現代語訳 旅行用心集2

江戸時代、1810年に刊行された旅のガイドブック「旅行用心集 (八隅蘆庵 著) を、現代語訳にしてお届けします。 現代語訳 旅行用心集1 はこちら https://togetter.com/li/1070108
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現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

【中の人からのお願い】旅行用心集は、1810年当時の医療・交通レベルや常識が前提のガイドブックです。21世紀において同様の行いをすると、薬事法や道路運送車両法その他の法律に抵触するおそれがあります。実践を試みる場合は専門家の指導に基づいてください。

2017-01-19 21:05:43
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

水や風土の違いに関する注意事項 人は誰でも旅行に行くと、だいたい一週間以内にお腹の調子がおかしくなったり、便秘になったり、アレルギーが出たりと、普段あまり出ない症状に見舞われることがあります。

2017-04-06 18:13:45
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どこへ行っても同じ空の下、同じ空気を吸っているのだから、水がかわったところでどうということはないと考えがちですが、これは間違いです。その土地によって風土は異なるので、水に限らず、寒暖・気候・人々・食べ物にいたるまで、どれもみな違うものなのです。

2017-04-06 18:13:48
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

例えば、山地の川で捕まえた魚を池に放すと、しばらくの間は慣れずに病気にかかったりします。人間も同様で、その地に1か月以上滞在しないとなかなか馴染まないものです。このことは事前に覚悟しておきましょう。

2017-04-06 18:13:50
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関東と関西でさえ気候はずいぶんと異なります。それより西や九州に行けばもっと変わります。北陸や越後、東北にいたっては、その違いは格段の差があります。さらに海沿いや離島になるともう、想像もできないほど違うのです。

2017-04-06 18:13:53
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

暖かい地方の人が寒い地方へ行けば風邪をひきやすく、寒い地方の人が暖かい地方へ行けば熱中症にかかりやすくなります。 その昔、八丈島の人が大勢江戸へ行ったときに伝染病にかかり、大半の人が亡くなったことがありました。これは土地の気候が合わなかったことが原因です。

2017-04-06 18:13:55
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遠方への転勤、長期の湯治旅行などでは、到着してから半月ほどは食生活と睡眠をきちんと整えましょう。旅行中に飲んでもよい薬については別項目で詳しく述べます。

2017-04-06 18:13:57
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【中の人】八丈島の人が江戸で伝染病にかかったという事実は確認できませんでしたが、これは気候が合わなかったというより、免疫がなかったことが原因かもしれませんね。

2017-04-06 18:17:54
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

寒い地方へ旅行するときの注意事項  東北や越後への旅行のときは、朝ごはんはしっかりと食べることが大切です。  寒い地方では、九月末頃から雪が降り始め、十月の夷講のころになると雪が積もりだします。山は道路が雪で埋まります。

2017-04-09 07:35:15
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

寒冷地では粉雪のことが多いので、降らないときでも風にあおられて吹雪のような様子になっていることがあります。いったん降りだすと、1~2尺積もることも珍しくありません。道路に人が歩いていても見えにくくなります。

2017-04-09 07:35:18
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

公用で役人が歩くような場合は、雪踏の人足が出て案内をしてくれますが、一般の旅人ではそうもいきません。道を聞きたくても人がいないことがほとんどです。道をはずれて迷ってしまうこともよくあります。

2017-04-09 07:35:20
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雪の中を歩くときは、酒を飲み過ぎてはいけません。お酒で体が温まり、寒さに耐えられそうな気になりますが、雪は道路と田畑や野原との境目をなくし、一面の平地になってしまうので、酔った勢いで進むうちに方角を見失い、深い溝や堀に落ち、凍え死ぬ人が多く発生しています。

2017-04-09 07:35:23
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

とくに夜は道筋がまったく見えません。  朝ご飯はしっかりと取り、外で食べる焼おにぎりを持ち歩き、空腹にならないよう心がけましょう。空腹では寒さにやられ気力が尽き果てるので、吹雪に遭うと行き倒れるおそれがあります。

2017-04-09 07:35:25
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

酒に酔っていなければ、たとえ吹雪に遭い、外で一夜を明かすようなことがあっても、命の危険にさらされる可能性はぐんと下がります。吹雪で凍死する人の多くは、泥酔していた可能性が高いそうです。

2017-04-09 07:35:28
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

吹雪に遭った人、凍傷で手足の感覚をなくした人、寒さで意識を失った人などを温めて手当てする場合は、藁で火を焚き、初めは少し離れたところから温めてあげてください。

2017-04-09 07:35:31
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またそのような人を風呂に入れる場合は、初めは湯の温度をかなり低くし、少しずつ温度を上げていきます。いきなり火の近くで温めたり熱い湯に入れたりすると、さらに具合を悪くすることになります。

2017-04-09 07:35:56
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

寒い地方での旅の道具について  雪の中を歩くときの服装には、紙衣 (厚紙に渋を塗り、揉んで柔らかくした衣類)、胴着 (上着の中に着る綿入り着物)、皮革製の下着などがあります。雪国の寒さ、雪の深さは、文章ではとても伝えきれません。

2017-04-09 18:12:54
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

靴や草鞋なども、雪国を歩くときはその土地で調べ、調達しましょう。前もって用意しておいても、場所によっては役に立たなくなります。

2017-04-09 18:12:57
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

雪崩のこと  奥州や越後では、2~3里、あるいは5~6里のあいだずっと山中を歩く場所があります。冬は深い雪に覆われますから、春二月の彼岸ごろになり寒さが緩むと、東風、雷、地震、木から響く音によって斜面の雪が大量に滑り落ちることがあります。これを「ナテツキ (雪崩)」といいます。

2017-04-10 20:49:21
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

山道を歩く人は、しばしば雪崩に遭って亡くなります。残念ながら、これには予防策はありません。  もし雪崩に遭った人を見かけ、まだ生きていることが分かっても、二次災害を避けるため救出することはあきらめてください。雪が解けることを待つしか方法はありません。

2017-04-10 20:49:24
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

雪深い地をわざわざ行く人は、主人の用事でやむを得ずという場合がほとんどです。どうしても歩かねばならない場合は、地元の人に山の様子を確認するなど、事前に情報を入手しておきましょう。

2017-04-10 20:49:27
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

そして、雪崩の起きそうな場所を通るときは、くれぐれもそっと歩き、咳ひとつしないようにするのがコツです。  会津から越後へいく途中や、上州から三国越えの途中などの山中では、雪崩の被害に遭った人を供養する石塔が建っています。

2017-04-10 20:49:31
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

【中の人】先日の痛ましい雪崩事故は記憶に新しいところです。どれだけ技術や土木工学が進歩しても、大自然の驚異を防ぎきることはできません。先人の教えは、ときに最新の技術よりも頼りになることがあると心に留めておきましょう。

2017-04-10 20:49:34
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

山の中で動物と遭遇したときは  山や野原を歩くとき、道連れがいれば話し声がするので、熊や狼は気配を察して身を隠します。  しかし一人旅の場合だと、不意に出くわしてしまい、獣が驚いて襲ってくることがあります。

2017-04-13 19:43:25