茂木健一郎氏 @kenichiromogi 第2071回【ひらめきの一回性】連続ツイート
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瞬間に自分の中の何かが変わり、世界が今までとは違った場所に見える。たとえば、ニュートンがりんごが落ちるのを見て万有引力の法則を発見するように、その後は、すべてが違ったものに見える。
2017-03-28 07:49:34パウル・クレーが、チュニジアへの旅で、「色」を発見するのも同じである。もちろん画家としてそれまでも色に向き合ってきたのであるが、瞬間的に何かが起きて、それまでとは全く違ったかたちで「色」が見えるようになったのである。
2017-03-28 07:50:26白と黒の隠れ図形(hidden figure)は、このような瞬間のひらめきを研究するのに適した素材である。本当は、ひらめきの先がどうなっているのかあらかじめわからないopen-endな状況が望ましいが、そのような状況は繰り返し実験に耐えない。
2017-03-28 07:51:20白と黒の隠れ図形ならば、多くの被験者に対して、繰り返し実験をすることができる。「正解」が決まっているという点において、創造性のひらめきを特徴づけるopen-endではないが、引き起こされる脳内過程は類似だと期待される。
2017-03-28 07:52:35真にopen-endなひらめきの過程を研究することの困難は、統計的真理を追及する科学のアプローチ自体に内在した問題である。本来は、ニュートンがりんごが落ちるのを見て万有引力を発見する過程を研究したいが、それは歴史の一回性である。
2017-03-28 07:53:41万有引力を発見してしまった後のニュートンをりんご畑に立たせていても、もうすでに発見してしまって脳がそうなっているから、ひらめきの瞬間はとらえられない。万有引力を発見していないナイーブな被験者を一万人りんご畑に立たせていても、いつひらめくかわからないし保証もない。
2017-03-28 07:55:08そもそも、ナイーブな被験者が万有引力についてひらめく瞬間は、机の端からハサミが落ちる瞬間かもしれないし、あるいは自分がベッドから落ちた瞬間かもしれない。ひらめきの一回性をコントロールされたかたちで実験するのは難しい。
2017-03-28 07:56:07