私より彼女が綺麗糸みみず(池田澄子) #百合俳句鑑賞 pic.twitter.com/qSeAkcVte4
2017-03-28 17:37:39私より彼女が綺麗糸みみず #百合俳句鑑賞 みやさとさんと麻子さんの見て、わたしも書いてみた twitter.com/paststranger/s… twitter.com/asa_co/status/… pic.twitter.com/NyiBO1WxWA
2017-03-28 18:32:46私より彼女が綺麗糸みみず / 池田澄子 #百合俳句鑑賞 書いてみた。なんか一番怖い解釈になったような。あと百合じゃない気がする。 pic.twitter.com/DZuYIV92k5
2017-03-28 19:09:36たなかさん @hbB53C36fw のよく萌える糸みみず解釈 転載許可もらったんで #百合俳句鑑賞 pic.twitter.com/lmRfV8VtP6
2017-03-28 19:31:420) 地下鉄の構内なのに水音が聞こえる。原牧は立ち止まって足下を見下ろした。踏んでいるのは白いタイルだった。右手には電車を見送ったばかりのぬるい風が渦巻く線路があった。左の線路は冷え冷えと沈黙していた。原牧の視界が突然白光に覆われた。昼休みの出来事がフラッシュバックする。濡れた
2017-03-28 22:43:001) 机の上に蠢く赤い糸屑。野の匂いに似た水が滴り落ちる連続的な音。教室は静かだった。誰も自分を見ていないのに視線は確かに自分一人に向けられていた。転がったビーカーを拾い上げる。ぶちまけられたのはほんの100ミリリットルの水。たった100ミリリットル。机の上に掌を滑らせ掻き集めた
2017-03-28 22:48:582) 水をビーカーに落とす。一緒に落ちた赤い糸屑がくねくねと蠢いて絡まり合う。背後で密かな笑い声が起きた。 あの中に美濃田もいた。白縫瑞穂を守るように自分の視界に立ち塞がっていた。白縫瑞穂が糸蚯蚓を掻き集めてビーカーに入れる自分を見て笑っていたかは分からない。しかしその目は
2017-03-28 22:53:423) 背中で自分を嗤う美濃田の目を見ていたのだろうなと思うと原牧は昼間よりもずっと現実の中に佇んでいる気がした。足が止まった。構内の空気が金管楽器の音のように乾いているのが分かった。地上の夜に冷やされた空気が鼻から這入り込み肺を巡り口から吐き出される。この口の中も湿ってはいない。
2017-03-28 22:57:184) 泣くほどのこともないのだ。 直視をしない密かな観察のただ中にあっても、糸蚯蚓の入ったビーカーに指を突っ込んだ時淫靡な心持ちがした。これは自分だけのものだと思った。白縫瑞穂の唇がリップクリームを塗っている訳でもないのに何故赤いのか、その秘密を知るのは自分だけであるという甘美な
2017-03-28 23:01:235) 事実と同じ胸のときめきがあった。白縫瑞穂は父親に殴られている。噛み締めた唇の血が内側にとどまって彼女の唇は赤い。あんなに綺麗な赤なのに触れがたい唇を、知らない誰もかれも褒めそやしてさ。 足下に水の音。いったいどこに隠れた水路があるのだろう。知らない秘密を全部自分のものに
2017-03-28 23:05:146) できたなら、私は生きていけるのに。誰に選ばれなくても生きていける。たとえ白縫瑞穂に選ばれなくても。 美濃田は近所の幼馴染みだった。幼稚園からこの高校までずっと同じ学校に通ってきた。何度同じクラスになっただろう。中学校の三年間は誘われて同じ部活にも入っていた。けれども、違う。
2017-03-28 23:07:157) 美濃田はクラスに組み込まれた。世界に組み込まれた。自分は爪弾きにされた。もうすぐ石をもって追われるだろう。何が違った? 美濃田の方が私より綺麗だ。例えば鼻の形、例えば顎の形、ちょっとずつちょっとずつ比較して彼女が綺麗だった。だからクラスメートは美濃田を選んだ。白縫瑞穂も
2017-03-28 23:10:268) 彼女を選んだ。「選ばれなかった」 口に出してみる。 それだけのことだった。 生物科教室から勝手に持ち出した糸蚯蚓を水道に流して捨てたと言って職員室に呼び出され怒られてから帰る頃、もう一学期も終わろうというのに世界は暗かった。靴の中が湿っていたが原牧はもう靴を脱がなかった。
2017-03-28 23:13:029) 確かめもしなかった。地下鉄の駅に辿り着いて、待ち伏せていた冷やかしを階段から突き落とし、自分は地上に戻ってもう一駅歩いた。隣の駅はまるで見知らぬ世界で、原牧は大きく息を吐いた。二度目の溜息で涙の出そうな予感があったが、泣かなかった。構内の空気は夜に冷やされ乾いている。
2017-03-28 23:17:2110) 吾自由なりと教えてくれる現実は蠢く小さな生物を踏み潰した靴で歩いていても、しっかりと確かで、硬質で、原牧は今目が醒めたのだと両掌を胸に押しつけた。 セーラー服の胸ポケットに硬い感触があった。白縫瑞穂。同じ委員会で同じ時間と空間を過ごした彼女と、学校の外まで空気を共有した
2017-03-28 23:20:5111) ことが一度だけある。ドラッグストアで買った口紅は白縫瑞穂の唇の色だった。家に帰ってこっそり塗ったが、あまりに下手な化粧で自分には似合わなかった。美濃田はどうだろう。似合ったのかもしれない。クラスで仲良くする女子同士は隠れてする化粧も似ているのだ。 口紅で腕の内側に線を
2017-03-28 23:23:1312) 引いた。幾重にも幾重にも重ねて線を引いた。腕の内側が真っ赤なった、それもやはり自分には似合わないなと原牧は思った。短くなった口紅を線路に捨てる。手首に唇をつけると白縫瑞穂の席の近くを通った時と同じ匂いがした。歩きながら靴を脱ぎ捨てる。地下鉄の構内は奥の真っ暗で見えなく
2017-03-28 23:25:4113) なるまで続いている。どこかに行かなければならない。原牧は見開いた目を据え、唇を噛み締める。背後で水音がする。美濃田の倒れた階段からは血が滴っていた。たった100ミリリットル程度のことだ、振り返ってなどいられない。私は現実の中にいる。生きた者の世界で、美しくない原牧は
2017-03-28 23:29:43昨夜の「私より彼女が綺麗糸みみず」の #百合俳句鑑賞 をまとめましたのじゃ。 こぼれておちた生きもの | 春鮫 #pixiv pixiv.net/novel/show.php…
2017-03-30 00:07:01私より彼女が綺麗糸みみず/池田澄子 よのひともすなる #百合俳句鑑賞 を。 pic.twitter.com/weJ41SWeeg
2017-03-29 17:59:10