フォビドゥンフォレスト４話「大規模作戦・発動！」 #4 「藤宮涼平」

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2017-02-05 01:03:33

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「こんちわ」 「おはようございます」 俺と瑠梨が生徒会室に入ると、まだ藤宮先輩と金枝先輩の二人だけだった。 「しまった。早過ぎたか」 「ゆっくり来れば良かったね」 瑠梨が苦笑する。 「…？早いということもないと思うが？」 「も、もう！何を言ってるの二人共？」 1

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「お茶淹れるから待っててね！」 不思議そうな様子の藤宮先輩を置いて、金枝先輩はいそいそと俺達の茶を用意しに行った。今日は恵里は部活でいねぇし、ラッタは遅れると連絡があった。久浦達は掃除で遅れる。俺達はスムーズに来ちまったから少し暇だ。取り敢えず椅子に座った。 2

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「そういや先輩。朝は聞き忘れたけど…あの後、会長に殺されませんでした？」 藤宮先輩は森の奥での調査に予定より時間を掛けて、俺達…特に金枝先輩を心配させた。そのせいで佐祐里会長にエラいお叱りを受けていた。一昨日の夕方にお叱りの途中で別れてそのままだから俺はあの後を知らねぇ。 3

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「ああ、殺されたな…社会的に」 先輩は少し目を逸した。 「…何されたんすか」 「えっとね…佐祐里ちゃんに大っきいリボン付けられちゃって…頭の…正面に」 金枝先輩が代わりに答えた。 「会長…悪魔かよ…」 俺は戦慄した。 「一昨日の夜から昨日の一時間目の直前まで」 「魔王かよ」 4

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それはつまり、朝はリボン付きで登校して、同級生にも目撃されたってことだ。いくら何でもやり過ぎじゃねぇのか？ 「いや、違うぞ。本当は水曜の夜だけで許すと言われたのだが、それでは罰にならんと思ってな。自主的に授業直前まで罰の期間を延ばした」 「社会的な自殺じゃねぇかよ…」 5

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フォビドゥンフォレスト４話「大規模作戦・発動！」 #4 「藤宮涼平」 (続き)

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律儀というか融通が利かねぇというか…。始業前に止めたのも単に教師に見られると会長に迷惑が掛かるからだろう。 「まあ、クラスの皆は笑うどころか…怖がって距離取ってたけどね」 金枝先輩が遠い目で苦笑しながらカップを温めていた湯を捨てる。 6

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紅茶だから淹れるのに時間が掛かるみてぇだ。普段だと丁度いいタイミングで先に用意してくれてんだが、やっぱ早過ぎたな。 「先輩、さゆちゃんに写メ貰ったのはる君にも見せてあげて良いですか？」 「俺の写真のことか？まあ、構わんが…」 先輩は対して気にした様子もなく了承しちまった。 7

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「よせ瑠梨。見たくねぇ」 「え～。可愛いのに」 「だからこそ見たくねぇんだよ。俺的には可愛い『先輩』は会長……と金枝先輩で間に合ってんだよ」 「違うよ。さゆちゃん…達が可愛いのは前提として、この可愛さは別の方向だから」 「いや、リボンつけたごつい男の写真の時点で嫌だぞ！？」 8

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「リボンつけたごつい男…」 「あっ！すんません！良いんすよ！好きで付けてた訳じゃねぇんだし！先輩は悪くねぇから！」 俺の直球で容赦ねぇ表現に、流石の藤宮先輩も少し俯いちまった。 「はい、今微妙に忘れられかけた金枝先輩のお茶ですよっと」 ことり、と嫌に静かにカップが置かれた。 9

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顔は笑ってるが目が笑ってねぇ。 「す、すんません…そういう訳じゃ…」 俺の周りの女は年齢に関わらず、『美しい花には棘がある』を体現してる人ばっかりで困る。え、瑠梨はって？飛びっきり鋭ぇ棘が……止めとこう。隣から『圧』を感じた気がする。錯覚であって欲しい。 10

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「大丈夫ですよ叶音先輩。はる君は『相手』がいる人を勝手に可愛いって呼んで良いか迷っただけですから」 その瑠梨がフォローを入れてくれた。 「あ、相手って……！？…何言ってるのもう！」 金枝先輩が空中で手を振る。その仕草を何となく大阪のおばちゃんっぽいと思っちまった。 11

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その考えを読まれる前に頭を軽く振って考えを振り払う。どうも俺は考えが表情に出やすいらしくて困る。俺みてぇな並列思考持ちは読心されにくいと聞いたが、本当なのか…？ 「相手…？」 当の藤宮先輩は何の話かピンと来てねぇようだが、幸い金枝先輩は気付いてねぇようで良かった。 12

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俺達が紅茶を味わう間に、金枝先輩は我に返って瑠梨の方をくるりと向いた。 「ところで瑠梨ちゃん。瑠梨ちゃんも私のこと飛ばし掛けてたよね？」 「あっすいません…。さゆちゃんが可愛過ぎるのでつい別枠に置いちゃって」 「…そ、そうなんですか。すみません」 先輩は軽く後退りした。 13

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「今、どこまで行きました？」 「まだ最初のサンタクロースの村だ」 惜しい、微妙に名前が違ぇ。まあそれは良い。最初の村は慣れたプレイヤーなら１時間もせずにクリア出来るが、初心者ならもっと掛かることもある。しかしいくら先輩が忙しいとはいえ一月掛かるとは思わなかったが。 19

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「プレイ時間は何時間くらいですか？」 プレイ時間が表示されるゲームじゃねぇが、大体は分かる筈だ。２・３時間くらいは迷ってるかも知れねぇ。 「…１０時間…くらいだと思うが」 「えっ…」 そんだけありゃ、俺ならラスボスまで倒せるし、初見でも全体の３割くらいは行ける筈だ。 20

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「レベル…は？」 「２だな」 おかしいぞ。このゲームは最初の村に付く前に２度戦闘があって、それでレベルが２になる。実質２が初期レベルみてぇなもんだ。 「戦闘回数は？」 「２回」 やっぱりかよ。 「まさか、最初の洞窟入ってねぇのか！？」 21

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「それをどうすれば入れるのかを聞きたかったんだが」 「入れるよ！？」 未プレイの奴の為に解説すると、この人は最初から入れる筈のダンジョンに入れないと主張している訳だ。あそこに入れねぇ、なんてバグは聞いたことがねぇ。最初から開放されてんのにフラグもへったくれもねぇからな。 22

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「入れる…だと？」 先輩は心底以外そうな反応だ。なんで入れねぇと思っちまったんだこの人は？なんとなく頭が疲れそうな予感がした俺は、脳に糖分を補給すべく飲みかけの紅茶に蜂蜜を一回し注いで混ぜた。 「もう角砂糖２個分入ってるのに…」 金枝先輩にぼやかれたが、気にせずに飲む。 23

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「じゃあ、あの洞窟の側にいる戦士は何なんだ？」 「ただの見張りですよ？」 「彼が洞窟に入ると危ないと言って引き止めてくるのだが、どうすれば許可を貰えるんだ？」 「要らねぇよ！？」 「何故だ！？」 先輩は椅子から軽く腰を浮かせた。そんなに驚きますか、そこ。 24

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先輩は一呼吸ついて座り直し紅茶を飲む。 「片桐くん、それってアレだよね。良くあるお決まりの」 「ええ、あくまで警告を発するだけで入り口を塞いでる訳でも、入るのを邪魔してくる訳でもねぇです」 金枝先輩の言うとおり、RPGにはよくある奴だ。 「何で許可いると思ったんすか…」 25

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「要らない…だと…！？」 藤宮先輩は心底仰天しているらしく目を剥いている。 「主人公は、６歳児…だったな」 「そうっすけど」 「じゃあ、６歳児が魔物の出る危険な洞窟に入るのを、あの戦士は黙って見過ごすのか！？」 「…まあ、そうなりますね」 26

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「一体何を考えているんだ…！？」 言われてみりゃ、確かにそうだけどな…。 「じゃあ、あれっすよ。余所見をした隙にこっそり入るってていで」 勿論、ストーリー上でそういう補足がある訳じゃねぇ。あくまで先輩に合わせて納得の行く理屈をこじつけただけだ。 27