:15一人前の戦士
彼女達が、私のところに来た頃には、完全ないっぱしの戦士だった。 深海棲艦との戦いも、十分やっていけるだけの。非の打ち所もない。
2017-03-03 15:19:11……お菓子をあげようとすると怒るんだ。「私達は女の子じゃありません! 一人前の戦士です!」とね。 だから私はどうどう、となだめながら 「私だって、甘いお菓子は大好きさ。だから貰ってくれ、戦友よ」 と言って納得させたのさ。
2017-03-03 15:20:36私は上官と一緒に休憩なんて息がつまると思っていたのだけど、だから席を外そうとしたのだけど、彼女達は違ったみたいだ。
2017-03-03 15:24:24